【監修者:管理栄養士 中村明美】
ほうれん草を食べ過ぎるとシュウ酸や食物繊維を大量に摂取することになり、尿路結石や下痢、腹痛などが起こる可能性があります。
しかしシュウ酸は工夫次第で除去することができ、体に良い他の栄養素もたくさん含まれているので、健康な人が一般的な量を食べるならほとんど心配ありませんよ。
ほうれん草は栄養豊富で、味や食感にクセがないため、頻繁に食べる方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、食べ過ぎによる悪影響は心配になりますよね。そこで、今回は以下のことを調査しました。
ほうれん草の食べ過ぎによるデメリットの噂にあった、「胆石ができる」「歯が溶ける」の真偽も解説しています。
また、シュウ酸を減らす下ごしらえ方法や食べ合わせに良い食材もチェックできるので、今後はより安心してほうれん草を食生活に取り入れられるでしょう。
さらに赤ちゃんや幼児に与える際の適量も紹介しているので、参考にしていただけたら嬉しいです。
管理栄養士・栄養士
目次
ほうれん草を食べ過ぎると病気になる?シュウ酸に注意する理由は
ほうれん草を食べ過ぎると、含有成分によって尿路結石やじんましんなどの病気や下痢になる場合があります。
過剰摂取でデメリットが起こりうる成分の特徴や、体調不良を引き起こす仕組みについて、まずはシュウ酸の影響から確認してみましょう。
シュウ酸の摂り過ぎで尿路結石になるリスクがある
ほうれん草を食べ過ぎると、豊富に含まれるシュウ酸が尿路で結晶化し、尿管結石(腎臓結石や尿管結石など)の原因になる可能性があります。
尿管結石は、猛烈な痛みを伴い再発もしやすいため、既往歴がある方はシュウ酸を多く含むほうれん草などの食材を摂り過ぎないよう気をつけましょう。(※1)
また、シュウ酸は唾液内のカルシウムと結合するとえぐみとなり、「歯がきしむ」という症状が現れることがあります。(※2)
ちなみに、ほうれん草の食べ過ぎで歯が溶けるという噂もあるようですが、根拠はありません。
歯の表面のエナメル質が溶けてしまう状態は、酸性の飲食物によって起こります。
しかしほうれん草はアルカリ性食品であり、むしろ歯が溶けるのを防ぐはたらきがあります。(※3)
このように、シュウ酸は尿路結石や歯がきしむ原因になる場合があります。
また、胆石が起こりやすくなるという噂もあるようです。
確かに尿路結石と同じく病名に「石」がつきますが、真相はどうなのでしょうか?
胆石も起こる噂は本当?デマ?
ほうれん草の食べ過ぎで胆石ができるという噂は、事実ではありません。
胆石は、肝臓で作られる胆汁が胆のうや胆管で固まって作られ、主な構成成分はビリルビンという色素やコレステロールなので、ほうれん草とは関係がありません。(※4)
なので、上記の噂はデマだと言えます。
さらに、ほうれん草の食べ過ぎるで腹痛や下痢を起こる原因は、不溶性食物繊維の影響も考えられます。
不溶性食物繊維が下痢や腹痛、吐き気の原因になる可能性も
ほうれん草に含まれている不溶性食物繊維の影響で、食べ過ぎると下痢や腹痛が起こる可能性はあります。
水に溶けにくい不溶性食物繊維は、水分を吸収して便のカサを増やして大腸を刺激し、便通を促すはたらきがあります。(※5)
そのため、体質によっては不溶性食物繊維の過剰摂取で以下のデメリットが生じる可能性があるので注意しましょう。
ほうれん草で下痢や腹痛が起きたという口コミは実際にあります。
朝のほうれんそう…あれが効いたな(下痢及び腹痛)
— sh@ll (@shall_204) July 31, 2017
朝にほうれん草を食べたそうですが、どのくらい食べたのでしょうか。
さらに、食べ過ぎて気持ち悪いと投稿した人もいます。
ほうれんそう食べすぎて気持ち悪いウップ
— みはえる (@BEautiFu1SumY) January 24, 2018
不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収すると膨らむので、これによって胃が圧迫されたのかもしれません。
生のほうれん草100g中に含まれる食物繊維は2.8g(不溶性2.1g、水溶性0.7g)です。(※8)
他の野菜と比べても含有量はそれほど多くありませんが、不溶性食物繊維を多く含む食べ物と組み合わせる際には注意しましょう。
また、ほうれん草を食べ過ぎるとじんましんが起こる可能性があるようです。
じんましんが起こる可能性もある
ほうれん草には、かゆみを引き起こすヒスタミンに似た物質が含まれているため、食べるとじんましんが出る可能性があります。(※9)
食材によるじんましんでメジャーなのはアレルギーで、特定のアレルゲン食材に反応しやすい人が食べれば必ず症状が出ます。
しかし、ほうれん草のように非アレルギー性のじんましんの場合は、症状が出るかどうかは、食べ方や量、吸収の度合いに影響されるようです。
ワイも昔診断出てないけどほうれんそうたべるとじんましん出たんだよな…
— りり (@H_karakurenai) October 20, 2018
このように過去にほうれん草でじんましんが出たことがあるという口コミも見かけます。
アレルギーでなければ血液検査をしても原因物質は検出されないので、明らかな診断名がつかない場合もあるかもしれませんね。
ほうれん草は食べ方次第で体に悪い影響を及ぼすこともあり、特にシュウ酸の摂り過ぎは毒になり得ると分かりました。
では、食べ過ぎにならない適量や、メリットについても確認しておきましょう。
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ほうれん草の食べ過ぎにならない1日の摂取量はどのくらい?
ほうれん草の食べ過ぎにならない1日の適量は110~125g程度です。
他のデメリットの原因となるシュウ酸やヒスタミン様物質に関しては、摂取許容量が設定されておらず適量を判断できないため、食物繊維の含有量から算出しました。
食物繊維で考えるほうれん草の適量
ほうれん草の適量は1日あたり男性で125g、女性で約110gで、これは食物繊維の摂取量を考慮した量です。
成人の1日あたりの食物繊維の目標量は、下記の通りとなっています。
男性 | 女性 |
---|---|
21以上 | 18以上 |
これを3食に分けると男性は7g、女性は6gですが、食物繊維は他の食品でも摂るため、ほうれん草から摂る分としては1日あたりその半分、男性3.5g・女性3gと見るのがいいでしょう。
ほうれん草100gに食物繊維は2.8g含まれていることから、適量は男性125g・女性110gとなります。
食物繊維を基準にした適量は通常良く食べられている一般的な量なので、シュウ酸やヒスタミン様物質を極端に摂ってしまうことは避けられるでしょう。
ただし尿路結石を患った経験がある、またはお腹の調子に不安がある方は、これより減らすとより安心ですね。
では、大人ではなく乳幼児の場合の適量はどうなのでしょうか?
子供の場合は?離乳食や幼児食での適量とは
赤ちゃんの場合は生後5か月からほうれん草を食べられ、離乳食初期はスプーン1杯から始め、中期になれば1回あたり20~30g食べられます。
以下は、離乳食における野菜と果物の目安量です。
時期 | 1回あたりの 野菜・果物の目安量 |
軟らかさ |
---|---|---|
初期 (5~6ヶ月) |
スプーン1杯から 始める |
なめらかにすりつぶす |
中期 (7~8ヶ月) |
20~30g | 舌でつぶせるような |
後期 (9~11ヶ月) |
30~40g | 歯ぐきでつぶせる |
完了期 (12~18ヶ月) |
40~50g | 歯ぐきで噛める程度 |
ただし、上記はあくまで野菜と果物を合わせた目安量なので、この範囲でいろんな食品を摂りましょう。
また赤ちゃんは消化機能が未熟なので、次のことにも気をつける必要があります。
- アク抜きをしっかり行う
- 茹でる、蒸すなどして十分軟らかくする
- 食物繊維が多いので、特に初期のうちは良くすりつぶしてから与える
なお、幼児の場合は1日あたりの緑黄色野菜の目安量は1~2歳で60g、3~5歳で90gであり、この範囲内で与えるようにしましょう。(※12)
乳児の場合も幼児の場合も、ほうれん草によって下痢やじんましんになったら、摂取量を調整してくださいね。
ほうれん草を適量で食べた場合に期待できる効果は?
ほうれん草を適量で食べた場合の期待できる効果を紹介します。
下表のとおりビタミンやミネラルが豊富なので、適量で食べればいろいろな効果が期待できます。
栄養成分 | 含有量 | 期待できるはたらき |
---|---|---|
エネルギー | 18kcal | ー |
ビタミンA (レチノール活性当量) |
350µg | 粘膜や皮膚を健康に保つ 体内の酸化を防止する |
ビタミンE (トコフェロールα) |
2.1mg | 酸化を防止・血行改善 |
ビタミンK | 270μg | 出血時の止血 |
葉酸 | 210µg | 赤血球の形成・胎児の発育 |
ビタミンC | 35mg | 酸化を防止・免疫力を高める |
カリウム | 690mg | ナトリウムを尿中に排泄させる 血圧上昇を抑える |
マグネシウム | 69mg | 骨と歯の形成を促す |
食物繊維総量 | 2.8g | 腸の動きを刺激 腸内細菌のバランスを整える 糖質やコレステロールの吸収を抑える |
こんなにメリットがあるほうれん草なので、なるべくデメリットを抑えて食生活に取り入れたいものですね。
そこで、次はほうれん草の特徴であるシュウ酸を除去する方法について紹介します。
ほうれん草以外での、シュウ酸を含む食べ物や飲み物もあわせて解説していきますよ。
ほうれん草のシュウ酸の抜き方とシュウ酸を多く含む食べ物・飲み物
シュウ酸の摂取を極力減らすポイントは、茹でることと食べ合わせです。
ポイントさえ抑えておけば、シュウ酸のデメリットが気にならなくなるでしょう。
シュウ酸を除去するには茹でる!
シュウ酸は水に溶ける性質があるので、茹でるといいですよ。
例えば、仮に3分茹でるとシュウ酸を37~51%減らせるというデータがあります。(※14)
でも、3分も茹でるとクタクタになって食感が落ちるので加減が難しいですが、少しでも長めに茹でることでシュウ酸が減らせるので、試してみる価値はあるでしょう。
さらにしっかり絞れば、水分に溶け出しているシュウ酸の約半分が減らせるそうです。
メイン料理の添え物として炒める場合も、いったん茹でておくといいですね。
また、最近は生で食べられるほうれん草もありますが、念のためにいったん茹でることをおすすめします。
ちなみにこちらは茹でたほうれん草を乾燥させたもので、水で戻せばすぐに使えるので便利ですよ。
また、他の食材と組み合わせて摂ることでシュウ酸の吸収を減らせます。
食べ合わせによってシュウ酸の吸収を減らせる!
シュウ酸は以下のようにカルシウムと一緒に摂ると、腸内でこれらが結合しそのまま便として排出されるので、吸収を抑えられます。(※15)
- チーズと合わせてキッシュにする
- 茹でて、しらすや海藻と和える
- おひたしにして鰹節をかける
どれも簡単な方法なので、取り入れやすそうですね。
なお、シュウ酸を含む食材はほうれん草以外にもあるので、摂取の仕方に注意しましょう。
シュウ酸を多く含む食べ物・飲み物もカルシウムと一緒に!
シュウ酸が含まれる食材はほうれん草以外にも、ココアやコーヒー、緑茶といった飲み物や、バナナやブロッコリー、サツマイモなどの食材に多く含まれています。
体への悪影響が気になる人は摂り過ぎないことや、カルシウムと一緒に摂るようにすることが大切ですよ。
例えば、ココアやコーヒーにはミルクを入れる、バナナはヨーグルトと一緒に食べるなどがおすすめです。
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結論|ほうれん草は食べ過ぎに注意して適量を守ろう
ほうれん草の食べ過ぎは、尿路結石、下痢、腹痛、じんましんなど体調不良の原因となる可能性があります。
しかし適量を守っていれば心配はいりませんし、健康へのメリットはたくさんあります。
また、長めに茹でる、カルシウムと一緒に摂ることでシュウ酸の吸収を抑えられるので、私も今後は少し長めに茹でて、鰹節やしらすを乗せるなどしていきたいと思います。
せっかくの栄養豊富なほうれん草、メリットをしっかり受け取って美味しく摂取していきましょう。
参考資料
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※1 vol.47 結石はどうしてできるの?|オムロンヘルスケア株式会社
※2 ~口の中がキシキシする食べ物~|医療法人社団 晧明会 伊藤歯科医院
※3 お酒で歯が溶ける?|医療法人社団 桜香 あんざい歯科
※4 胆石症・胆嚢|独立行政法人労働者健康安全機構 東北ろうさい病院
※5 健康長寿ネット|公益財団法人 長寿科学振興財団
※6 悩みと助言|静岡県立静岡がんセンター
※7 過敏性腸症候群の人が知っておきたい食事療法|協立内科クリニック
※8 野菜類/ほうれんそう/葉/通年平均/生|食品成分データベース(文部科学省)
※9 皮膚科Q&A|公益社団法人 日本皮膚科学会
※10 栄養成分ナビゲーター|グリコ株式会社
※11 離乳食ざっくりスケジュール|厚生労働省
※12 幼児の食生活|西宮市
※13 分かりやすい栄養成分解説|味の素株式会社
※14 Mindsガイドラインライブラリ|公益社団法人 日本医療機能評価機構
※15 よくある症状Q&A|医療法人 援腎会