【監修者:管理栄養士 中山沙折】
油は賞味期限切れでも未開封なら食べられる場合が多いですが、状態によっては食べられないこともあるので注意が必要です。
また、開封後なら賞味期限切れでなくても食べられない可能性もありますよ。
というのも、油の賞味期限は長いので本来なら期限切れですぐに食べられなくなるものではないですが、保存状態によっては食中毒のような症状を引き起こすからです。
今回は、以下のようなことを解説しています。
サラダ油・キャノーラ油などの食用油はすぐに腐るものではないので、買い置きしている方も多いのではないでしょうか。
お中元やお歳暮で、数本入りのセットをいただくこともあるでしょう。でもしばらく保管していたら、いつのまにか期限切れになっていることも…。
こんなとき、捨てるのはもったいないものの、食べても大丈夫なのか分からず困りますよね。
しかしこの記事を読めば、賞味期限が容器や油の種類によって違うことや食べられない油の見分け方が分かります。目の前に賞味期限切れの油があっても迷わなくなりますよ。
また、食べられない油の使い道も分かりやすく解説しますので、参考にしていただければ嬉しいです。それでは一緒に見ていきましょう!
管理栄養士・栄養士
目次
賞味期限切れ油がいつまで使えるかは種類・状態で違う
賞味期限切れの油がいつまで使用できるのかは、油の種類や状態によって違います。
これから詳しく解説しますが、その前にまずは、油に設定される賞味期限について解説しておきますね。
油に設定される賞味期限は容器によって異なる
油は製造後1~2年の賞味期限があるので、未開封なら賞味期限切れ後すぐに食べられなくなるわけではありません。
そして原則的に、容器の種類によって賞味期限は違います。
日本植物油協会は、サラダ油などの標準的な賞味期限を容器によって以下のように定めています。(※1)
缶や着色ガラス瓶、紙容器の賞味期限が最も長く、次いで透明ガラス瓶、ポリ容器と短くなっていますね。
このように賞味期限が異なるのは、「容器の種類によって酸化しやすさが違う」からです。
そもそも油は「光・熱・空気」によって酸化しやすいので、保管中はそれらを避ける必要があります。
しかし、容器の種類によっては光や熱を通しやすいもの、逆に通しにくいものがあります。そのため、容器の種類に合わせて賞味期限を設定する必要があるわけなんですね。
そういうわけで、以下のことを覚えておくといいですよ。
- 缶や着色ガラス瓶、紙容器は光や熱を通さないので酸化が進みにくく、賞味期限は原則的に2年。
- ポリ容器は光などを通し酸化が進みやすいため、賞味期限は1年。
このように、容器の種類によって油の賞味期限は違っています。
ところで、油の賞味期限は容器の種類だけでなく油の種類によっても異なるんです。
その点を次に説明していきますね。
サラダ油・キャノーラ油など種類別に日持ちを調査
基本的に、油は未開封であれば比較的日持ちがしますが、開封後はほとんど保存が効かなくなります。
今回は、国内主要メーカー4社の商品を調べ、油の種類別に賞味期限や開封後の日持ちを表にまとめました。
まずは種類別の賞味期限からご覧いただきましょう。
油の種類別の賞味期限は?
実際に各メーカーが油の賞味期限を設定する際は、先述の日本食物油協会の基準をもとにし、厳正な品質チェックをしたうえで決めています。
やはり1~2年で賞味期限は設定されていますが、種類によって多少の違いがあります。
今回は、国内主要メーカー4社(味の素株式会社、日清オイリオグループ株式会社、昭和産業株式会社、ボーソー油脂株式会社)の商品で、油の種類別に賞味期限を調査しました。
その結果をまとめた表はこちらです!
油の種類 | 賞味期限 |
---|---|
ごま油 | 2年 |
オリーブオイル | 2年 |
菜種油 | 1.5年 |
サラダ油 | 1~1.5年 |
キャノーラ油 | 1~1.5年 |
米油 | 1~1.5年 |
オメガ3オイル (亜麻仁油・えごま油) |
1年 |
このようの賞味期限の差は、酸化の進みやすい種類かどうかが関係しています。
オリーブオイルにはオレイン酸やポリフェノール、ごま油にはリグナンやビタミンEといった酸化に強い成分が含まれています。(※2)
反対に、亜麻仁油やえごま油のようなオメガ3系の油は常温でも非常に酸化しやすい性質があり、また酸化すると毒性の強い過酸化物質というものが生成されます。(※3)
それゆえに、オリーブオイルやごま油は賞味期限が長く設けられ、反対にオメガ3系の油は賞味期限が短いんですね!
ここまで見てくると、中には「油の種類によって賞味期限が違うとしたら、開封したあとの日持ちも種類によって違うのか?」ということが気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで開封後の日持ちも種類によって違うかどうか調べたので、一緒に見ていきましょう。
油の種類別に開封後の日持ちも調査!
油の製造メーカー「味の素」では、開封後の日持ちについて以下のように説明しています。
Q:油は開封後、どのくらい使用できますか?使用後の油はどの位まで使えますか?
A:開封した油は、空気や光などにより、酸化が進みやすくなります。
開封後は、賞味期限や容器に関わらず、1〜2ヶ月以内を目安にして、お早めにお使いください。
引用元:商品に関するご質問|味の素株式会社
先述の国内主要メーカー4社の商品を調べたところ、どの種類も開封後は日持ちがしないことがわかりました。
その調査結果を整理した表がこちらです。
油の種類 | 開封後の日持ち |
---|---|
サラダ油 | 1~2ヶ月でなるべく早く使い切る |
キャノーラ油 | |
オリーブオイル | |
ごま油 | |
米油 | |
菜種油 | |
オメガ3オイル (亜麻仁油・えごま油) |
1ヶ月でなるべく早く使い切る |
この表から、以下のことが言えますね。
特にオメガ3系の油は1ヶ月と短く設定されている。
そして各メーカーが口を揃えて強調していたのは、開封後は種類や賞味期限に関わらずなるべく早く使い切ってほしいということでした。
この理由は、油はいったん開封すると光や空気の影響を受けやすくなり酸化が進むためです。
ここまでで、賞味期限は容器や油の種類によって違うこと、開封後は日持ちがしないことを紹介しました。
このように種類や容器によって賞味期限が設定されている油。
しかしその賞味期限が切れてしまっている場合はどうなのでしょうか。
友人は2年前に期限が切れた油が引き出しから見つかり、それはさすがに怖くて捨てたということでしたが、1~2ヶ月過ぎた程度だとさすがに悩みますよね。
それでは、賞味期限切れの油はいつまで使えるのか、次に解説していきますね!
賞味期限切れの油がいつまで使えるかは種類や状態による
賞味期限切れの油がいつまで使えるのかは、種類や状態によります。
先述のように油の賞味期限は種類によって違いがあるので、期限切れの場合にいつまで使えるかも、やはり種類によることになります。
また、期限切れの油は保管環境によって酸化の進行度合いが変わってくるといわれています。
賞味期限を過ぎた油は、時間の経過とともに風味が落ちてきますし、流通段階での保管環境やお客様の保管環境によって、酸化の進行度合いが異なってきます。仮に理想的に保管されていたとしても油の酸化は少しずつ進んでいます。
引用元:ごまのQ&A|知る・楽しむ|【公式】かどや製油株式会社
ここで多くの方が気になるのは、酸化が進んで食べられない油はどうやって見分けるのか、ということではないでしょうか。
また、もし酸化が進んだ油を食べてしまったらどうなるのかも気になるところかもしれません。
そこで次は、「賞味期限切れの油を実際に使った場合にどうなるか」について実例を挙げて解説し、続いて「食べられない場合の見分け方」を紹介しますね。
未開封でも賞味期限切れの油は危険?注意点と見分け方
油が賞味期限切れになっていた際、未開封の場合でも使えるとは限らず、安心はできません。
状態によっては食中毒のような症状を引き起こす場合があるので、見極めが必要となります。
早速、どんな危険性があるのか一緒にみていきましょう。
食中毒症状を引き起こす可能性も!
賞味期限切れの油を使った結果、食中毒症状を起こした例があります。
2つほど紹介しますね。
なんか下痢すると思ったら油の賞味期限ガッツリ切れてやがった
— 水蜜好きなちるのふ (@tirunonoumami) January 30, 2020
油の賞味期限って通常はあまり注意して見なかったりしませんか?
なので、「体調を崩してその原因を探ったら賞味期限切れに気づいた、なんてこともありますよね。
最近サラダ油をあまり使っておらず(肉の油だけで対処したり、使ってもごま油とオリーブオイルばっかだった)久しぶりに盛大に使ったのですが、賞味期限(未開封)が9ヶ月くらいすぎてるのを来年までと勘違いして
いま腹痛&吐き気&腹下しできつい
以前も一度サラダ油やらかして嫌になって避けてたら…ぁあ pic.twitter.com/beq3LpTaNZ— Kaya🐸ゲーム中心雑垢 (@azuking0308) November 17, 2020
腹痛と吐き気、下痢が重なって辛かったでしょうね…。
また確かに賞味期限が長いので、期限を過ぎていても勘違いしてしまうことはあるでしょう。
このように賞味期限切れの油によって食中毒症状が起こりうるなんて、怖いですよね。
そのため、賞味期限切れの油を食べることの危険性について、日清オイリオの公式サイトにも注意喚起があるので注意しましょう。
普通に食べられる程度であれば直ちに害があるとは考えられません。酸化した油を食べるとご気分が悪くなったり、むかむかと胸やけを感じる方もいます。但し、鼻につくような臭いがでるほどの油では、嘔吐、下痢、腹痛等食中毒類似の症状が出ることがございます。
以上を見てきて、賞味期限切れの油を食べることは危険な場合もあるとわかりました。
そのため、危険な状態の油は摂取しなくて済むように、簡単に見分けられたらいいですよね。
そこで「食べられない油の見分け方」を調査したので、これから紹介しますよ。
酸化で疲れた油の見分け方
酸化が進んで食べられない状態の油を見分けるポイントは、大きくわけて5つあります。それは「色・におい・泡・ねばり・煙」です。
具体的な内容は下の表に整理しましたので、ご覧になってくださいね。
1.色 | 鍋の色が見えないくらい濃い色 |
2.におい | 塗料や枯れ草、焦げたようなにおい |
3.泡 | 揚げ物をすると細かく消えにくい泡ができる (カニ泡) |
4.ねばり | 温度が低いときにドロッとしたねばりが出る |
5.煙 | 180℃くらいでも煙が出やすくなる |
この中で、最もイメージしにくいのは「泡」ではないでしょうか。私は「カニ泡ってどのくらいの細かさの泡?」と疑問に思い、調べてみました。
日清オイリオの公式サイトではカニ泡の画像が掲載されています。細かくて消えにくい泡が鍋一面に広がる状態が見てとれますので、油を見分ける際に役立ちますよ。(※4)
ちなみに、開封後や天ぷらなどの揚げ物で使った油を保存しておいた場合も酸化が進みやすいです。
以上のように、食べられない油の状態は色やにおい、泡の立ち方などで見分けることができます。
もし油の状態を確認してみて食べられない状態だと分かったら、他の使い道を考えるか、正しい方法で処分しましょう。
ではこのあと、賞味期限が切れた油の使い道や、正しい処分方法を紹介しますね。
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賞味期限が切れた油の使い道や正しい処分方法
賞味期限切れで食べられない状態の油はほかの使い道で有効活用するか、正しく処分しましょう。
食べられない状態の油の使い道の1つに、廃油石鹸にアレンジする方法があります。
早速、その具体的な作り方をご紹介しますね。
廃油石鹸の簡単な作り方
廃油石鹸の作り方は大きくわけて2つあります。
では、それぞれの作り方をこれから説明していきますよ。
苛性ソーダを使った廃油石鹸の作り方
まずは苛性ソーダを使う方法を紹介します。その前に、苛性ソーダの扱いについて大切なことを記載しておきますね。
苛性ソーダは劇薬なので手で触れたり目に入ったりすると危険です。苛性ソーダを扱う際は眼鏡、マスク、手袋をしましょう。
用意するもの
- 賞味期限切れの油300g
- 苛性ソーダ36g
- 水116g
- 牛乳パック
- 苛性ソーダと水をボールなどに入れて混ぜる。混ぜていくうちに高温になるので注意
- 苛性ソーダ水が冷めたら、油に混ぜる。苛性ソーダ水が周りへ飛ばないよう注意
- 20分前後混ぜ合わせ、とろみがついたら牛乳パックに流す
- 口をガムテープで止め、1週間ほど放置する
- 牛乳パックから出して好みの大きさにカットし、さらに1ヶ月放置して熟成させたら完成
苛性ソーダを使った廃油石鹸作りは、こちらの動画が分かりやすいですよ!
ただ、先述のとおり苛性ソーダは劇薬なので、購入方法や詳しい使い方、余った場合の廃棄方法はあらかじめきちんと調べてから使用しましょう。
ところで、劇薬である苛性ソーダを使うのはちょっと怖い…という方も多いのではないでしょうか。そこで苛性ソーダを使わない方法もご紹介しますね。
手作りキットを使った廃油石鹼の作り方
最近では、苛性ソーダを使わず簡単に石鹸を作れるキットが販売されています。
劇薬ではないので、小さなお子さんと一緒に作る場合も安心して作業できますよ。例えばこちらのような商品です。
では、使い方を紹介しますね。
用意するもの
- 混ぜたら石鹸(薬剤は液体と粉末の2種類が入っています)
- 賞味期限切れの油500gくらい
- 出来上がったものを入れる容器(500g程度のものが入る容器)
- 「混ぜたら石鹸」の外袋に油を入れる
- 油に液体の薬剤を入れ、袋のチャックを入れる
- しっかり振り混ぜる
- 白くなってきたら粉末の薬剤を入れ、とろりとしたクリーム状になるまで振り混ぜる
- 静置しても油が浮いてこなくなったら混ぜるのをやめる
- 袋のチャックを閉じたままで一晩(8~10時間)放置して完成
これなら簡単かつ安全に作れるので、お子さんと一緒に作業する方も安心ですね!
このように、食べられない油をアレンジする方法はありますが、アレンジをせずに廃棄する場合は、正しい方法で処分することが大切です。
このあと、油の正しい処分方法を紹介しますね。
正しい油の捨て方
食べられない油をほかに使わない場合は処分することになりますが、正しい方法で処理しましょう。排水口に流すのは絶対にNGです!
- 油が冷えて固まり、排水管や下水道が詰まる
- 下水処理場で油を浄化するために水を大量に使うので、自然環境に負担をかける
このような理由があるので、そのまま排水口には流さずに正しい方法で処分しましょう。油を正しく捨てる方法は以下の3種類があります。
コストや手間を考えて、一番やりやすい方法で行うとよいでしょう。
これから、この3つの処分方法を簡単に紹介しますね。
新聞紙にしみ込ませて捨てる方法
牛乳パックに新聞紙を入れ、冷ました油を入れてしみ込ませ、可燃ごみとして捨てる方法です。
廃材を利用すれば済むので、余分なコストがかからなくていいですね。
ただし、油がしみ込んだ新聞紙は、熱や光により自然発火する場合があるので、以下のことに気を付けましょう。
- 水も少量入れておく
- ガムテープで密封して捨てる
- 直射日光が当たる場所に放置しない
市販の凝固剤で固めてから可燃ごみとして捨てる
2つめの方法は、市販の凝固剤を使うというものです。
油が冷めきる前に市販の凝固剤を入れ、一晩置いて固まったら可燃ごみとして捨てます。
コストは多少かかりますが、混ぜて放置しておけば固まるので楽ですね。
こちらの商品は定番中の定番ですが、簡単なので私は愛用していますよ。
自治体の廃油回収のシステムを利用する
自治体によっては、廃油回収を行っている場合もあります。ご興味のある方は、お住まいの自治体に問い合わせてみてくださいね。
以上ご紹介してきたように、油を捨てる正しい方法は3種類あります。環境に配慮して正しい方法で処分しましょう。
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結論|賞味期限切れの油は状態を見て判断しよう
油は賞味期限が比較的長いため未開封なら食べられる可能性もありますが、保管状態によっては酸化して食べられなくなっている場合があります。
開封後は賞味期限に関わらず1~2ヶ月以内に使い切るのが基本なので、怪しいな・・・と思ったら色やにおいなどの状態をよく確認して使えるか判断しましょう。
酸化して疲れた油を無理に食べると食中毒症状を引き起こすおそれもあるので、廃油石鹸にアレンジするか、正しい処分方法を守ってください。
私も先ほど、自宅にある期限切れの油を確認してみました。すると、塗料のようなにおいがしていたので迷わず処分することに決めました!
食生活では欠かせない食用油ですが、ぜひとも安全に使っていただき、健やかな毎日を過ごしていただけたら嬉しいです。
参考資料
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※1 <食用植物油> ―用植物油の日付表示に関するガイドライン(抜粋) |日本植物油協会
※2 オリーブオイルは酸化に極めて強い食物油|株式会社il Bianco
※3 『健康に良い』オメガ3脂肪酸の落とし穴|小早川医院
※4 疲れた油の見分け方 | 日清オイリオ’sキッチン