【監修者:管理栄養士 杉原彩佳】
【執筆者:野菜ソムリエプロ みつはしさなこ】
鶏ハムの中がピンクの場合、生の場合とそうでない場合があります。
表面を見ただけでは分からないときは、中心の肉汁の色や温度・触感を確認すれば食べられるかが分かりますよ。
鶏ハムの中がピンクなのは、生焼けだけではなく肉のたんぱく質が関係していることもあるからです。
なぜ生焼けでなくてもピンク色なのか、食べても大丈夫なのかを知っておくと、不安なく食べることができますね。
この記事では、鶏ハムがピンク色だった場合に食べられるかの判断方法を解説しています。
また万が一、生の状態で鶏ハムを食べてしまったときに起こりうる食中毒の症状や、応急処置、やってはいけないことを解説しているので、食べる前に必ずチェックしておきましょう。
さらに、鶏ハムを生焼けにしないための調理のコツをまとめているので、参考にしながら美味しい鶏ハムを作って楽しんでくださいね。
目次
ピンクのままの鶏ハムは生焼け?食べられるか判断する方法
加熱した鶏ハムの中身がピンク色だった場合、中身が生焼けの場合とそうでない場合があります。
業務用スーパーで鶏むね肉買ってきて鶏ハムを作ってみた。
切ってみたら少しピンクっぽくてビビってレンチンしたら美味しくなくなってしまった……。後々調べたらピンク色でも火が通ってたら食べられるようだ。ナンテコッタイ/(^o^)\ pic.twitter.com/t74kv9uPEU
— ミルクランチャー (@milk_launcher) July 14, 2018
なぜそのような違いが起こるのかと、鶏ハムがピンク色でも火が通っているか分かる判断方法も紹介するので、あわせて参考にしてください。
まずは生ではないのにピンク色になる理由と、そのような鶏ハムが食べられるのかどうかを解説します。
ミオグロビンが変化したピンク色なら食べても大丈夫
ミオグロビンという成分が原因で鶏ハムがピンク色になることがあり、そのような場合は食べても問題ありません。
ミオグロビンは肉に含まれる色素たんぱく質で、生肉が赤やピンクの色をしているのも、加熱すると褐色に変化するのもこの成分に由来しています。(※1)
そのため加熱した肉の色が変わったかどうかを生焼けかどうかの目安にすることも多いですが、しっかり火を通していてもミオグロビンが赤やピンク色になっていることがあります。
これはミオグロビンと亜硝酸塩と呼ばれる成分の反応による発色現象で、この場合たとえ加熱した肉が赤やピンク色をしていても、中心まで火が通っていれば食べられます。(※2)
- 硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなど「硝酸」と名のつくものの総称
- ハムやソーセージなどの食品添加物でも使われる
亜硝酸塩の一つである「硝酸塩」は畑の土壌に存在し、植物の生長に欠かせない成分として野菜にも含まれています。
特に玉ねぎを由来とした発色現象は多く、ハンバーグ、メンチカツ、ロールキャベツでこのような現象が起きた場合は、玉ねぎが原因であることが多いです。
鶏ハムの色がピンク色でも、ミオグロビンの特性の一つと分かれば不安が少し和らぎますよね。
しかし、ミオグロビンの中にはこうした野菜との反応に関わらず褐色しないものもあるようです。
加熱で変化しないミオグロビンもある
ミオグロビンは本来加熱によって変性し褐色になりますが、耐熱性を持ったミオグロビンの存在が分かっています。
こういった場合は、しっかり加熱をしても肉がピンク色をしていることがあります。
ただ、なぜ変性しないミオグロビンが存在するのかや、どうしてこのような現象が起こるのかについては、残念ながら科学的にまだ証明されていません。(※3)
これは生焼けなのか、ミオグロビン?なのか、、、いつも食べる時は600wで2分チンして食べてるけど、それでもピンクだからいつも気になってる😞 pic.twitter.com/cuWWJ99JeT
— sayaka (@sa_training_10) July 31, 2021
確かに、作ったあともこのようなピンク色では少し不安が残りますよね…
こうしたときは、鶏ハムの中心の肉汁の色などで大丈夫かどうか判断しましょう。
生かどうかの判断には肉汁の色・温度・触感を確認する
ピンク色の鶏ハムが生かどうかや、中まで火が通っているかを知りたいときには、肉汁の色を見るほか、温度を測る・触ってみるなどの方法で確認しましょう。
肉汁の色が透明なら大丈夫
肉は火が通ると肉汁が透明に変化するので、竹串や爪楊枝で刺してみて肉汁が透き通っているかどうかを確認しましょう。(※4)
完全に肉に火が通っていない場合は、肉汁はピンク色をしています。
65℃で三時間の低温調理を経てようやく完成◎
しっとりジューシーにできましたハーブ鶏ハム!
ちょい赤いけど肉汁は赤くないので多分大丈夫!笑
スプラウトを添えてみたよん。 pic.twitter.com/Lmg495uPUP— たけちゃんまん (@takechangmang06) February 2, 2021
ハーブが効いていて美味しそうですね。
中身に赤い点が見えると不安になると思いますが、肉汁が赤くなければ問題なく食べても大丈夫ですよ!
りんたろーさんの鶏ハム作ってみたんだけど…このくらいピンクでも大丈夫?ちょっと食べる勇気ない🤭 pic.twitter.com/vJ8YCAdIXu
— もちゃ (@mocha97736987) January 25, 2021
こちらは、端の部分が火が完全には通っていないように見えますね…
肉汁を確認してみて、ピンク色なら電子レンジなどで少しずつ再加熱しながら様子を見るといいですよ。
中の温度を測ってみる
ローストビーフの場合、焼いている途中に竹串を刺し、竹串が熱くなっているかどうかで中まで火が通っているかを確認する場合があります。(※5)
余熱でじっくり火を通す鶏ハムにはあまり向かないかもしれませんが、不安な場合などは途中で一度竹串を刺してみるのも手かもしれませんね。
触ってぶよぶよと生の感覚がある場合はNG!
調理途中の鶏ハムが生の場合、箸で押すとぶよぶよした生肉の感覚があります。(※6)
途中で確認できればもちろんいいですが、切ってしまった後に中がピンク色だった場合にも、その部分を触ってみるといいでしょう。
明らかにぶよぶよ・ぷよぷよと生の触感がしたら、火が通っていないので食べられないと考えてください。
このように、鶏ハムがピンク色でも大丈夫な場合や、生焼けかどうかの判断方法が分かったでしょうか?
しかし、それでも万が一の食中毒は気になりますよね。
そこで、次章では鶏ハムが生焼けで起こりうる食中毒の症状や、もし食中毒になった場合の対処法を解説しているので、合わせてチェックしておきましょう。
ピンクで生焼けの鶏ハムを食べてしまったら?正しい対処法
鶏ハムが生焼けや生肉の状態が残ったまま食べてしまった場合は、念のため食中毒に気をつけましょう。
食べてから数日以内に腹痛や下痢・発熱症状があれば、早めに受診し医師に相談してください。
ここでは、鶏ハムなど生肉で起こりうる食中毒の種類や症状、家での応急処置を解説するので、参考にしながら体調をみてくださいね。
鶏ハムで起こりうる食中毒とは
生焼けの鶏ハムで食中毒を起こす場合、考えられる食中毒菌はカンピロバクター菌、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157)などがあります。
食中毒菌の 種類 |
発症までの 平均日数 |
主な症状 |
---|---|---|
カンピロバクター菌 | 2〜3日 | 腹痛、下痢、発熱 |
サルモネラ菌 | 12時間 | 腹痛、水様性下痢、発熱 |
腸管出血性大腸菌 (O157) |
3〜5日 | 激しい腹痛、下痢 (血便含む) |
これらは食べてから平均7日で発症するので、それまでに症状が出なければあまり心配いりませんが、もし当てはまる症状が出れば早めに受診が必要です。
また食中毒ではありませんが、たんぱく質豊富な鶏肉を極端に食べ過ぎると体調を悪くすることもありますよ。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
ここからは、もし症状が出てしまった場合、受診するまでに必要な家での応急処置や、やってはいけないことを解説するので、必ず確認しておいてくださいね。
もしも食中毒症状が出たときの応急処置
食中毒症状が出たら医療機関を受診するのが前提ですが、それまでの家にいるあいだは、体に負担がかからないように過ごすことも大事です。
ポイントとして次の3つを覚えておいてください。(※9)
- こまめに水分補給する
(嘔吐や下痢による脱水防止) - 無理のない範囲で食事をする
(消化の良いおかゆやうどんなど) - 寝かせる時は横向きにする
(嘔吐物を喉に詰まらせないため)
また下痢症状が出ると慌てて下痢止め薬を飲んでしまう方もいるかもしれませんが、下痢止めはかえって症状が悪化する場合があるので、やめておきましょう。
もしも食べてからおかしいと思う症状が現れても、慌てずに素早く適切に対処しましょう。
と言っても、毎回生焼けや食中毒を必要以上に心配するのは少し嫌ですよね……
そこで最後は、鶏ハムが生焼けにならないための調理法やコツを紹介します。
ピンク色の鶏ハムでも大丈夫!生焼けにならない調理法のコツ
鶏ハムが生焼けにならないためには、作り方や調理温度、時間に気をつけましょう。
また生焼けだけでなく、そもそも食中毒を起こさないように準備することも大切です。
この章でポイントやNG例を解説しているので、参考にしてくださいね。
鶏ハムを生焼けにしない切り方・加熱方法
鶏ハムを作るときは肉に熱が均一に伝わるように火を通します。
一度に何枚も鶏ハムを作ろうとすると、肉の厚さにムラがあったり、全体がしっかり湯に浸かっていなかったりして熱が均一に伝わらず、ピンク色の生焼け部分が出てしまいます。(※11)
鶏ハム完成。ラップで巻きZiplock保温する場合、炊飯器の中で浮くため熱の通りが均一ではない。レンチンするか。落し蓋しとけば良かったと反省。 pic.twitter.com/Tc8tdl1lxg
— rockenroll_66 (@rockenroll_66) June 13, 2021
鶏ハムを調理するときは、一度に1枚を目安に、湯が全体に浸かるように調理しましょう。
また、次も生焼けや加熱ムラを防ぐ大事なポイントです。
- 冷凍肉は予め解凍しておく
- 鶏むね肉は観音開きにして薄く平らになるようにする
鶏むね肉、観音開きにして酒醤油砂糖塩で漬け込んでおやすみ💤
あした蒸してハムにしてやるぞ🐹 pic.twitter.com/x6ROVDReOM— ましまろ (@mashimaronana) October 27, 2018
鶏むね肉は皮や厚みにムラがあるため、観音開きにしてなるべく平らにすると均一に火が通りますよ。
また生肉を扱うときは、食中毒を起こさないよう次のポイントにも注意しましょう。
- 手をしっかり洗う
- 肉汁は拭き取り、まわりの調理道具や食材に肉汁が付かないようにする
- なるべく野菜用と調理道具を使い分ける
- 使い終わった調理道具は早めに洗浄・消毒する
鶏ハムそのものからの食中毒が防げても、菌が調理過程で手や調理道具を介して食材に付き、感染する可能性があるからです。
続いて鶏ハムが生焼けしないための調理温度と時間についても見ていきましょう。
鶏ハムを生焼けピンクにしない調理温度・時間のめやす
鶏ハムで生焼けや食中毒を防ぐためには、中心部温度が65℃で15分加熱するように調理をしましょう。
本来、食中毒を防ぐためには中心部75℃の状態で1分以上加熱が必要ですが、65℃で15分の加熱でも同様の効果が期待できます。(※13)
また、肉の持つ動物性たんぱく質は62℃から凝固しはじめ、68℃を過ぎると肉の持つ水分が茹で汁として流出しやすくなります。(※14)
鶏ハムのように、肉汁を閉じ込めたまましっとりと仕上げたい場合は、65℃の低温調理でじっくり時間をかけて仕上げましょう。
今日も鶏ハム🐓
今回は温度管理バッチリ
65℃で1時間→急冷して一晩冷蔵
常備しとこ pic.twitter.com/CUTqYsqYXp— kei (@dendekei) May 20, 2020
鶏ハムの中心部の温度が65℃に到達するまでの時間を考えると、加熱し始めてから少なくとも1時間程度は必要です。
鶏肉の厚さや大きさでも変わるので、火の通り加減をみながら調節してみてください。
低温調理は専用の調理道具があれば便利ですが、誰もが持っているとは限らないですし、鍋は火加減や適温に管理するのが難しいですよね。
そこで、中には炊飯器の保温機能を使って鶏ハムを作る方もいるようです。
塩麹と鶏むね肉をジップロックに入れてお湯張った炊飯器で2時間保温後冷蔵で鶏ハムができました✌︎(‘ω’)✌︎
この調理法はローストビーフにも応用でます✌︎(‘ω’)✌︎ pic.twitter.com/qMMTb6MhBI— まっきー (@nikukyu_110) September 25, 2021
メーカーや機種にもよりますが、一般的に炊飯器の保温機能は65℃〜75℃に設定されています。(※15)
メーカー推奨外の使い方にはなりますが、興味がある方は自分の炊飯器で試してみてもよさそうです。
逆に高温のまま放置したり、火を通しすぎたパサパサの鶏ハムは、ほぐせばアレンジレシピになりますよ。
今日のお昼は、作り置きの鶏ハムをほぐして、トマトソースパスタを作った🍝
鶏ハム作っておくと、色々使えて便利😋#今日のお昼ごはん #パスタ pic.twitter.com/9gUMALyhFB— はな (@miyabikimono) October 22, 2019
トマトソースと絡めても美味しそうです!
「鶏ハム作り失敗した…」というときは試してみてくださいね。
最後に、新鮮な状態や適切に保存された鶏肉を使うのも忘れてはならないポイントです。
もしも、生の鶏肉のにおいが気になったり、使っても大丈夫か心配なときは、こちらの記事も参考にしてくださいね。
\こちらの記事も参考にどうぞ/
結論|ピンク色の鶏ハムは生焼けではないか確実に判断しよう
鶏ハムは、表面からは分からなくても、断面がピンク色をしている場合があります。
心配なときは竹串や爪楊枝を使って中の肉汁の色を確かめてみて、液体の色が透明なら問題ありません。
もし肉汁の色がピンク色だったら、電子レンジで少しずつ再加熱しながら様子をみましょう。
鶏ハムを手作りするときは、生焼けや食中毒を起こさないよう下準備をするのが重要です。
じっくり時間をかけて、美味しい鶏ハムを作ってくださいね。
参考資料
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※1 肉の色について|株式会社ハマダフードシステム
※2 加熱食肉製品の発色現象について|公益財団法人福島県学校給食会
※3 #12 加熱食肉の赤色現象はなぜ生じるか?(2016年4月号)|一般社団法人食肉科学技術研究所
※4 役に立つ調理前後の栄養分析データ付き鶏肉料理|公益財団法人日本食肉消費総合センター
※5 赤い肉汁の正体とは|恵比寿の赤身肉店が語る本気の肉料理
※6 料理家の鶏ハムレシピ。しっとり&やわらかにさせるテク|ニチレイフーズ
※7 生焼けの豚肉、鶏肉を食べてしまった場合は、どうしたらよいでしょうか?【食品安全FAQ】|東京都福祉保健局
※8 食中毒と腸管出血性大腸菌O157|一般社団法人安佐医師会
※9 【知らないと怖い基礎知識】食中毒の予防と対処法|株式会社ココカラファインヘルスケア
※10 知って防ごうカンピロバクター食中毒|東京都福祉保健局
※11 BONiQ「低温調理のルール〜6つのポイント〜」|株式会社葉山社中
※12 家庭でできる食中毒予防の6つのポイント|厚生労働省
※13 食肉の加熱条件に関するQ&A|東京都福祉保健局
※14 BONiQ「素材別の温度管理と調理テクニック」|株式会社葉山社中
※15 炊飯器の保温機能の温度は?低温調理はできるの?炊飯器を有効に活用しよう|タイガー魔法瓶株式会社