【監修者:管理栄養士 浜崎保奈美】
パン粉にカビが生えたら、食中毒などの体に悪い影響を及ぼす恐れがあるため、食べたら危険な状態です。
特に体に害をなすカビ毒が発生した場合、たとえハンバーグなどに加えて加熱調理しても、危険性は変わりません。
またパン粉はカビのほかにも、色が変わったり酸っぱい臭いがしたりする場合もあるので、食べられるかどうかの見分け方を知っておきたいですね。
そこでこの記事では、パン粉のカビや傷みが気になるときに知っておくと便利な次の項目について解説します。
パン粉には乾燥パン粉と生パン粉があり、できあがりの食感などのほか日持ち日数や保存の仕方も異なります。
それぞれの適した保存方法や保管場所を覚えておくと、必要な量や用途に合わせ、上手に使い分けられるようになりますよ。
冷蔵庫を活用してパン粉を日持ちさせるコツもご紹介しているので、一人暮らしでなかなか使いきれない方やたまにしか使わない方もぜひ参考にしてくださいね。
管理栄養士・栄養士
目次
パン粉にカビっぽいものが?食べられるか見分け方のポイント
パン粉はパンを粉砕して作られているため、食パンなどと同じようにカビが生えて黒・青・緑色などの色が付くことがあります。
カビが生えたパン粉は人体に有毒なカビ毒を含む可能性があり食べない方が良いため、パン粉がカビっぽいときの食べられるかどうかの見分け方を覚えておきましょう。
まずは、カビが生えているパン粉の状態や見分け方、食べると危険な理由を解説します。
カビたパン粉は食べたら危険!変色する原因も解説
パン粉にカビが生えたら、黒い色や緑色の粒だけでなく、繁殖が進んでいろいろな色の塊を作っている場合もあり、独特なカビ臭さがあります。
パン類に生えやすいアオカビやコウジカビにはカビ毒を作る種類もあり、健康を害する恐れがあるため食べるのは危険です。(※1)
またカビ毒は加熱しても壊れないので、ハンバーグなどに使って焼いてもなくなりません。
これらのカビ菌は空気中にも浮遊しているので、保存中のパン粉が密封できていないと、空気とともに袋内に侵入することもあるのです。
カビには種類が多くさまざまな色がありますが、同じカビでも単色とは限らず、何種類かのカビが同時に生えている場合もあります。
そのため変色の様子で菌種を見分けることは難しいので、パン粉がカビっぽいときはどんな色でも食べないようにしましょう。
ただし、パン粉がオレンジ色に見えるのは元から色が付いたカラーパン粉の場合が多いので、表示などをチェックしてみましょう。
また、乾燥パン粉に比べて生パン粉の方がカビが生えやすいため、パン粉の種類による違いとカビやすさの理由を解説しますね。
水分が多い生パン粉はカビも要注意
パンを小さく粉砕したまま乾燥させない生パン粉は、カビの生育に必要な水分が多いためカビが生えやすい食品です。
一方、乾燥パン粉は生パン粉から水分を飛ばして作られるため水分量が少なく、直射日光や高温多湿を避ければ常温でも保管できます。
種類 | 生パン粉 |
乾燥パン粉 |
---|---|---|
水分含量 | 35~38% | 14%以下 |
質感(揚げる前) | しっとり | カラカラ・さらさら |
食感(揚げたとき) | サクサク感・軽い | 硬い・しっかりした感じ |
向いている料理 | エビフライ・とんかつ | かつ丼・かつカレー 惣菜・弁当用フライ |
生パン粉は乾燥パン粉に比べて賞味期限が短く日持ちしにくいですが、揚げるとサクッと軽い食感になりボリューム感が出せるため業務用によく使われます。
以上のようにカビが生える以外にも、パン粉は腐って食べられなくなる場合があるので注意が必要です。
パン粉が腐るとどうなる?カビ以外に食べたら危険な状態の見分け方
パン粉は腐ると不快な臭いがして汁気や粘り気が出たり、変色して一部にはカビが生えたりと、明らかに食べられない状態になります。
パン粉の多くは焼いた食パンの耳を取り内側部分だけを細かく粉砕するため、焼き色の付いた粒は含まれず、きれいな白い色をしていますよね。
新鮮な生パン粉は柔らかくしっとりした感触で、水分を飛ばした乾燥パン粉はカラカラで硬くサラッとしています。
しかし、鮮度が落ちて腐るとこのような状態ではなくなるため、見分け方を詳しくご説明していきますね。
変色して悪臭・粘り気のある汁が出たら腐った状態
パン粉は鮮度が落ちると細菌が付いて腐り、酸っぱい臭い・不快臭・変色・粘り気のある汁などが発生し、食中毒などの原因になるため食べるのは危険です。(※6)
SNSを覗いてみると、次のような口コミもありました。
@photter_n 黒くなって腐っていたよ・・・パン粉が腐るとは思わなんだ・・・
— はま (@hmnk_hmnk) March 5, 2011
こちらのように、パン粉が腐ると黒く変色することがあるようです。冷蔵庫に入れっぱなしですっかり忘れたころに発見されるケースも…。
開封済みの場合はもちろんですが、未開封のパン粉でも袋に尖ったものが当たり微細な穴が開くなどして、少しずつ空気や湿気が侵入し劣化が進むこともあります。
同時に細菌やカビなども侵入し、温度が30℃前後になるなどの生育に適した条件がそろうと増殖して腐敗が進んでいくのです。
ところが、以上のような腐って食べられない状態ではないのに、パン粉から酸っぱい臭いがする場合もあるので、対処法をご紹介しますね。
pH調整剤が原因で酸っぱい臭いがする場合も
パン粉が開封してすぐなのに酸っぱい臭いがする場合は、ほかに変色などの異変がなければ、pH調整剤の影響なので問題なく食べられます。
パン粉の原材料のひとつで、イーストの発酵を助けるために入れられるpH調整剤は、酢と同じ酢酸ナトリウムが主成分のため、酸っぱい臭いが残ることがあるのです。(※7)
この場合はパン粉を使う前にトレーなどに出し、数分~10分間くらい放置しておけば臭いが取れます。
このようにパン粉に異変があっても問題無い場合もありますが、保存中に虫が発生して食べられなくなることもあるので要注意です。
ダニなどの害虫にも注意
パン粉を含め小麦粉でできた粉類は、保存中に高温多湿な状態になるとダニなどの害虫が付きやすいので夏季の保管は特に注意が必要です。
パン粉に付いて繁殖するコナダニは小さく白っぽい色をしているので、よく見ないと気付かない場合も…。(※8)
近くで保存している小麦粉などに発生した虫が、袋を食い破って侵入してくる場合もあるため、長く保管する場合は容器や保管場所にも要注意です。
虫が発生したパン粉は、栄養成分も減って不衛生なうえにアレルギーの原因になる場合もあるため、残念ですが丸ごと処分することをおすすめします。(※9)
以上のようにカビが生えるなど腐る寸前まで鮮度が落ちないように、パン粉の正しい保存方法を実践しましょう。
パン粉をカビさせない対策は?劣化を防ぐ保存方法
パン粉のカビや腐敗を防ぐには、微生物の生育に必要な「温度・水分(湿度)・酸素」の条件が揃わないよう保管することが大切です。
キッチンのコンロやシンク周りは、特に料理中はかなりの高温多湿になるので、次の3つのポイントに注意しましょう。
- 温度を下げる
⇒冷蔵・冷凍保存する - 水分を入れない・発生させない
⇒密閉する・結露に注意 - 酸素を遮断する
⇒密閉する
カビや劣化から守るには、パン粉の種類だけでなく未開封か開封済みかの状態に合わせて、適した保管場所に保存する必要があります。
そこでパン粉の種類別に、カビや劣化を防ぐ正しい保存方法と目安の保存期間をご紹介します。
乾燥パン粉は夏季の保存方法に要注意!冷凍も便利
乾燥パン粉は直射日光・高温多湿を避け常温で保管できますが、気温20度・湿度70%を超える梅雨時期からは、カビや細菌だけでなく虫も繁殖しやすいため冷蔵庫保存が適しています。(※11)
乾燥パン粉の賞味期限は未開封なら常温保存で180日のものが多いですが、開封後は冷暗所か冷蔵庫に保管して約3ヵ月が食べられる期限の目安です。
乾燥パン粉は冷凍してもサラサラのままですぐ使えて便利なので、使う量や頻度が少ない方にもおすすめですよ。
パン粉は湿気や周りの臭いを吸いやすいので、冷蔵庫で保存するときはジップロックなどの保存袋に入れてしっかり密閉しましょう。
保存中に賞味期限切れにならないように、保存袋に日付を入れておくと便利です。
パン粉を冷蔵・冷凍した場合は、必要な分だけ取り出したらすぐに元の保管場所に戻し、結露を防ぐのが鮮度を保つ重要なポイントです。
また、一度袋から取り出して余ったパン粉は不衛生なので、保存袋には戻さないようにしましょう。
乾燥パン粉よりも賞味期限が短い生パン粉は、常温では保存できないものが多いので、冷蔵庫を活用した正しい保管の仕方をご紹介しますね。
生パン粉は冷蔵庫で保管が基本!冷凍もOK
生パン粉の多くは未開封でも冷蔵保存が必要で約45日と賞味期限が短く、開封後は冷蔵で1週間、冷凍で1ヵ月を目安に使いきるのがおすすめです。
生パン粉の保存は、いつまで日持ちさせたいかによって、冷蔵と冷凍を使い分けると良いですね。
生パン粉は冷凍すると固まりますが、簡単にほぐれて使う分だけ取り出せるので小分けの必要もなく、数分放置すれば自然解凍できて手軽に使えますよ。
こちらの記事では、賞味期限が切れた古いパン粉の対処法や料理用に袋から出して余ったパン粉の使い道をご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
結論|パン粉はカビに注意!正しい保存方法を覚えよう
カビが生えたパン粉は体に悪影響を及ぼす危険があるため、食べられません。
特に水分が多い生パン粉は注意が必要ですが、乾燥パン粉でも高温多湿な環境に置くなど保存状態が良くないと、カビが生えて食べられなくなる場合があります。
またパン粉は鮮度が落ちると腐ったり虫が発生したりすることもあるため、食べられるかどうかの見分け方や正しい保存方法を覚えておくことが大切です。
パン粉の種類や開封の有無などで適した保存方法が違うので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
参考資料
※をクリックすると元の位置へ戻ります。
※1 カビとカビ毒|東京都保健福祉局
※2 カビとカビ毒|株式会社保健科学西日本
※3 【食品安全FAQ】カビの生えた饅頭を食べてしまいました。食中毒が心配です。|東京都保健福祉局
※4 パン粉の種類|全国パン粉工業協同組合連合会
※5 生パン粉と乾燥パン粉|酒井食品加工所
※6 食べ物の腐敗と食中毒|株式会社ウエノフードテクノ
※7 お問い合わせ・Q7.生パン粉を開封したら、酸っぱい臭いがした。原因は?|旭トラストフード株式会
※8 ダニの種類と特徴、対策|三洋株式会社
※9 くしゃみや咳の原因はダニアレルギー? 症状、対策、治療法について学ぶ|大正製薬株式会社
※10 第1回 食品の「傷み」を防ぐための基本|独立行政法人中小企業基盤整備機構・J-NET21
※11 米、玉ねぎ、小麦粉は「常温注意」! 梅雨入り前に食材の保存を見直そう|ニチレイフーズ