【監修者:管理栄養士 坂本圭子】
鶏肉の唐揚げを味見をしてみようと食べたところ、生焼けの食感でしたが飲み込んでしまいました…。
生焼けの鶏肉を食べてしまったら食中毒になるのではないかと心配になったのですが、数日経っても何ともなかったので無事だったようです。
たまたま大丈夫だったかもしれませんが、実際のところ生焼けの鶏肉を食べたら腹痛や下痢などの症状が起こるようなので、心配ですよね。
そこで今回は、生焼けの鶏肉を食べた場合の対応策など以下の項目について調べてみました。
- 生焼けの鶏肉が原因の食中毒症状
- 生焼けの鶏肉を食べた時の対処法
- 子どもや赤ちゃん、妊婦は注意が必要な理由
- 鶏肉が生焼けか判断する方法
- 生焼けを防ぐ最適な加熱時間の目安
鶏肉の唐揚げのように、外側は火が通っているように見えても中までしっかり火が通らない場合も多いので見た目だけで判断するのは難しいですよね。
そこで、鶏肉が生焼けなのか色で判断する方法などの見分け方も紹介します。
美味しく、安全に鶏肉料理が楽しめるように、ぜひ最後までご覧ください!
管理栄養士・栄養士
目次
鶏肉の生焼けによる食中毒症状とは!? 対処方法は?
もし「ガブッ!」と豪快にかじった鶏肉の中が生焼けだったら、生で食べるイメージもありませんし、食中毒になるかもしれないと不安でたまらなくなってしまいますよね。
でも実際のところ、生焼けと言っても「表面に焼き目がついていて中がちょっと薄いピンクが残っているくらいの一切れ」を食べたくらいで何か起きるなんて、めったに無いと考えていて差支えはありません。
生焼けの肉を食べたか否かよりも注意しなければならないのは、生の状態の鶏肉に触った手や調理器具です。
- 生の肉を触った手をきちんと石鹸で洗わなかった
- 生の肉を切った包丁とまな板を、ざっと水洗いした程度でサラダの生野菜を切った
- 中まで焼けているか包丁で切って確認したが、生の状態を切ってしまった包丁とまな板を洗わなかった
というように、生の鶏肉に触れたものをきちんと洗浄しなかったことによって菌が移ってしまって感染するケースがほとんどです。
このことを踏まえて、生焼けの鶏肉を食べてしまった場合の対処方法や予防策について学んでいきましょう。
生焼けの鶏肉で起こる食中毒症状の原因はカンピロバクターが多い
生焼けの鶏肉が原因で感染した可能性が高いならば、一番有力なのはカンピロバクター菌による食中毒です。
カンピロバクターが原因の食中毒は主に鶏肉の不十分な加熱、鶏肉の刺身などの生食によるものや不衛生な調理器具の使用により菌に感染することで、食べてから2~7日間で胸焼けや吐き気、強い腹痛や下痢、嘔吐といった症状が出ます。
潜伏期間が長いため症状が出るまでには個人差があり、何時間後に症状が出るとは言いきれませんが、平均的には2~3日で症状が出ることが多いそうで、何を食べたか忘れてしまってから発症して原因を特定しづらいのが難点ですね。
症状が大したことないと自己判断し、正露丸などの市販薬で様子を見ていたら、発熱や強い腹痛、下痢が続き、時には血便を伴うこともあるので注意が必要です。
発症後は1日に10回、20回とトイレへ駆け込むような状態になることが多いため、なるべく早めに病院を受診してくださいね。
カンピロバクターによる食中毒が多発する時期は4月~6月なので、ゴールデンウィークなんかにバーベキューをするなら、生肉を調理する際の衛生面には十分注意しましょう。
またカンピロバクターは熱に弱いという性質があり、肉の中心部が75℃の時、1分加熱するとカンピロバクターは死滅するので、鶏肉にしっかり火を通すことが予防策です。
ちなみに食中毒でよく名前が挙がる「サルモネラ菌」は鶏卵による場合が多いそうですよ。
生焼けの鶏肉を食べた場合の対処方法
もし生焼けの鶏肉を食べてしまっても、健康な方であればひと口ぐらいならあまり気にすることはありません。
人間の胃酸は非常に強い酸性であるため、ある程度までは自分の胃酸の殺菌力を信じていればいいのです。
もし不安ならば、熱い緑茶やワサビ、酢の物などを生焼け肉を食べたすぐ後に摂るようにすれば、多少の気休めにはなるでしょう。
ただし刺激物は胃粘膜を傷つけてしまうので、あまり大量には摂らないこと!
それよりも気をつけたいのは、食べる前から体調不良だった時です。
風邪気味だったり寝不足だったりと体力が低下している時は当然ながら免疫機能も弱まっており、症状が出る確率が高いです。
だるさを感じていたり、下痢気味、風邪気味の時は調理段階から十分に注意しましょうね。
また高齢者も免疫力が下がっていますので、やはり食中毒を発症しやすいです。
大抵は「おじいちゃんやおばあちゃんが食べるおかずは、柔らかくするためによ~く煮る」という習慣があることが多いので、生焼けや生煮えの心配は少ないんじゃないかと思います。
ですが生肉を触った手や調理器具の扱いには、よく気をつけてくださいね。
子どもや赤ちゃんの食中毒に注意!
小さなお子さんは一般的に食中毒になりやすいと言われています。
加えて、これは私が医師から直接聞いたのですが、大人よりも症状が激しく出ることが多いそうですので、下痢・腹痛・発熱などの症状が出たら、すぐに病院へ行ってください。
医師によれば「市販の下痢止め薬を使っても菌が排出されないけれど、抗生物質の投与で症状は一気に改善できる」ということですので、早めに受診してくださいね。
また調理の途中で赤ちゃんのお世話をする時は、必ずしっかり手洗いをしましょう!
赤ちゃんが泣いていると、早く駆け付けなくちゃと焦ってしまいますよね。
自分の母や姑に「泣かせておけばいいのよ」といくら言われても、焦ってしまうのは寧ろ自然なんじゃないかと思います。
ですが、生の鶏肉に付いていたカンピロバクター菌が、自分の手から赤ちゃんの口に入ってしまうことが絶対にないとは言い切れません。
隅々までしっかり手洗いをし、鶏肉に触った手や調理器具はすぐに洗うよう心掛けてくださいね。
また離乳食や幼児食を作る際は、鶏肉の加熱には十分注意しましょう。
生に近い状態の料理は避け、鍋料理やバーベキューなどを食べる際には大人がきちんと火が通っていることを確認してあげるのが確実です。
もしも小さなお子さんと一緒に鶏肉を使って料理をするのであれば、大人が一緒に手を洗ってあげるのが理想的です。
液体石鹸を使って、指の間まできれいに洗えるよう手助けしてあげてくださいね。
妊娠中は鶏肉の生焼けに要注意!
妊娠中は通常よりも抵抗力が下がるので病気にかかりやすくなるため、気になる症状があったらすぐに病院へ行ってくださいね。
激しい下痢や嘔吐といった症状が長く続いて脱水状態になると、流産や早産の危険がないわけではありません。
電話でもいいので早めに産婦人科に相談し、なるべく水分補給をし、身体を温めるなどして少しでも症状を和らげるようにしましょう。
また食肉には母体に影響を与える寄生虫がいる場合が多く、鶏肉にはトキソプラズマという原虫が潜んでいる可能性があります。
トキソプラズマに妊婦が初めて感染した場合、その胎児にも感染が及ぶことがあります。
ちなみに、さばいたばかりの鶏肉を一度冷凍庫で8時間ほど保存しておき、中心部が-12℃まで冷凍すると感染予防になるんだそうですよ。
一般家庭ではさばいたばかりの鶏肉を食べることはあまりないと思いますし、基本的には生焼けの肉をうっかり食べてしまわないように気をつけておけば十分でしょう。
- 火が通っているか確認して生焼けのようなら再加熱してから食べること
- 加熱具合を確認した際に生焼けだったら、その肉に触った箸や包丁などを洗剤で洗ってから使うこと
この2点が習慣になっていると安心ですね。
次章では、鶏肉が生焼けのまま食卓に上がることがないように、調理のコツについて確認しておきましょう。
生焼け回避!加熱時間の目安と火が通った状態の見分け方
鶏肉の唐揚げを揚げる時、中まで火が通っているかどうかは切ってみないと分かりません。
不安だからといって長めに揚げると、焦げてしまって美味しくないですが、1個ずつ切って確かめるのは見栄えも悪いし、レンジで再加熱するよりも揚げたてを食べた方が美味しいですよね。
そんな時に便利な生焼けを防ぐ加熱時間や焼き方の目安はこちらです。
鶏肉の唐揚げ | 冷蔵から加熱した場合は160℃~180℃の油で3分 冷凍からなら160℃~170℃の油で4分 |
肉団子 (ひき肉25グラム程度) |
沸騰した湯で5分 |
鶏もも肉の焼き鳥 | ガス火で7分以上 |
からあげは冷蔵のお肉に自分で衣をつける場合と、衣つきで冷凍してある肉を揚げるだけの場合では加熱時間が異なります。
冷凍してあると火の通りが遅くなるので注意しましょう。
焼き鳥は炭火での調理の場合、菌が死滅するまで12分以上かかったという実験結果があります。
じっくり火を通す調理方法は中心部まで熱が伝わりにくいので注意しましょう。
鶏肉にしっかり火が通っているか確かめるには、以下の項目をチェックしてください。
見た目(色で判断)
- 薄いピンク ⇒ 生焼け
- 白い・茶色い ⇒ 火が通っている
箸などで触ってみる
- ブヨブヨして柔らかい ⇒ 生焼け
- しっかりした弾力がある ⇒ 火が通っている
竹串を刺してみる
- 肉汁に血が混ざっているような薄いピンク ⇒ 生焼け
- 肉汁が透明 ⇒ 火が通っている
親子丼などは、火の通りを判断しにくいと思いますが、これらのチェック項目を確認して火の通りを確かめてみましょう。
鶏肉は火が通りにくい食材なので、あらかじめフォークなどで穴を開けておくと火が通りやすくなります。
また、外側の皮をパリッとさせたいステーキ(ソテー)は強火で調理する必要があるため、中まで火が通りにくいので、あらかじめ蒸しておくなどの下処理をするとしっかり火が通るのでぜひ参考にしてください。
念入りに調理したつもりでも生焼けだった!という場合は、電子レンジで何分か加熱(1分から様子を見て)しましょう。
ハムの加熱は要注意!
最近ではすっかり定番料理となっている鶏ハムは女性に人気の料理ですが、低温調理のレシピが主流なので、しっかり加熱できているか不安になりますよね。
鶏肉の中心部の温度が65℃以上30秒~1分程度でカンピロバクターの菌は死滅しますが、この中心部というのがポイント。
加熱時間が短いと、分厚い鶏ハムの表面は加熱できていても、熱が伝わりづらい中心部は低温のままです。
なるべく早く中心部まで熱が伝わるように、鶏肉は加熱前に冷蔵庫から出して常温にしておきましょう。
炊飯器を使ったり、鍋にフタをして保温効果を高めたりする方法が安心ですね。
まとめ
生焼けの鶏肉について調査した結果は以下の通りです。
生焼けの鶏肉を食べた場合
- 健康な人:一口くらいなら食中毒になることは稀
- 体調不良者、子ども、高齢者、妊娠中:免疫力が低いため食中毒になりやすい
- 生焼けの鶏肉で起こる食中毒の原因菌はカンピロバクターが多い
- 食べてから2~7日で発症。平均して2~3日で発症例が多い
- 腹痛や下痢、発熱、嘔吐といった症状が出る
食中毒予防のポイント
- 鶏肉はしっかり火を通す
- 調理器具や手をしっかり洗うことで菌が他に移るのを防げる
- 冷凍から調理する時は加熱時間を長めにすると良い
- 弱火でじっくり火を通す時は中心部に熱が伝わりにくいことを考慮する
食中毒は生の肉を扱った後、次の調理の段階で菌が他へ移ったことで感染してしまうことが多いです。
調理の段階で油断していたら、生焼けかどうかに慎重になっていても「時すでに遅し」ということになってしまいますよね。
生肉を調理したら、器具類は洗剤で洗った後、75℃以上のお湯をかけて殺菌しておくと良いでしょう。
また手指は石鹸で30秒以上かけて丁寧に洗うようにしましょう。キッチン用のハンドソープを常備しておくと便利ですよ。
とにかく鶏肉についていた菌を他へ移さないこと、そしてしっかり加熱して菌を死滅させることが大切です。
またバーベキューなど、屋外で調理して食べる時には普段以上に注意してくださいね。
自宅のキッチンと違って器具や洗剤などの環境も整っていませんし、皆で手分けして調理していると調理器具を洗い忘れたりしやすいかと思います。
そして楽しく美味しく食べ、なるべくなら食中毒の不安もなく終わりたいものですが、もし万が一の不安がある場合は速やかに病院へ行ってください。
食中毒を必要以上に怖がらなくて済むよう、普段から手洗いや調理器具の殺菌には気をつけておきましょうね!