【監修者:管理栄養士 坂本圭子】
桃には脳に必要な糖分やビタミンなど体に良い栄養素が多く含まれていますが、食べ過ぎたり食べ方を誤ると下痢を起こしたり太ることがあります。
食べる時間や量、加工によって太りやすさが変わることや、含有している果糖やソルビトールが下痢の原因になる可能性もあります。
桃にはお腹の調子を整える不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランス良く含まれて体にうれしい果物なので、食べ過ぎないように適量を守ることが大切ですね。
そこでこの記事では、桃について次のような項目で詳しく調べました!
体へのメリットと、食べ過ぎたらどうなるのかの両方面から解説しますね。
「栄養価が高いならたくさん食べたい」「健康には注意したい」「どんな食べ方が良いのかわからない」など、さまざまな悩みが解決するはずです。
旬の時期は特に美味しい桃を、安心して楽しみましょう♪
まずは桃に含まれる栄養素と体への影響について解説します。
管理栄養士・栄養士
目次
桃の栄養とメリット・食べ過ぎに注意したい成分
甘くて美味しい桃には、多くの栄養成分が含まれています。
主な栄養素を表にして紹介しますね!
栄養素名 | 桃100gあたりの含有量 (※1) |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カロリー | 38kcal | |||||||
炭水化物 (※2) |
利用可能炭水化物 | 糖アルコール | ||||||
ブドウ糖 0.6g |
果糖 0.7g |
ショ糖 6.8g |
ソルビトール 0.3g |
|||||
ビタミンC | 8mg | |||||||
カリウム | 180mg | |||||||
食物繊維 | 水溶性 0.6g |
不溶性 0.7g |
||||||
総量 1.3g |
さまざまな栄養素が含まれていることがわかりますね!
それではどの成分でどのような体への効果が期待できるのかを、詳しく解説します。
必要不可欠な栄養価・糖が脳や体を動かす
桃に含まれている、糖質の一部であるブドウ糖やショ糖などの糖類は、体や脳を動かす役割を果たします。
特に脳のエネルギー源になるのはブドウ糖のみなので、不足すると脳の働きが鈍り、体が疲労を感じる・集中力が低下するなどの悪影響が現れます。(※3)
基本的には食事で摂取したでんぷんや肝臓に蓄積したグリコーゲンが、体内でブドウ糖に変換されますが、直接摂取できれば効果はてきめんです!
積極的に摂りたい栄養成分ですが、摂り過ぎると肥満の原因になるので、注意も必要です。
糖類は脳に働きかけますが、ビタミンCは体や肌のトラブルを解消してくれます。
ビタミンCの抗酸化作用で美容効果が期待できる
ビタミンCは次のような働きにより、美容や健康維持への効果が期待できます。
働き | 期待できる効能 |
---|---|
コラーゲンの生成を助ける | 血管、骨、皮膚、臓器などを 正常に保つ |
メラニンの生成を抑える | ・日焼けの防止 ・シミやそばかすを予防する |
抗酸化作用 | ・免疫力を高める ・動脈硬化などの予防 |
肌の調子を整えてくれるうえ、抗酸化作用によって免疫力がアップするので、風邪予防など身近な健康維持にも役立ちますね。
ただしビタミンCには摂取目安量が設定されており、大幅にオーバーすると体調不良を起こす可能性もあるので、気を付けましょう。
また、女性に特に多い悩みであるむくみにも、桃が力を発揮してくれそうです。
カリウムによりむくみが解消
桃に含まれているカリウムは、むくみを解消させる働きがあります。
カリウムは細胞の浸透圧を調整して体内の水分量を調整し、ナトリウムの尿への排出を促して塩分量も調整するのです。(※7)
ナトリウムも水分を吸収しているので、排出することで水分が溜まるのを防げ、むくみの予防や解消につながります。
ただし腎機能が低下している場合は、カリウムの過剰摂取で命にかかわる恐れもあるので、食べ過ぎはNGです!
さらに桃には食物繊維も含まれており、腸の活動も活発にします。
食物繊維の働きでお腹の調子を整える
桃には水溶性・不溶性両方の食物繊維がバランス良く含まれており、次のようにおなかの調子を整える働きがあります。
水溶性食物繊維 |
---|
・ゆっくり移動し、血糖値の急上昇を防ぐ ・コレステロールなどを吸収して排出させる |
不溶性食物繊維 |
・水分を吸収して便を増やし、腸を刺激することで排便を促す ・善玉菌を増やす |
このように、桃には体にうれしい栄養素が含まれていますが、食べ過ぎると弊害もあるようです。
どのようなデメリットがあるのかも調べましたので、次の章で説明しますね。
桃の食べ過ぎで副作用につながる栄養成分と症状
桃を食べ過ぎたことによって体調不良を起こす場合があります。
まず桃は、食品表示法で「特定原材料に準ずる20品目」に指定されているとおり、アレルギーを起こす可能性がある果物です。(※9)
桃にアレルギーがある人はもちろん、子供や幼児にはじめて与える場合は注意深く様子を見なければなりません。
また、アレルギーがなくても桃の成分が原因で体に悪い影響が出る可能性もあります。
食べ過ぎるとどうなるのかを成分ごとに解説しますが、どうやら太る原因にもなるようです。
桃ゼリーなどの食べ過ぎは太る可能性がある
生の桃より桃の缶詰やゼリーなどを食べ過ぎると太るリスクがあります。
食事をすると血糖値が上昇し、それを下げるためにインスリンが分泌されます。
インスリンに脂肪を溜める働きがあるため、血糖値の上昇が太ることにもつながるのですが、実は生の果物は血糖値が上がりにくい食品です。(※10)
しかし残念ながら、缶詰やゼリー、ドライフルーツに加工されたものは、糖質やカロリーも高くなり、血糖値の上昇は抑えられません。(※11)
単純にカロリーだけで考えても、かなり違いがあります。
白桃 | 黄桃の缶詰 (※12) |
---|---|
38kcal | 83kcal |
体型が気になる方や糖尿病で血糖値に注意が必要な方は、缶詰やゼリーより生の果物を食べる方が良いでしょう。
また、甘い桃に含まれる果糖やソルビトールは、腸の不調を引き起こす原因になる場合があります。
果糖やソルビトールの影響で腹痛や下痢、便秘を引き起こす
桃に含まれる果糖やソルビトールを摂り過ぎると、腸が過敏になって腹痛や下痢、便秘を引き起こす可能性があります。
とくに腸の不調が続く過敏性腸症候群の人にとって、腸の発酵を促す糖類を含む食べ物(FODMAP食)は症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
桃をたくさん食べた結果、下痢をした方もいるようです。
親から桃5つもろて
2つ一気食いしたら
下痢になったよ😲
食べ過ぎイイ(・∀・д・)クナイ!— ぬ (@wkc2400) July 2, 2020
桃が原因かどうかは定かではありませんが、関係があるかもしれませんね。注意しましょう。
また、桃が腐っていてお腹を壊したなんてことにならないように、次の記事も参考にして桃の状態を見極めてくださいね!
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
お腹ではなく、胃の不調などが起こる場合もあります。
ビタミンCの摂り過ぎで胃の不調や組織損傷の恐れも
ビタミンCを摂り過ぎると、次のような体へのトラブルが起こる恐れがあります。
- 胃けいれんや胃痛
- 下痢
- ヘマクロマトーシス患者は鉄過剰症を引き起こし、体の組織が損傷する
健康な人がビタミンCを摂り過ぎても命にかかわることは考えにくいですが、体内に鉄を溜めすぎるヘマクロマトーシスという病気にかかっている人は要注意ですよ!
また、腎臓に疾患がある人も気を付けなければなりません。
腎疾患患者はカリウムの摂り過ぎに注意!
腎臓の機能が低下しているとカリウムの排出がうまくいかず、高カリウム血症を引き起こすかもしれません。
高カリウム血症になるとろれつが回らない・手足のしびれ・不整脈や心不全のリスクもあるため、治療として1日のカリウム摂取量を1500mg以下に制限されることもあります。(※15)
命にかかわる場合もありますので、しっかり自己管理しましょう。
桃は食べ過ぎると悪影響があるとわかりましたが、摂り過ぎなければメリットもありますし、なにより美味しいですよね!
いったいどれくらいなら食べられるのかや、健康を意識した食べ方も紹介しますので、食べる際の参考にしてくださいね。
桃の食べ過ぎにならない1日の適量と健康に効果的な食べ方
桃の食べ過ぎにならない適量は、健康な人で1日200g程度(中サイズ1~2個分)、糖尿病患者で100g程度です。
「毎日くだもの200グラム運動」として、健康維持のために1日に200g以上の果物を食べることが推奨されています。(※16)
しかし、糖尿病の食事療法を行っている場合は、半分の100g程度が安心して食べられる量ですので注意してくださいね。(※17)
腎臓疾患がある方は「自分も200g食べて大丈夫?」と心配だと思いますので、算出しました。
上限カリウム量 | 桃100あたりのカリウム量 | 上限に値する桃の量 |
---|---|---|
1500mg | 180mg | 約830g |
適量を守る以外にも健康のために工夫できることはありますよ!
適量を守る以外にできる健康に効果的な食べ方とは
ただ食べる量を守るのではなく、次のような点に注意して食べると、ダイエットや健康にも効果的です。
果物の果糖は吸収スピードが速いので、朝食に食べるとすぐに活動できますし、お腹いっぱいになった食後より、食前やおやつにする方が栄養素をしっかり吸収できます。
さらに脂肪の吸収を促すBMAL1というたんぱく質の分泌が少ない時間帯に食べると、太りにくいと考えられています。
BMAL1の量が最も少ないのは6時~14時頃ですから、朝食や昼食の前・早めのおやつとして桃を食べると良いでしょう。
おやつにもってこいなフルーツ寒天のレシピを紹介しますね!
健康やダイエットを意識するなら、夜はあまり食べないことをおすすめします。
もし手元にたくさんあるなら、一気に食べてしまうより上手に保存して長持ちさせましょう♪
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
結論|桃を食べ過ぎないで適量で栄養摂取しよう
桃にはビタミンCや糖分が豊富に含まれており、美容や脳のエネルギーとなって体を元気にする効果が期待できます。
しかし、食べ過ぎると果糖やソルビトールの影響で、便秘や下痢を起こす可能性もあります。
さらに生ではなく桃缶などを食べ過ぎると、太る原因にもなるので注意が必要です。
1日200g程度の適量を守りつつ、夜を避けて朝や早めのおやつとして食べることで、健康的に楽しめますよ!
この記事を参考にして、桃の良い部分を存分に取り入れましょう♪
参考資料
※をクリックすると元の位置へ戻ります。
※1 果実類/(もも類)/もも/白肉種/生|食品成分データベース|文部科学省
※2 果実類/(もも類)/もも/白肉種/生 炭水化物-100g|食品成分データベース|文部科学省
※3 脳の栄養「ブドウ糖」とは~効果から食べ物まで幅広く紹介|H2株式会社
※4 砂糖の適時・適正接種は身体の働きにどのように影響するのか|農畜産業振興機構
※5 低血糖になったら|DMTOWN
※6 栄養素の説明-ビタミンC|オーソモレキュラー栄養医学研究所
※7 多くの人が勘違い!?むくみの本当の原因と効果的な解消法|サントリー
※8 不溶性と水溶性、2つの食物繊維をバランスよく摂取するためには?|大塚製薬
※9 アレルギー表示の対象は27品目|独立行政法人環境再生保全機構
※10 体内での血糖値上昇のメカニズム|大塚製薬
※11 果物の摂取で気をつけることはありますか?|さっぽろ糖尿病・甲状腺クリニック
※12 果実類/(もも類)/もも/缶詰/黄肉種/果肉|食品成分データベース|文部科学省
※13 【消化器内科専門医が解説】過敏性腸症候群( IBS )|広崎医院
※14 海外の情報 ビタミンC|厚生労働省eJIM
※15 慢性腎臓病(CKD)とと人工透析|両国東口クリニック
※16 「毎日くだもの200グラム運動とは?」|毎日くだもの200g推進全国協議会
※17 果物の適正量について~1日にどの位食べれば良いの?~|仙台徳洲会病院
※18 果物の嬉しい効果と上手な食べ方|山梨県厚生連健康管理センター
※19 上手な小麦粉料理の食べ方|日清製粉グループ