【監修者:管理栄養士 浜崎保奈美】
先日、特売の鶏肉を買ったのですが、家に帰って早速パックから出すと、なんだか変な臭いが。
常温で持ち歩いたのはほんの10分程なので、腐るわけはないと思うのですが…。
また臭うだけでなく、ドリップがたくさん出ていて少しとろみがありました。実は以前にも、同じような臭いを体験したことがあったんですよね。
「冷凍した鶏肉を冷凍庫から出して、一晩常温解凍したとき」と「常温に戻すために冷蔵庫から出し、そのまま忘れて3時間ほど放置してしまったとき」でした。
どちらも夏で室温が高かったので、もったいないけど泣く泣く捨てました。
もしかして、またやってしまった!?そんなわけで、今回は鶏肉を常温に置くとどうなるのかが詳しく知りたくて、徹底調査しました!
- 鶏肉を何時間も常温放置すると危険!その理由とは?
- 鶏肉が腐るとどうなるの?
- 生の鶏肉、調理後の鶏肉の日持ちを紹介
- 鶏肉の正しい保存方法
鶏肉と言えば、”生で食べてはいけない”、”腐りやすい”などのイメージがありますが、その理由を詳しく調べてみたことはありませんでした。
今回は、鶏肉についてわからないことを丸ごと調べてみたので、ぜひ最後までチェックしてみてください!
管理栄養士・栄養士
目次
鶏肉は何時間も常温放置できない!その理由とは?
今回は「鶏肉を常温に放置するとどうなるのか?」をテーマに進めていきますが、常温といってもどの程度のことを指すのかあやふやですよね。
そこでまずは、一般的に「常温とはどのような場所のことをいうのか」から確認していきましょう。
「常温」とはどんな状態?
普通、「常温」と言えばどんな場所でしょうか?私にとっては、冷蔵庫に入れない限りは全て「常温」の場所です。
でも、前から思っていたのですが、同じ家の中でも部屋にクーラーがあるかどうかで、全然温度が違います。
クーラーがなくて直射日光が当たる部屋でも、「常温」といえるのでしょうか?
そこで、食品衛生法・日本薬局方・日本工業規格などで、「常温」がどのように定義されているのかを調べてみました。
それぞれに細かい違いはあるのですが、まとめると下記のような場所が「常温」とされています。
- 15℃~25℃
- 温度が一定
- 直射日光が当たらない
- 外気温を超えない室温 など
同じ「常温」でも、15℃~25℃とかなり温度差があるんですね。このほかにも、コープのホームページには「意図的に熱したり冷やしたりしない自然な温度」と書かれていました。
このように何となくあいまいな感じですが、今回は誰でも鶏肉を安全に食べられる情報をお届けしたいので、冷蔵庫に入れない場所を全て「常温」と考えてお話ししていきます!
鶏肉を常温にしばらく置くとどうなるか
上記を踏まえたうえで、「鶏肉を常温放置したらどうなるのか」がわかる公的な文章はないか調べてみましたが、残念ながら確実な情報はなく、答えは見つかりませんでした。
そこで、実体験を知りたくて、口コミなどで「鶏肉を常温に置いてしまった」という声を集めてみました。
「常温に置いても食べられた」という口コミ
- 1時間台所に放置したくらいなら、加熱すれば大丈夫
- 冬で寒い場所なら3時間~4時間放置しても大丈夫
- 室温が低ければ5時間くらい放置していても、加熱すれば大丈夫
- 冬に6時間常温放置したひき肉を、よく加熱して食べた
- 冬に半日(12時間)くらい放置した鶏肉でも、ぬめりなどがなければ食べられる
「常温に置いて食べられなくなった」という口コミ
- 夏場は鶏肉の日持ちが短くなる。冬でも20℃を切らないような温かいキッチンでは、何分か常温に放置したら危険な場合がある
- 2時間以上常温に放置したら捨てたほうがいい
- 8時間~9時間常温に放置すると、色などが変わっていなくても味が落ちるから食べない
- 10時間放置したら、灰色に変色したので捨てた
- 24時間常温に置いたら危険。臭いなどが変わっていなくても捨てる
口コミなどを見ると、季節や部屋の温度によって、食べても大丈夫かどうかを判断している方が多くいらっしゃいました。
しかし、実体験から”何時間くらいから危険な状態になるのか”を知りたかったのですが、口コミなどからも明確な結論は出ませんでした。
鶏肉を常温に置けない理由は菌と寄生虫
確実な情報がないので、鶏肉を常温に置ける時間について、はっきりとは言えません。
ですが、厚生労働省などから出されている情報を見ると、鶏肉を常温に置かないほうがいい理由がわかってきました。
実は、鶏肉の鮮度には関係なく、以下のような食中毒菌や寄生虫が付着している可能性があるのです。
食中毒菌 | 寄生虫 |
・カンピロバクター ・サルモネラ菌 ・リステリア・モノサイドゲネス など |
・マンソン裂頭条虫 ・ブタ回虫 など |
いずれも、一般的には温かい場所であるほど活動しやすい環境になるので、常温放置は絶対にやめましょう!
菌や寄生虫それぞれで、環境による活動状況が違うのですが、一般的に食中毒を予防するためには、下記のような点に注意が必要です。
- 鶏肉の温度を上げないために、必ず冷やして保存
- 食べるときには中心まで確実に加熱する(半生で食べるのも危険)
- 生の鶏肉、生の鶏肉の汁に触れた手指・調理器具などはすぐに洗う
さらにスーパーなどで買ってから、持ち歩く際にも冷やせると安心です。くれぐれも、暑い車の中に放置したり、炎天下の中で何時間も持ち歩いたりなどはしないようにご注意ください。
また、以下のような行為もNGです。
- 調理前に鶏肉を常温に戻すために、冷蔵庫から出して何時間も置くのはダメ
- 冷凍した鶏肉を、一晩常温に置いて解凍するのはダメ
鶏肉を常温に戻すことで、焼きむらがなくなりおいしく調理できますよね。ただしその場合は、調理の30分程前に冷蔵庫から出すとよいでしょう。
次に、鶏肉が腐るとどうなるのかをご紹介します。冒頭でもお話ししたように、”安売りの鶏肉を買ったらすぐに異変を感じる”なんてこともあると思います。
食べても良いかどうかを判断できるように、しっかりチェックしておきましょう!
鶏肉は腐るとどうなるの?傷んだ時の見分け方や目安がコレ!
鶏肉は、他のお肉よりも断然単価が安くて、主婦の強い味方ですよね。そのため、つい大きなパックで買って、使いきれずに傷んでしまうなんていう経験がある方は多いと思います。
そこで、腐ったときの見分け方を知って、安全に食べられるかどうかを判断できるようになりましょう!
こんな鶏肉は食べないで!
鶏肉が腐りかけているかどうかは、見た目と臭いを目安にして簡単にわかります。
見た目、触った感じ
- 灰色っぽく変色
- 触ると粘りがある
- 表面が白くなる
- ドリップにとろみがある
- カビ
臭い
- 気持ち悪い臭い
どんな臭いかを表現するのは難しいのですが、卵が腐ったような臭いや、硫黄のような臭いがします。
腐った鶏肉を調理後の味
- 酸っぱい
- 気持ち悪い味
鶏肉は常温に置くだけでなく、冷蔵庫で保存していてもいつかは必ず腐ります。腐ってしまったら、加熱しても気持ち悪い臭いと味は消えません。
また、無理をして腐った鶏肉を食べた場合は、食中毒のような症状が出る場合もあるため、怪しいと感じたら食べないことをおすすめします。
新鮮な鶏肉の見分け方
安全で美味しい鶏肉を食べるために、売っている鶏肉が新鮮かどうかを、自分で目利きできるようになりたいですよね!
そこで、新鮮な鶏肉の見分け方もご紹介します。
肉の色
- 透明感がある
- ピンク色
肉の状態
- ハリがある(水分が流れ出ていない)
- ふっくらしている
- 鶏皮の毛穴が盛り上がっている
- 鶏皮に細かいシワがある
ここまでで、「食べられない鶏肉」と「新鮮な鶏肉の状態」がわかったところで、鶏肉の日持ち期間もチェックしてみましょう。
鶏肉は何日くらいで食べ切れば良いのかがわかれば、献立作りの参考にもなりますね!
鶏肉の日持ち期間はどれくらい?調理前や調理後など調査!
鶏肉の日持ち期間といっても、生の鶏肉と鶏肉料理とでも違ってきます。そこで、それぞれどのくらい日持ちするのか、一覧にまとめてみました。
以下の内容は、日本食肉消費総合センターが公表している情報を元にまとめましたが、日持ちがとても短くて驚きました!
ちなみに鶏肉料理の日持ちは、口コミや私の経験を交えてご紹介します。
鶏肉の状態 | 日持ち | |
調理前 | ミンチ(ひき肉の粗いものから細かいものまで) | 当日中 |
切り身(ささみ) | 1日 | |
1枚肉(もも肉や胸肉) | 3日 | |
加工 | 漬け込み | 3日~1週間(塩分濃度による) |
調理後 | からあげ | 2日 |
鍋の具 | 2~3日 | |
煮物(カレー・筑前煮など) |
ちなみに、上記は全て冷蔵庫での日持ちです。先ほどもお話ししたとおり、生の鶏肉は常温保存ができません。
生だけではなく、調理後も菌が増殖すると食中毒の危険性があるので、必ず冷やして保存なさってくださいね。
消費期限が過ぎても食べられる?
スーパーで売っている鶏肉のパックには、消費期限が書かれているのが一般的です。
ただし、冷凍や真空パック包装で保存期間が長い商品であれば、賞味期限が書かれている商品もあるかもしれませんね。
賞味期限の場合は、期限が切れても食べている人は多いかと思いますが、消費期限切れの場合も食べてしまっている人はいませんか?実は、私がそうです。
そこで、案外適当に解釈されていそうな「消費期限」と「賞味期限」の正しい意味を、ここで確認しましょう。
- 消費期限:安全に食べられる期限
- 賞味期限:美味しく食べられる期限
*どちらも未開封で保存方法を守った場合の期限です。
上記の内容から、消費期限が記載されている場合は、期限が切れたら食べないほうがよいです。
また、賞味期限に関しては「保存方法を守った場合」などの条件つきなので、ご家庭の保存環境によっては”必ず安全”というわけではないですよね。
保存の仕方によっては、鶏肉の状態が変わることもあるため、一番安全なのは、新鮮な鶏肉を買ってきたらすぐに食べることです。
さらに、先ほどご紹介した「鶏肉に元々ついている菌や寄生虫」の心配もあるので、消費期限切れかどうかにかかわらず、しっかり加熱することはお忘れなく!
冷凍庫での日持ちは?
生でも調理後でも、冷凍した場合の日持ちは2週間~1ヶ月が目安です。1ヶ月以上保存できる場合もありますが、冷凍やけや臭い移りなどで食感や風味が落ちてしまうのでおすすめできません。
冷凍庫に入れたからといって安心しないで、日付を管理して食べきるようにおすすめします。
ちなみに、冷凍した鶏肉を解凍後の日持ちは1~2日です。食中毒菌や寄生虫は、冷凍庫の温度で一旦活動が停止しますが、死滅するわけではありません。解凍するとまた活動を始めますので、低温で解凍して早く食べ切るようにおすすめします。
*冷凍保存の方法と解凍方法は、後ほどご紹介します
鶏肉料理が原因の食中毒にも要注意!
生だと食中毒菌や寄生虫の心配が絶えない鶏肉ですが、しっかり加熱すればとりあえずは安心ですよね。実際に、寄生虫は加熱で死滅します。
でも、焼いた後や茹でた後などでも常温放置すると、ウエルシュ菌などの食中毒菌が増殖する可能性があるのでご注意ください。
ウエルシュ菌とは?
ウエルシュ菌は、肉や水の中など自然界のどこにでもいる菌です。酸素がないところで増殖し、熱に強いのが特徴で、カレーやシチュー、豚汁などは、ウエルシュ菌が発生しやすい料理として有名です。
他にも、食中毒の原因となる様々な菌があるので、加熱しても油断せずに、しっかり予防していきましょう!
鶏肉を調理後の食中毒の予防法は、以下の通りです。
- 料理が完成したらなるべく早く粗熱を取る
- 清潔な容器に入れて、冷蔵庫で保存する
- 清潔な箸やスプーンなどで取り分ける
- 容器のフタについた水滴を拭き取る
- 余った分はすぐに冷蔵庫に戻す
生の鶏肉だけでなく、調理した後も上記の点に注意して、安全に鶏肉料理をいただくようにしたいですね。
最後に、鶏肉の保存方法をご紹介するので、より安心して食べられるように、ご一緒に確認してみましょう!
鶏肉の正しい保存方法とは?日持ちさせるコツも紹介!
何度もしつこいようですが、鶏肉は常温保存できない食材です。鶏肉の美味しさを存分に味わうためには、保存するときの処理がポイントになります。
基本の保存方法
生の鶏肉を買ってきてすぐに保存するときは、ドリップ(肉汁や水分)が出ていなければ、パックのまま冷蔵庫に入れてOKです。
ドリップが出ている場合は、下記のように保存なさってください。
- 生の鶏肉をパックから出して、ドリップを拭く
- ラップに包む(なるべく空気が入らないように)
- ジップつきの保存袋に入れる
- 空気を抜いて密閉し、冷蔵庫に入れる
【冷凍保存する場合】
冷凍する場合は、ドリップが出ていなくてもパックから取り出します。一度解凍した鶏肉は味が確実に落ちるので、再冷凍できません。
そのため、一回に料理をする分ずつ切り分けるなどして、冷蔵庫の場合と同じように保存なさってください。
肉から出るドリップは、鶏肉の水分と一緒に臭みも含んでいます。ですから、ドリップがひどい場合は、軽く流水で洗い流してから料理するのがおすすめです。
冷凍した鶏肉の解凍方法
冷凍した鶏肉を解凍するときは、調理する前の日に冷蔵庫に移動して、低温で自然解凍するのがベストです。くれぐれも、常温放置しないようにご注意くださいね。
急いでいるときはレンジを使いたくなりますが、レンジの機能によっては”均等に解凍できない”・”解凍しすぎる”なんていう場合もあります。
レンジを使う場合は、短い時間ずつ様子を見ながら解凍し、すぐに加熱調理することをおすすめします。
まとめ
鶏肉を常温に置けるかどうかについて、詳しく調べてきましたが、最後にポイントをまとめてみます!
- 鶏肉には鮮度に関係なく食中毒菌や寄生虫がついているので、常温放置は絶対にNG!
- 鶏肉が腐ると見た目と臭いで判断しやすい
- 消費期限にかかわわらず自分の五感で判断する必要がある
- 腐った鶏肉は加熱しても食べられるようにはならない
- 鶏肉は日持ちしない食材で、ミンチなら当日中、一枚肉でも3日ほどで食べきる
- 鶏肉を加熱後も食中毒の心配があるため、加熱しても冷やして保存するのが基本
- 鶏肉はドリップを拭き取って保存するのが美味しく食べるポイント
冒頭でお話しした、買ってすぐに変な臭いがした鶏肉ですが…鮮度が落ちていたのかもしれません。
今回徹底調査したことで、新鮮な鶏肉の見極め方などもわかったので、これからは「安売り」という文字に負けず、良いものを選んでいきます!
また、鶏肉の鮮度に関係なく食中毒菌や寄生虫がついているという事実は衝撃でしたが、食中毒菌はつけない・増やさない・死滅させることが大切です。そのためにも、常温で長い時間放置することは避けるようにしたいですね。
予防法に気をつけていれば、自分も家族も辛い症状を経験しなくて済むので、いつも気を抜かずに料理をしていこうと思います。
家計を助けてくれるうえに美味しい鶏肉を、安全に美味しくいただけるようにしていきましょう!