【監修者:管理栄養士 中山沙折】
生にんにくは栄養豊富で長所はたくさんありますが、生で食べるときにはいくつか知っておきたい注意点があります。
にんにくをすりおろしたり、スライスしたりする食べ方でさまざまなメリットが期待できる一方で、うまい!と思って食べ過ぎると身体への影響が強すぎて体調不良になるおそれがあるのです。
生にんにくを美味しく食べて効率よく栄養を補給するには、食べ方に注意しなければいけません。
そこで今回は、生でにんにくを食べる際に知っておきたいポイントについて調べてみました。
この記事を読めば、生にんにくの長所をはじめ、食べ方や料理法によっては身体に影響があることや工夫の仕方がわかるようになるのでぜひ参考にしてください。
※なお、生にんにくとは収穫したばかりの水分が多い状態のことです。スーパーなどで購入できるのは水分を飛ばした「乾燥にんにく」といって、厳密にいうと呼び方に違いがあるそうです。この記事では、生でにんにくを食べることを前提に紹介しています。
管理栄養士・栄養士
目次
生にんにくは体に良い?長所と短所を解説
にんにくを生で食べるとうれしい効果が期待できる一方で、作用が強すぎて短所となる場合があります。
それでは生でにんにくを食べたときの長所と短所を確認してみましょう。
【長所】独特の栄養成分が健康に役立つ
にんにくを生で食べる長所というと、疲労回復に抜群、スタミナがつきそう、身体に良さそう・・・などのイメージがあると思います。
健康に役立つと期待できるのは、にんにくの細胞に含まれる硫化アリルの一種・アリインという成分に秘密があります。
切る・すりつぶすなどの調理で細胞が壊れると、アリインがアリシンという成分に変化します。それぞれ、以下のような嬉しい作用があるとわかっています。
アリイン(※1) | ・疲労回復 ・血液サラサラ ・抗酸化作用 ・抗菌、抗カビ |
---|---|
アリシン(※2) | ・疲労回復 ・血液サラサラ ・抗酸化作用 ・コレステロール値上昇抑制 ・血糖値上昇抑制 ・抗菌、殺菌 ・食欲増進 |
にんにくを生で食べるならアリシンを効率よく補給できるようにスライスまたは、すりつぶして料理するのがおすすめです。
【短所】強すぎる臭い・辛み・殺菌作用の弊害がある
にんにくの成分がアリインからアリシンへと変化することで刺激が強くなります。
その結果、独特の臭いや辛み、強力な殺菌作用による弊害が生まれることが、生でにんにくを食べる短所になります。(※3)
調理前は何も臭いがしなかったのに、切った途端に独特の臭いが発生するのは、アリインがアリシンに変わって臭いのもとを発生させるからです。
また、強力な殺菌作用により胃の粘膜を荒らして胃痛を、腸の善玉菌を減少させて腹痛を、赤血球を破壊し貧血を引き起こす可能性もあるのです。(※4)
生にんにくを細かく刻んでアリシンを増やして過剰摂取すると、体調不良の原因になるので注意しましょう。
生でにんにくを食べる際には適量を守ることがポイントです。正しい生にんにくの食べ方について確認してみましょう!
食べ過ぎは危険!生にんにくの食べ方の注意点
にんにくを食べ過ぎるとどうなってしまうの?何が危険なの?気になる点をピックアップしました。
生で食べ過ぎた人の口コミ
にんにくを生で食べ過ぎると、口臭やおならが気になるだけではなく、腹痛・胃痛など体調不良を起こす場合があるのかが心配になりますよね。
気をつけてね……https://t.co/yc1qI721nB
— うぃる (@william777_7) January 27, 2021
にんにくの過剰摂取により救急搬送された記事を受けてのツイートです。
生のにんにくは刺激や殺菌作用が強いので、食べ過ぎると胃の粘膜や胃壁が荒れてしまうことがあります。
わかる。
私も胃腸が弱い。にんにく食べたら胃痛がすごい。何度も胃カメラしてる。気を付けてね😭
— LALA 😎 (@LALA0812lalacha) January 18, 2021
人によって胃腸の強さが違うので、日頃から自分の適量を知っておくことも大切といえるでしょう。
生で食べるときの注意点
生でにんにくを食べるときにはどのような点に注意すれば良いのか、食べ方をチェックしてみましょう。
急性肝炎での死亡を避けるため、犬へにんにくを与えてはいけないことは豆知識として知られています。(※5)
動物への影響を考えると、私たち人間にも少なからず影響があるかもしれないと覚えておくといいですね。
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大量に食べ過ぎない
生でにんにくを食べる短所でもご紹介したとおり、強い殺菌作用によって善玉菌を減らす可能性があるといわれています。
にんにくチューブやにんにく味噌など量がわかりにくいものもあるので、料理に使い過ぎたり食べ過ぎたりには注意しましょう。
わしもにんにくのホイル焼き食べ過ぎて体調悪くなったことある
変な液が出てくるというか…食べ過ぎはよくないわよね#仰天ニュース— らいず (@yuusya1029) January 7, 2020
火を通しても食べ過ぎで体調が悪くなったというケースもあるので気をつけたいですね。
空腹時には食べない
生で食べるときの注意点でもご紹介したとおり、空腹時ににんにくを食べることは胃腸への刺激が強く、胃の粘膜や胃壁を荒らしてしまいます。
生でにんにくを食べるときは、一番初めに手をつけない、ほかの食べ物を食べてからにするなどを心掛けておきましょう。
長期間にわたって食べない
生にんにくの成分であるアリシンは血液凝固を抑制する抗動脈硬化機能や血圧が低下する作用があります。
長期間にわたって摂取し続けると貧血や成長障害を引き起こしてしまうことがあるので注意しましょう。(※6)
生にんにく摂取の注意点を確認したところで、摂取量の目安や加熱時との違いについて確認してみましょう。
どのくらいが適量か?
にんにくは生や加熱など、状態や料理方法によって摂取量の目安が異なります。
しかし、目安はあくまでも一般的なもの。アレルギーや体調には個人差があるので、少なめから始めて自分なりの目安を見つけることが大切です。
生 | 1片 |
---|---|
加熱調理 | 3片 |
醤油漬け・味噌漬け | 2~3片 |
にんにくは刺激が強いので毎日食べず、2~3日に一度食べる程度が良いとされています。にんにくを食べたら日を空けて食べるなどの注意が必要です。(※7)
ちなみに、にんにくの欠片とは画像の状態のことで、この場合は6片ですね。
生のにんにく1片の量は、チューブ製品だとだいたい小さじ1杯程度になります。
すりおろしにんにく、チューブ式、冷凍保存したものなど量がわかりにくいものは適量を把握しておくといいですね!
また、生でにんにくを食べた後に口の臭いが心配になときは、以下の対処法をお試しください!
- 緑茶・コーヒー・牛乳などを飲む
- ハーブ(パセリやクレソンなど)を生で食べる
- リンゴを食べる
身近にある食べもので対処できるのはうれしいですね。
生でにんにくを食べると口臭が気になるからと、加熱調理をする方も多いと思います。そこで、加熱をするとにんにくの成分に変化が生じるのか確認しておきましょう。
生のにんにくと加熱時との違い
にんにくを刻んだりすりつぶしたりするとアリインがアリシンに変化しますが、生の状態と加熱した場合でも成分に違いが見られます。
にんにくを加熱すると成分が変わる
にんにくの細胞に含まれるアリインは、切ったりして細胞を傷つけるとアリシンに変化し、さらにアリシンは調理法によってさまざまな成分に変わります。
その中でも注目したいのが、加熱すると生まれるスコルジニンです。
アリインは無臭⇒アリシンは独特の臭い⇒スコルジニンはほぼ無臭と、臭いにも変化が生じます。
スコルジニンは酸化還元作用があり、老化防止や疲労回復、強壮作用などが期待できる成分です。(※8)
また、にんにくをオリーブオイルに入れて湯せんすると、アホエンという成分が抽出できます。
アホエンは血液循環作用で脳神経活動を活発にして認知症予防や、免疫力アップや細胞老化抑制作用による抗がん作用なども期待されている医学界でも注目の成分です。(※9)
最近では、アホエンオイルとして商品化されたものも多く出回っています。
このように、にんにくは生のまま食べるか、加熱調理をするのかによって期待できるはたらきも変わってきます。以下のように目的に応じて使い分けるのがおすすめです。
目的 | にんにくの使い方 | 成分とはたらき |
---|---|---|
冷え性の改善 (臭いが気になる場合) |
生:切らずに欠片のまま醤油漬け | アリイン:血液サラサラ |
食中毒の予防 (臭いは気にしない場合) |
生:すりおろし | アリシン:殺菌作用 |
肌のシミ予防 | 加熱:スライスして油で炒める | スコルジニン:酸化還元作用 |
風邪の予防 | 加熱:スライスしてオイルに入れて湯せん | アホエン:免疫力アップ |
結論|生にんにくは効果抜群だが過剰摂取に注意しよう
にんにくは体に良い成分が含まれている食べ物なので積極的に取り入れたいものですが、生で食べるときには食べる量や頻度には十分注意してください。
また、加熱調理の方法などで成分が変化することで体にもたらすメリット・デメリットも変わることに注目し、目的に応じて使い分けるのがおすすめです。
生にんにくはラーメンのトッピングや刺身の薬味など味のアクセントにもなりますが、食べ過ぎに注意しながら、さまざまな料理でアレンジを楽しんでくださいね。