社会人として最低限知っておくべき知識として、会社や組織の役職名と役割があります。
「部長」「課長」などは馴染み深いですが、「参事」とはどのくらいの順位になる役職なのか、どんな仕事をする立場の人なのか、社会人歴が長い私でも恥ずかしながら全く見当もつきませんでした。
『参事』という立派そうな役職名ではあるけれど、臨時雇用のような人なのかもしれませんよね?
興味があるので、『参事』について様々なことを調べてみました。
- 参事という役職の、会社の中での順位はどれくらい?
- 参事になるにはどうすればいい?年収はどれくらい?
- 『参事』と言葉が似ている『参与』の違いは?
- 参事にメールを送るときの敬称はなに?
私は現在、友人の会社の事務仕事(こまごまとした雑務)を手伝っていて、雇い主から渡された名刺を見てお礼状を書くことがよくあります。
そこで出ました!『参事』という役職です。
『参事』に対するイメージは全くわかないものの、役職がついている方が、自分の役職に結構プライドを持っているものだということは知っています(社会人歴20年近くですから)。
失礼のない対応ができるように、参事についてしっかり調べていきたいと思います!
では早速、『参事』の役職の順位や仕事内容から見ていきましょう。
目次
参事って何?会社の役職の順位はどうなっているの?
参事を調査すると、まずは私が役職だと思っていた『参事』は、実は役職名ではなく特定の能力・資格を持っている人の職名であることがわかりました。
ちなみに、私が持っている国語辞典で「参事」を調べてみると、「ある事務にたずさわる職。また、職の人。」
参事を英語にすると、「Secretary(秘書)」「Escritoire(エスコート)」になります。
国語辞典や英語の訳を参考にすると、一般企業以外の下記のような場所での参事の立場がわかりやすくなります。
会社・組織での「参事」の立場や順位の例
協同組合や労働金庫での参事の立場
理事会で選任され、支配人の権限を持つ。
公的機関での参事の立場
- 理事の下の順位の場合がある
- 部長・課長を補佐する立場の場合がある
- 国立国会図書館や議員事務局などの機関では、事務を取り仕切る立場
- 国会では、国会議員を補佐して事務をするほぼ全ての国会職員のこと
- 地方公共団体や独立行政法人では部長級や課長級の順位であることが多い
会社や組織内での「参事」の順位例
- 参事は課長よりも順位が上のこともあれば、課長と同クラスということもある。
- 能力・資格を持っている人は全員参事で、その中から役職である課長などが選任される。
- 役職はなくても係長や主任よりは権限がある場合がある。
- 研究機関では、役職がなくて参事の中で階級が分かれていることがよくある。
- 様々な能力・資格がある参事がいる場合には、どの能力・資格の参事の順位が上なのかは会社による。
私は過去に税理士事務所で働いていて、会社の様々な立場の方とお仕事をした経験があります。
そのときにわかったことは
- 「役職がついている=偉い」というわけではない。
- A社で一番偉い役職名が、B社では何の権限もない役職名ということもある。
この経験をふまえて、『参事』という役職も、会社によって立場は様々であることがわかりました。
一生懸命働いていれば参事になれるというわけではなく、特定の能力や資格がある人が参事になり、さらに役職もつく場合があるのですね!
では実際の例として、実際の会社や組織での参事となるまでの道のりや、参事になってからの待遇はどのようなものなのかを見てみましょう。
大阪府や熊本県の実例から見る!参事への道のりと年収は?
参事という立場になるまでには長い道のりがかかるのではないかと想像できますよね。
実際に参事になるまでにはどのようなキャリアパスで、年収はどのくらいになるのか気になったので調べてみました!
一般企業や公務員などの職場によって異なると思いますが、今回は大阪府と熊本県の例を挙げて紹介します。
参事になるまでのキャリアパス・大阪府の例
大阪府では職員のモデル年収額を公表しています。
平成29年4月現在のデータによると、
主事の月給は大学初任給で約18万円、35歳で約27万円、期末勤勉手当(ボーナス)が4.3ヶ月分とのことなので、年収にすると約320~500万円程度になるそうです。
主事の上にあたる主査の場合、45歳で月給約37万円に期末勤勉手当が加わると年収が約700万円くらいになります。
50歳くらいになると課長補佐と課長級(参事)になる人が分かれるようで、
課長補佐は月給約42万円で年収は780万円、課長級(参事)は月給約46万円ですが管理職手当などが加わり年収1,000万円近くになります。
同じくらいの世代でも課長補佐と課長級(参事)ではかなり年収が変わってくるようですね!
参事になるまでのキャリアパス・熊本県の例
同じ公務員でも熊本県の場合は大阪府とは異なる結果になっています。
平成28年4月現在のデータによると、
主事または技師の職務を担当する職員は「1級」という区分になり、月給は約14~24万円になります。
更に高度な知識や経験を必要とする主事や技師の職務を担当する「2級」になると、月給は約19~30万円にアップします。
主任主事または主任技師、そして参事の職務を担当する「3級」では月給が約22~34万円になります。
困難な業務を担当する参事などは「4級」になり、月給は約25~37万円まで上がります。
熊本県の場合はこのように職務内容に応じて区分が分かれて1級から9級までの職員で構成されており、参事の役割になるのは3級と4級にあたるようです。
このように、同じ「参事」という肩書でも職場が違うと仕事内容や待遇が異なることがわかりました。
出世する道のりについてもそれぞれの職場によって異なりますので、ひたすら上を目指して仕事にまいしんする努力も必要ですね!
先ほどご紹介したように、別の会社に行くと『参事』が全く別の取り扱いをされることもありますので、次にご紹介します。
定年前に管理職から参事へ!役職定年制とはどういう制度なの?
参事という肩書きがつくと、「出世した」「偉い立場になった」と印象を受けると思いますが、逆にがっかりする事例も少なくありません。
参事になってがっかりする原因になるのが、役職定年制という制度です。
役職定年制とは?
役職を持っている人は、一般的には”管理職”と呼ばれ、現場で働く人達をまとめる立場になります。
役職定年制とは、役職を持っているそんな人達が一定の年齢になったら役職を解かれて専門職などに移動する制度です。
給与も、役職手当がなくなるため激減してしまい、場合によっては最低ランクの給与になる企業もあるそうです。
目的は、人事を効率よく代謝させることによって組織が活性化したり若手が育ったりすることです。
年功序列で昇給していく給与制度の企業では、人件費を抑える目的もあります。
役職定年を迎えた人はどういう道のりをたどるのでしょうか?
一例をご紹介します。
役職定年を迎えた人がたどる道のり例
1.役職定年を迎える
50~55歳くらいを役職定年とする会社が多いようです。
役員には役職定年がないことが多いです。
2.参事となる
この場合の『参事』は、権限のない職名です。
役職定年を迎えた社員に『参事』という職名をつける企業側には、こんな思惑があるのではないでしょうか?
- これまで会社に貢献してきたことを配慮して職名をつける。
- 同立場になった過去の部下たちに、責任をもって仕事を引き継いでいってほしいという願いで職名をつける。
3.定年を迎えて嘱託になる
高年齢者雇用安定法という法律で、定年後も65歳までは雇用を継続することが義務づけられています。
定年後の立場は、”嘱託”となることが多いようです。
給与は現役時代の7~5割ほどとなるのが一般的です。
私の父は現在75才ですが、嘱託で65歳まで働いていた頃を思い返すと、まだまだバイタリティーがありました。
55歳で第一線を退くサラリーマンの気持ちを考えると、ちょっともの悲しいような感じがしますね。
さて、参事と似ている職名で『参与』という職名がありますが、こちらは一体どういうものなのでしょうか?
「参事」と「参与」はどう違うの?どんな仕事をしているの?
『参与』を国語辞典で調べると、
「あることに加わり、たずさわること。学識経験者に、行政事務について協力してもらうときの職名。」
とあり、参事とは全く別の役割だということがわかります。
参事と参与、どちらが偉い?
会社によって様々ではあるのですが、一般的には、参与の方が会社の中での順位が上という場合が多いようです。
例えば
- 参事=課長クラス、参与=部長クラス
- 参事=部長クラス、参与=局長クラス
どちらも組織の長ではなく、部下がいないことが一般的です。
参事と参与はどんな仕事?
参事の仕事は、先ほどもご紹介したとおり、特定の能力・資格をもって仕事をすることでした。
参与の仕事は、一般的には経営陣の直下で経営陣をサポートすることです。
参事の仕事は特定のものを対象にしていて、参与の仕事は会社の業務全体を対象にしているとイメージするとわかりやすいかと思います。
公的機関では、有識者を参与に選出して非常勤の国家公務員の地位を与えて、行政に関する相談を受けてもらうことがあります。
名前が似ていても、特定の能力を発揮する参事と、全体を見渡す参与とでは、役割に大きな違いがあるということがわかりました。
最後に、参事にメールを送る場合に失礼のないように、敬称を確認しましょう。
上司の参事にメールを送りたい!敬称はどうしたらいいの?
参事にメールを送る場合は、下記のように敬称をつけて下さい。
文頭や文末の宛名
参事 ○○様
(例:㈱AB建設 総務部 参事 ○○様)
○○参事
(例:㈱AB建設 総務部 ○○参事)
参事 殿
(例:㈱AB建設 総務部 参事殿)
文中
○○様
(例:○○様、いつもお世話になっております。)
○○参事
(例:○○参事、いつもお世話になっております。)
参事に対する間違った敬称の使い方
宛名を書くときの、間違った敬称の使い方をご紹介します。
参事だけではなく、あらゆる役職に使える知識ですので、ぜひ参考になさってみて下さい!
まずは、多用しがちな『様』の間違い例です。
参事に「様」をつける場合の間違い例
間違い例:(株)AB建設 総務部 ○○参事 様
役職名は、個人名の下につけた場合は、それ自体が敬称となります。
「○○参事 様」としたときの意味は「○○様 様」となり、おかしいですよね。
この場合は、「(株)AB建設 総務部 〇〇参事」でOKです。
間違い例:(株)AB建設 総務部 参事 様
参事の名前がわからない場合などは、個人名無しでメールを送ることもあると思います。
役職単体では敬称とはなりませんので、何か敬称をつける必要があります。
『様』は、個人名につける敬称ですので、役職につけるとおかしくなります。
この場合は、「(株)AB建設 総務部 参事 殿」でOKです。
次は、ビジネスで便利に使いがちな『御中』の間違い例です。
「御中」をつける場合の間違い例
間違い例:(株)AB建設 総務部 ○○参事 御中
御中は、宛先が個人ではなく会社や組織全体に向ける「その中の人へ」という意味で使います。
この例の場合は、「(株)AB建設 御中」や「(株)AB建設 総務部 御中」であれば、「(株)AB建設(または総務部)の中の人が見て下さい」という意味となるのでOKです。
次に、うやうやしく使いがちな『殿』です。
年賀状、お礼状、手紙などを参事(目上の人)に出す場合の『殿』
『殿』を使用していいのは
- 私信では目下の人に対して。
- ビジネスでは、『様』の例でもお話ししたとおり、目上・目下関係なく役職名単体で使う場合。
私信では、目上の人に対しては『様』を使用しましょう。
日本語って難しいですね。
でも、特にビジネスの場面では、敬称の使い方が間違っている場合には信用を失うこともあるので、しっかり確認して頂ければと思います。
まとめ
『参事』の、会社内での順位や仕事内容についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?
ポイントをまとめてみます。
- 参事は役職名ではなく、特定の能力や資格を持っている人の職名。
- 参事の会社内での順位は、会社によって違う。
- 参事が管理職の会社もあれば、権限のない職名である場合もある。
- 参事と似ている参与は、会社の業務全体を見渡す役割。参事とは全く意味が違う。
- 参事にメールを送るときの敬称は、二重敬称などの間違った使い方をしないように注意。
今回の内容では、参事は会社によって様々な扱いがあるということがわかりました。
ちなみに、よく耳にする『参事官』という職もありますよね。
『官』がついているので、公務員なのかな?という想像がつくと思います。
参事官も企業と同じように所属する場所によって様々な職務があるのですが、所属する場所の事務全体を見渡す、参与のような役目だそうです。
まだまだ世の中には、よくわからない職名がありそうなので、また機会があったら調べてみたいと思います!