【監修者:管理栄養士 浜崎保奈美】
小麦粉を使って子ども用におやきを焼いたのですが、何となく中が生焼けのような気がします。
小麦粉以外の食材は先に火を通してあるので、小麦粉さえ生でも大丈夫なら問題ないと思うのですが…気になります。
食中毒で腹痛を起こすなど、小麦粉を生で食べると危険なことがあるのでしょうか?
不安になって小麦粉について調べましたので、次のようにまとめてご紹介します!
- 小麦粉は生でも大丈夫?生で食べられない理由とは
- もし生焼けで食べたらどのような症状がでるのか
- 生焼けかどうかの見分け方と対処法、生焼けにしないコツをご紹介
お好み焼きやたこ焼きもよく自宅で作るのですが、焼けたかどうかわからないことが多いです。
特にたこ焼きはトロトロが好きなので、絶対生で食べてはいけないのなら困ってしまいます。
少しでも食べてはいけないのでしょうか?
小麦粉を生で食べる危険性を知ったうえで、生焼けかどうかをしっかり見極められるようになれば、何となく不安なこの気持ちは解消されるはずです!
皆さんもしっかり理解して、小麦粉料理を美味しく食べましょう!
管理栄養士・栄養士
目次
小麦粉はなぜ生食できないの?生で食べると危険な理由を解説!
そもそも小麦粉は生で食べられるのでしょうか?
何となく、肉や魚などの生ものよりも安心な気がするのですが、調べてみるとそうとは限らないことがわかりました。
結論を言うと、小麦粉は生で食べる食品ではありません。
小麦粉を使って作ったパスタやうどんなどの食品も、加熱して食べることを前提に作られています。
生で食べるべきではないのに、アメリカでは焼く前の生のクッキー生地を食べたことによって下痢などの健康被害も発生しています。
小麦粉の生食はダメな理由
いったいなぜ小麦粉は生では食べられないのでしょうか。
生で食べられない理由は主に次の2点です。
- 消化しにくい
- 食中毒菌が付着している可能性がある
それぞれに詳しくご説明していきますね。
生の小麦粉は消化しにくい
小麦粉はデンプン質ですね。粘り気を出すグルテンの含有量によって薄力粉・中力粉・強力粉の種類がありますが、すべて小麦デンプンです。
他にはお米や、から揚げにも使う片栗粉も同じくデンプンです。
これら小麦などのデンプンは、生の状態ではβデンプンという水を含みにくく分解しにくい状態です。
その証拠に小麦粉や片栗粉を水に入れても溶けませんよね。
分解しにくいとは消化しにくいことであり、生のままでたくさん食べると消化不良を起こして腹痛や下痢、吐き気や嘔吐などの症状が出る場合があるのです。
ただし、小麦などのデンプンは、加熱すると分子の結合が切れて水が入るスペースができるので、溶けて分解しやすくなります。
加熱によってデンプンが消化しやすい状態に変わることをα化や糊化(こか)と言い、糊化したデンプンは柔らかく、噛んで食べられますし、甘みも感じられて美味しくなります。
何の調味料も加えていなくても、炊いたご飯は噛めば噛むほど甘みが出て美味しいですものね♪
食中毒菌が付着している可能性がある
小麦粉は読んで字のごとく、小麦を細かくすりつぶした粉です。
製造段階で不純物を取り除くなどきれいにされていますが、殺菌処理は施されていません。
その為、土壌に存在する微生物や細菌などの食中毒菌が付着している可能性があり、生のままで食べると食中毒の症状を起こす可能性があるので注意が必要です。
食あたりや食中毒を起こさない為にどうすれば良いのか
小麦粉を生で食べると、消化不良による食あたりや細菌による食中毒の可能性があることがわかりましたね。
食あたりや食中毒は、しっかり加熱することで防げます!
βデンプンによる消化不良はしっかり糊化させることで心配なくなりますし、加熱によって多くの食中毒菌は死滅するからです。
小麦粉が糊化する温度は58~65℃とされていますので、中までしっかり熱くなるまで火を加えましょう。
58~65℃で糊化するのなら、中がトロトロのたこ焼きでも「アチチッ!!」と火傷するほど熱くなっていれば大丈夫そうに感じますが、中が生焼けのお好み焼きは危険かもしれませんね。
生焼けかどうかの詳しい見分け方は後ほど「小麦粉の生焼けの見分け方は?確認方法や判断基準がコレ!」の章で解説しますね♪
でも、生焼けの小麦粉料理や何かにまぶした程度の小麦粉や片栗粉を少量食べてしまったからと言って、絶対にお腹を壊すわけではありません。
小麦粉の状態や個人の胃腸の強さや体調によって異なりますので、慌てずに様子をみてくださいね。
もし生の小麦粉で食中毒を起こしたらどのような症状が出るのか気になるところですよね。
次の章で食中毒の事例をご紹介しますので、一度読んでみてくださいね!
小麦粉の生食による食中毒の事例!合併症を起こすと死ぬことも
生焼けならまだしも、生の小麦粉を食べることなんてあるの?と思われませんか?
先の章の冒頭でも少し書きましたが、アメリカでは焼く前の生のクッキー生地やホットケーキ生地を食べる習慣があります。
あまりなじみがないかもしれませんが、焼く前のクッキー生地やケーキの生地は、結構美味しいんですよ!もちろん粉っぽいですが…。
実は私もつまみ食いしたことがあります。
アメリカではクッキーを家で手作りする習慣があり、つまみ食いも日常的に行われています。
その為、小麦粉に付着していた微生物や細菌が原因で食中毒を起こした実例があるわけですね。
付着していた菌によってどのような症状が出るのかは変わりますが、動物のフンなどに多く存在する大腸菌や、自然界のどこにでもいるリステリア菌には注意が必要です。
大腸菌による食中毒の実例
アメリカでは生の小麦を食べ、腸管出血性大腸菌(O121)による食中毒が発生しました。
症状は激しい腹痛、水下痢、血便、胃痛などですが、乳幼児や高齢者が感染すると劇症化して溶結性尿毒症症候群や脳症などを引き起こし、最悪の場合は死亡する可能性もあります。
まさか小麦を食べて死ぬようなことがあるとは思っていないので、驚いてしまいますね。
また妊娠中にはリステリア菌に特に注意しましょう。
妊娠中のリステリア菌のリスク
リステリア菌は自然界のどこにでも存在し、加熱により死滅しますが、冷蔵庫の中や塩漬けの食品の中でも菌の数が増えるのが特徴です。
健康な人が感染しても症状がほとんど出ず感染に気付かないこともありますが、妊娠中に感染するとお腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。
感染することは多くありませんが、妊婦さんが感染すると、流産や死産の確立が20%にもなるとの報告もあるので注意が必要です。
殺菌処理されていない小麦粉には、大腸菌やリステリア菌など、自然界に存在する菌が付着しているかもしれませんので、油断せずにしっかり加熱しなければなりませんね。
小麦粉に付着した菌以外にも注意しなければならないことがある!
小麦粉料理の生焼けなどで起こる体調不良には、小麦粉に付着した食中毒菌以外の原因も考えられます。
考えられる原因と症状や対処法をご説明しますね。
サルモネラ菌による食中毒
小麦粉料理を作る時、つなぎで卵を混ぜることがとても多いですよね。
卵にはサルモネラ菌が付着していることがあり、ホットケーキなど、卵が入った生地をつまみ食いして食中毒を引き起こす可能性もあると考えられています。
サルモネラ菌に感染すると、6〜48時間ほどで下痢や激しい腹痛などの症状が現れます。
赤ちゃんや幼児が感染すると意識障害やけいれん、高齢者では脱水症を起こすなど重症化することがあるので特に注意が必要です。
怖いサルモネラ菌ですが、75℃で1分以上加熱すると死滅しますので、しっかり加熱すれば問題ありません。
子供に与える食事や離乳食でおやきなどを作る時には、特に気を付けて焼くようにしましょうね。
小麦粉にダニなどの虫がわいている
小麦粉にダニなどの虫が発生することがあります。
ダニアレルギーの人がダニがいるのに気付かず食べてしまうと、アレルギー症状を発症します。
症状が重い場合はアナフィラキシーショックを起こして蕁麻疹や呼吸困難に陥り、命にかかわることもあります。
薄力粉や中力粉よりも、小麦粉に動物性たんぱくの出汁が混ざっているお好み焼き粉やたこ焼き粉の方がダニが発生する可能性が高く、保存期間が長くなると恐ろしい数のダニが粉の中にいることも…
開封後の粉類を保存する時は、しっかり密閉して冷蔵庫保存するのがコツですよ!
小麦粉や小麦粉料理による食中毒が恐ろしいことがわかりましたね。
生のままで食べないようにすることはもちろん、生焼けで食べてしまわないように気を付けたいところですが、見分け方が難しいところです。
続いては小麦粉料理が生焼けかどうかの見分け方を解説しますので、しっかり確認なさってください!
小麦粉の生焼けの見分け方は?確認方法や判断基準がコレ!
小麦粉を使った料理やお菓子が生焼けかどうかを見分けるには、 見た目や味を確認して、自分で判断するしかありません。
料理やお菓子別に生焼けの目安をまとめますので参考になさってください。
料理・お菓子名 | 状態 |
クッキー | ・時間をおいても固くならずにしっとりしている ・表と裏で色が違う ・中を割ると半透明のような色の違う部分がある |
ホットケーキなど | ・生地のねっとりした感じが残っている ・粉っぽさや卵臭さが強く感じられる(生の生地の味) |
お好み焼き | ・串をさして生地が付く ・切った断面が熱くない |
たこ焼き | ・粉っぽさを感じる ・熱くない |
このほか、うどんなども茹で時間が足りずに半生になることがあります。
固くて粉っぽさを感じますので、「これがコシだ!」と思わずにもう少し茹でましょう。
しっとりしたクッキーではなく、固いサクサク食感のレシピで作ったのに、しっとりしていたり中を割った時に色が違うようであれば、それは生焼けの可能性があります。
ただ、クッキーは焼き立ての時は柔らかく、粗熱を取ってサクサクになる性質がありますので、焼けてから少し時間をおいて確認してくださいね。
ホットケーキやお好み焼きのようなもちもち食感のものは、ねっとりした生の食感や、串をさして生地が付いてくるようであれば生焼けなので、もう少し焼いてください。
味も目安になるのですが、生の生地の味がわからなければ判断のしようもありません。
味に不安を感じる時には、ボウルに残った生地を少し舐めて比べてみてください。
食べすぎてお腹を壊してはいけませんので、ほんの少しにしておいてくださいね。
ちなみにたこ焼きの場合、トロトロで美味しいレシピで作ると、生地中の水分量が非常に多いのでいつまで加熱しても固まりません。
中がトロッのレシピで作った場合は、中がしっかり熱いかどうかと、粉っぽさを感じないかどうかを確認してください。
また、中がトロッと言えばチョコレートケーキのフォンダンショコラなどもありますね。
フォンダンショコラはバレンタインや贈り物として手作りされることも多いお菓子ですが、生地を焼いて中だけトロトロに残す作り方では、小麦粉や卵の加熱が十分でなく、生焼けの状態と考えたほうが賢明です。
この、簡単タイプのフォンダンショコラは、小麦粉に火がちゃんと入らない可能性大なんで、人にあげたりしちゃダメよん。
私は自己責任でお腹壊した。— 腐麻樹 (@fumaki2017) March 28, 2019
どうやらこの方はお腹を壊されたそうです…
プレゼントとして手作りしたいのであれば、小麦粉を使わないレシピか、ケーキ生地と中のトロトロのガナッシュ部分を別に作るレシピなら安心です。
フォンダンショコラの作り方
【ガナッシュ材料】
・ミルクチョコレート:50g
・生クリーム:40ml
【ケーキ生地材料】
・ミルクチョコレート:50g
・無塩バター:40g
・卵(Mサイズ):1個
・グラニュー糖:30g
・薄力粉:20g
・ココアパウダー:大さじ2
- 鍋に生クリームを入れて沸騰直前まで温め火を止め、ガナッシュ用チョコレートを入れて混ぜ溶かす
- バットに入れて冷蔵庫で2時間ほど冷やす(ガナッシュの完成)
- ケーキ用チョコレートと無塩バターをボウルに入れ、湯煎で溶かす
- (3)とは別のボウルに卵と砂糖を入れ、泡だて器でよく混ぜる
- (4)に(3)を3~4回に分けて加え、よく混ぜる
- (5)に薄力粉とココアパウダーを加え、切るようにさっくりと混ぜる
- 型の半分まで(6)を入れ、(2)のガナッシュを真ん中に入れ、その上に(6)をかぶせる
- 200℃に予熱したオーブンで10~15分程焼く
意外と簡単に作れますので、「焼くだけ簡単」などのレシピタイトルに惑わされずに、安全なお菓子作りをしてくださいね♪
小麦粉料理が生焼けかどうかの見分け方はわかりましたが、いざ食べようとした時に生焼けだったらどうすれば良いのでしょうか?
最後に、生焼けになった時の対処法をご紹介します!
これで、本当に安心して小麦粉料理を食べられるようになるはずですね。
小麦粉が生焼けになったときの対処法!半生にならないコツとは?
料理やお菓子を作っている途中に「焼けたかな?」と確認し、「まだ生焼けだな」となるのであればそのままもう少し加熱すれば良いですよね。
でも、「焼けた!完成!」と思って取りだしたものをいざ食べようとしたら生焼けだった…と気付くこともあります。
その場合はどうすれば良いのでしょうか?
ホットケーキやお好み焼きが生焼けの場合は、電子レンジで加熱するか、フライパンで再加熱しましょう。
また、ちくわを天ぷらにすると穴に詰まった衣が生焼けになることも多いのですが、生っぽかったらレンジで少し加熱すると良いですね!
レンジでチンする場合は、お皿に入れてふんわりとラップをかけ、20~30秒ずつ加熱して様子を見てください。
あまり長い時間加熱すると、今度は水分が抜けてパサパサ・酷ければカチカチになってしまいますので気を付けましょう。
フライパンで再加熱する場合にも、蓋をして弱火でじっくり加熱してください。
火が強いと、中に熱が届く前に焦げてしまいます。
そもそも生焼けを防ぐためには?
生焼けになった場合の対処法はわかりましたが、そもそも生焼けにならなければ良いわけですよね!
生焼けを防ぐためには、もちろん良く焼けばよいのですが、小麦粉を使った料理やお菓子の場合、それ以外にも少しコツがあります。
小麦粉は混ぜれば混ぜるほど、こねればこねるほど生地が重く固くなります。
そして、重く固くなると、その分だけ火が通りにくくなるのです。
先ほどご紹介したフォンダンショコラの作り方でも、粉を加えた後は「切るようにさっくりと混ぜる」とありましたが、混ぜすぎないことも生焼けを防ぐコツになります。
生地を混ぜる時はだまにならない程度にとどめてくださいね。
小麦粉は生なら太らない?
ダイエット中、お腹は膨らませたいけれどカロリーはなるべく取りたくない…そんな風に考える方は多いでしょう。
でも、「生の小麦粉は消化しにくいのなら、生のままで食べたら良太らないんじゃない!?」なんて考えるのは危険です。
生のままでも含まれるカロリーに変わりはありませんし、それ以上に消化不良や食中毒のリスクの方がよっぽど危険です。
水で溶かして飲む…なんて危険な行為もやめてくださいね。
お腹を壊して不健康にやつれることになってしまいますよ。
まとめ
小麦粉は生食できるのかどうかや、生食の危険性、生焼けの見分け方や対処法についてのポイントをまとめます。
- 小麦粉は生食できない
- 生では消化しにくく、大腸菌やリステリア菌などが付着しているリスクがある
- デンプンを糊化させて消化しやすく、食中毒菌を死滅させるためにはしっかり加熱する
- 小麦粉料理による体調不良は、卵のサルモネラ菌やダニのアレルギー症状の可能性もある
- 生焼けの場合は粉っぽく、ねっとりして柔らかい
- たこ焼きの中身はトロっとしているので、粉っぽさや温度を参考にする
- お好み焼きやホットケーキが生焼けの場合はレンジやフライパンで再加熱する
- 生地を混ぜすぎると固くなり生焼けになりやすい
小麦粉料理で消化不良や食中毒を起こすとは思っていなかったので、とても驚いてしまいました。
「多少粉っぽくても大丈夫!」なんて甘く見ていたので、これからしっかり火を通したいと思います!
大好きなトロトロたこ焼きも、しっかり熱くなっているかどうかを確認しなければなりませんね。
子供と一緒にお菓子作りをすることもあって、つまみ食いも楽しみの一つではありますが、生の生地の味見は子供にはさせないようにしようと思います。
せっかくの美味しい料理やお菓子でつらい思いをしないように、大人が注意してあげましょう!