【監修者:管理栄養士 坂本圭子】
実家できのこ鍋を作ったときのことです。きのこを入れるタイミングで、母と意見が分かれました。
私は「食べる直前に入れて食感を残す派」、母は「生だと危険!旨味も引き出すために水から入れる派」でした。
さて、どちらが正しいのでしょうか?
きのこの生食について、詳しく調べてみたいと思います!生で食べるだけではなく、「生焼け」・「生煮え」でも、腹痛などの食中毒の危険性があるのでしょうか?
- 生で食べられるきのこはマッシュルームだけって本当?生食できない理由が知りたい!
- 生焼けも危険!新鮮なきのこの選び方から下処理方法・安全な加熱時間まで解説
- きのこの美味しい食べ方が知りたい!調理時のコツはあるの?
- 生のきのこはどれくらい日持ちするの?長持ちする保存方法もチェック
母に「生食は危険」と言われた後、きのこの包装パックを改めて見てみました。すると、「加熱してお召し上がり下さい」と書かれていました!
私は胃腸が弱いタイプなのですが、もしかしたら過去には「きのこの生焼け」が原因の腹痛なども、あったかもしれませんね。
きのこは1年中安定した品質と値段で手に入るので、常備している方も多いと思います。
新鮮なきのこの選び方や美味しい食べ方なども交えて、きのこに関する正しい知識を、ご一緒に確認していきましょう!
管理栄養士・栄養士
目次
きのこを生で食べると危険です!生食が絶対ダメな理由とは?
きのこにきちんと火が通っていないと、生臭いですよね。私は、「きのこを加熱するのは気持ち悪い味を消すため」なのだと思っていました。
きのこの生食について調べると、「生のきのこ=毒」という文献があったのでご紹介します。
きのこは生で食べれば全て毒である(程度に差はあるが)という事実である。豆も生で食べれば中毒する。この理由はわからない
生を少量食べる・生焼け・生煮えも危なくて、触っただけでアレルギー症状が出る場合もあるとのことでした。
「毒」と言われると、時には死にも直結するので「絶対に生で食べるのはダメ!」と実感しますね!
生のきのこが「毒」と言われるのは何で?
先ほどの文献にもあったように、生のきのこが毒である理由は、明確になっていません。
日本だけでも数千種類のきのこがあると言われていますが、実は毒素について、解明されていない種類の方が多いのが現状です。
現段階では、きのこが持っているたんぱく質を分解するための消化酵素が、人間に対して毒性があるとされています。
消化酵素とは?
消化酵素とは、栄養を体に取り込むための物質です。きのこは体の外で消化をするため、表面に消化酵素があります。
「毒素の危険性をなくすには加熱してたんぱく質を分解するのが有効」なのが一般的で、市販のきのこに関しては加熱して食べれば問題ありません。
*たんぱく質の分解は、「お肉を長時間煮込むと柔らかくなる」のをイメージするとわかりやすいですね。
きのこの中には加熱しても毒性が消えない種類もあります。山歩きなどで見つけたきのこを、気軽に食べるのはやめましょう!
少数のきのこは、毒素の名前や性質が分かっています。
例)えのき:フラムトキシンという毒素で、生食をすると重症の貧血などの症状が出る危険性があります。
また毒素とは違うのですが、下記のきのこで「アレルギー症状が出た」という事例があるので、ご注意下さい!
- エリンギ
- しいたけ
- しめじ
- なめこ
- 舞茸
アレルギー症状は、生食・生焼けだけではなく、加熱したきのこをアルコールと一緒に食べて出る場合もあります。
加熱するのはもちろんなのですが、疲れなどで免疫力が下がっているときなどは、食べること自体を避けた方がよさそうですね。
きのこの生食について 結論!
- きのこは生食NG!生焼け・生煮えもダメ
- きのこを生で食べてしまったら、中毒症状が出る危険性がある
- 生のきのこはアレルギー症状の原因になる危険性もある
口コミなどには、レストランで生のえのきを使ったサラダが提供されて、食べたら「激しい吐き気の後の嘔吐・腹痛・下痢などの症状で苦しんだ」という実体験もありました。
ネット上には、「新鮮なきのこは生で食べても大丈夫」という情報がありますが、間違いです!
普段から食生活に気をつける赤ちゃん・子供さん・妊婦さんなどだけではなく、健康な方もきのこを生食しないで下さい。
ちなみに、犬などのペットにも生のきのこを食べさせないで下さいね。
生食可能なきのこを発見!マッシュルームについて
きのこの中で唯一、マッシュルームだけは生食ができます。ただし、下記の点にご注意下さい。
- 生で食べられるのは、収穫後3~4日の新鮮なときだけ
- かさがひらいてきたら、加熱して食べる
新鮮なら生食OKとされているマッシュルームですが、生食する上でいくつかご注意頂きたい点があります。
- 保存状態が悪ければ、すぐに劣化する場合もある
- 生で食べ過ぎると、消化不良などを起こす危険性がある
- マッシュルームに含まれる糖類の影響で下痢になる体質の方もいる
3~4日は目安の日数です。マッシュルームの状態を見て自分で生食できるかを判断した上で、適量を食べるようにしましょう!
*生のマッシュルームの食べ方については、後ほど「きのこの美味しい食べ方は?人気レシピや加熱調理のコツ」でご紹介します。
きのこは生食できないとわかったので、これからはあいまいな情報に振り回されずに、しっかり加熱して食べていきたいと思います。
次に、美味しいきのこを選んで正しく料理するための情報をご紹介します。下処理方法や加熱時間のポイントを、確認しましょう!
新鮮なきのこの選び方は?下処理方法や生焼けの見分け方も解説
スーパーでよく見かける生のきのこは、ほとんどが人工栽培です。
「そんなに古いものは売っていないだろう」と思っているのですが、きちんとチェックしないで買うと、たまに傷む寸前の商品にあたる場合もありますよね。
新鮮なきのこの見分け方と、食中毒を予防して美味しく食べるための方法をご紹介します!
生のきのこのココをチェック!上手な選び方を解説
生のきのこにはさまざまな種類がありますが、どのきのこにも共通する選び方があります。きのこコーナーで、じっくりチェックしてから買うようにしましょう!
チェックして頂きたい順にご紹介します。
- パックの内側に水滴がついていない(新鮮で・正しく保存されていた証拠です!)
- かさがギュッと閉じていて、大きさが均等
- 石づきがほぐれていなくて、全体的に固くハリがある
- かさから石づきまで変色がない
通販では、スーパーなどでは見かけないような野生のきのこも手に入ります。実際のきのこを見ずに買うことになるので、商品説明をよく確認しましょう!
「収穫~出荷~手元に届くまで」どれくらいの時間がかかるのかなどを、把握してから買うのがおすすめです。
生のきのこの風味をいかす!上手な下処理のポイント
「きのこの豊かな旨味を期待して料理をしたはずなのに、なぜか薄味…」なんていう失敗はないでしょうか?
きのこにはそれぞれに旨味成分が含まれているので、上手に料理をすれば、香りも味も十分に感じられるはずです。
きのこの美味しさを引き出す下ごしらえのポイントは、2つです!
1.なるべく洗わない(エリンギ以外)
一般的に、きのこはなるべく洗わずに調理すると旨味・香り・栄養を損なわないで食べられます。汚れは拭き取りましょう!
おがくずなど、どうしても取り切れない汚れがあるときの洗い方は、汚れの部分だけを軽く流す程度でOKです。
例外!エリンギは軽く洗う方が安全
エリンギには、ほんの少しですが「シアン」(濃度が濃ければ猛毒です)が含まれています。
一度によほど大量に食べない限りは健康被害が出る可能性が低いのですが、シアンはアルコールや水に溶けるので、軽く洗って使う方が安全です。
またエリンギが古くなるとシアンの濃度が高まるので、なるべく早く食べ切って下さいね。
2.煮る場合は水から入れてゆっくり加熱
きのこの旨味が一番出やすい温度は、60℃~70℃です。(ホクトHPより)
きのこを水から入れてゆっくり火を通すと、60℃~70℃での茹で時間が長くなって、料理の風味が増します!
生焼けを防ぐ!きのこの加熱時間はどれくらい?
生のきのこに含まれる栄養素の中には、加熱すると破壊されてしまうものもあります。
加熱する時間が長いと食感も悪くなる場合があるので、ダラダラと火を通すのは避けたいですよね。
加熱時間は、下記を目安にしてみて下さい。
- しめじなど大きくないきのこ:2分ほど
- エリンギのように太くて大きいきのこ:3分ほど
火が通るまでの時間が短いので、生のきのこは電子レンジ調理がしやすい点も魅力です。
電子レンジでの加熱時間はどれくらい?
きのこの量によって時間を調整する必要がありますが、しめじ1房なら600Wで2分ほどを目安になさって下さい。
電子レンジ調理の場合は、加熱ムラで生の部分が残る可能性もありますよね。生焼け・生煮えの部分の見分け方は、下記がわかりやすいです。
- 触ってみる:中心部に固さが残っている
- 少し食べてみる:生臭い感じがする
生のきのこを下処理するポイントと加熱時間の目安がわかったので、あとは料理するだけですね!
次に、きのこの美味しい食べ方もチェックしていきましょう。
きのこの美味しい食べ方は?人気レシピや加熱調理のコツ
私はきのこが主役の料理を思いつきませんが、味噌汁や炒め物に加える存在として、重宝しています。
今回は、きのこが主役になる美味しい食べ方のレシピをご紹介します。
マッシュルームのサラダ・マリネ
先ほどお話しした新鮮なマッシュルームなら、スライスしてサラダやマリネで食べられます。
マッシュルームにはホワイトとブラウンがありますが、あっさりしていて優しい味わいの、ホワイトをサラダにするのがおすすめです!
合わせる具材との味のバランスで、味付けをしてみて下さい。
- オリーブオイルと塩だけ
- バルサミコ酢を加える
- にんにくをほんの少し加える など
リゾット
きのこをゆっくり炒めて旨味を引き出してから、米と合わせてリゾットにしてみて下さい、きのこの旨味たっぷりの、本格リゾットが出来上がります!
レシピは下記の動画が簡単でわかりやすいので、参考にしてみて下さい。
バターソテー
オリーブオイルをフライパンに入れてにんにくで香りづけをし、きのこをゆっくりと炒めて麺つゆ&バターで味付けをすれば出来上がりです!
5日ほど日持ちするので、作り置きしておくと便利ですね。
そのまま食べるだけではなく、お肉や魚のソース・混ぜご飯の具材など、アレンジもできます♪
最後に、きのこの日持ちや正しい保存方法も確認したいと思います。保存環境によっては、新鮮なきのこでも1日で劣化してしまう場合があります。
美味しいまま長持ちさせるポイントをチェックしましょう。
生のきのこの日持ちや賞味期限は?長持ちさせる保存方法も紹介
生のきのこを長持ちさせるには、きのこにとって最適な環境で保存する必要がありますよね。
まずは通常の日持ちを確認して、フレッシュな状態を長くキープするための保存方法もご紹介します。
生のきのこには賞味期限が無い!どれくらい日持ちするの?
よく行くスーパーで、生のきのこの賞味期限をチェックしてみました。すると、どのきのこにも賞味期限が書かれていません。
そこで食品表示法を確認すると、きのこ・生鮮野菜・果物には賞味期限表示義務がないとわかりました。
正しく保存していた場合にどれくらい日持ちするかの目安を知って、食べられるかどうかは自分で判断する必要がありますね!
生のきのこの日持ちは、下記を目安になさってみて下さい。
生のきのこの日持ち
- 常温:1~2日(気温や湿度に左右される)
- 冷蔵庫:5日くらい
- 冷凍庫:1ヶ月以内
*買ったときの鮮度やきのこの種類によっても日持ちが左右されます。
多少古くなっても食べられる場合がありますが、下記のような状態になったら食べないで下さい!
- カビが生えている
- 水で洗ってもぬめりが取れない
- 石づきがほぐれて柔らかい
- 異臭がする など
常温は、きのこにとって温度が高すぎます。呼吸が多くなってすぐに傷んでしまうので、必ず低温で保存しましょう!
生のきのこは正しく保存!風味をアップさせる保存方法も紹介
大阪市中央卸売市場のHPには、生のきのこを保存するときの最適な温度が公表されています。
きのこの種類によって多少違いがあるので、表でご紹介します。
保存場所 | きのこの種類 | 最適温度 |
冷蔵庫のチルド室 | なめこの脱気パック | 0℃ |
マッシュルーム | 0~1℃ | |
冷蔵室 | しいたけ | 0℃~2℃ |
野菜室 | ぶなしめじ | 0℃~5℃ |
えのき・エリンギ・まいたけ・まつたけ | 野菜室の温度 |
3~5日ほどで食べ切れる場合は、表でご紹介した保存場所で保存しましょう。
買った時点で食べ切れないと分かっている分は、早めに冷凍するのがおすすめです!
冷蔵庫での保存方法
きのこを買ってきたパックのまま冷蔵庫に入れると、袋の内側に水滴が出てきます。水滴を放置するとカビや劣化の原因になるので、下記のように保存なさって下さい。
- きのこをパックから出す
- 一房or1本ずつキッチンペーパーで包む
- ジップつきの保存袋に入れる
- 空気を抜いて密閉し、それぞれの保存場所に入れる
石づきがあるきのこの場合は、石づきをカットせずに保存して下さいね。カットすると、断面から乾燥&酸化して傷むのが早くなります。
石づきがついているきのこを1房全部使い切らない場合も、余った分を石づきごと保存しましょう!
冷凍庫での保存方法
生のきのこを冷凍するとシャキシャキとした食感がなくなりますが、下記のメリットがあります。
- 保存期間が長くなる
- きのこの細胞が破壊されて、旨味・香り・栄養が出やすくなる
食感を味わいたい場合は冷蔵庫保存、きのこの風味をより引き出したい場合は冷凍庫保存と、料理に合わせて保存場所を分けるのも良いですね!
冷凍庫での保存方法は、こちらです!
- 石づきをカットする
- 汚れを拭き取るor軽く洗い流す
- 1回使う分ずつ小分けにして、ジップロックのような密閉できる保存袋に入れる
- 空気を抜いて密閉する
- 保存袋ごと新聞紙に包む
- 冷凍庫に入れる
- 完全に凍ったら、新聞紙をはずしてOK
新聞紙に包むのは、きのこをゆっくり凍らせるためです。一般的に食品は早く凍らせる方が元の味をキープできますが、きのこは逆です!
ゆっくり凍らせると、きのこに含まれる水分が大きな氷の粒になります。氷の粒で細胞が壊されると、旨みや香りが出やすくなりますよ♪
長期保存の裏技・干しきのこもOK!
干しきのこの代表といえば「干ししいたけ」ですが、高級品ですよね。しいたけはもちろん、ほとんどのきのこがお家で簡単に干せるので、ぜひお試し下さい!
きのこを干すと、旨味と栄養が凝縮する上に常温でも1ヶ月ほど長持ちします。
下記のようなアイテムがあると、簡単&手軽に食品が干せます。
まとめ
きのこが生食できない理由から安全に・美味しく食べる方法まで、詳しくご紹介してきました。
ポイントをまとめてみます!
- きのこは生食できない。原因がわからない場合もあるが、生焼け・生煮えも危険
- マッシュルームだけは、新鮮なら生食OK
- 新鮮なきのこを選ぶために、袋の内側の水滴などをチェックする
- エリンギ以外のきのこは洗わないで調理する
- きのこは火が通りやすい食材。数分を目安に中心部まで加熱が必要
- きのこはゆっくり加熱すると旨味や香りを生かして料理できる
- きのこは常温で日持ちしない。数日で食べ切れる分は冷蔵庫保存・食べきれないと分かっている分は冷凍がおすすめ
「生のきのこは全部毒」という情報がショッキングでした。
普段よく食べている「ぶなしめじ」などでも毒素について詳しいことがわかっていないので、安全性重視で「加熱」をしっかりしていきたいと思います。
口コミなどできのこに関する情報をチェックすると、「生食OK」という声がたくさんあります。あいまいな情報をうのみにしないように、気をつけたいですね!
新鮮なきのこの選び方と旨味・香りを最大限に引き出す下処理もわかったので、これからはもっときのこを楽しめそうです。
今回ご紹介した情報を参考に、ぜひ安全に・美味しくきのこを食べて下さいね。