【監修者:管理栄養士 坂本圭子】
刺身を買うと、いつも「常温で何時間くらいなら持ち歩けるのかな?」と思います。
夏場は気温が高いので、持ち歩くなら1時間でも心配…。用事を済ませて、家に帰る直前に買うように気をつけています。
一方、冬場は車で持ち運ぶときが心配です。暖房がついた暖かい車内だと、すぐに傷んでしまいそうですよね。
今回は刺身を常温保存する場合に、いつまでなら安心して食べられるのかを徹底調査してみたいと思います!
- 刺身を常温放置した実体験を紹介!食中毒の危険性も知りたい
- 刺身は種類別に日持ちが違うの?鮮度が落ちやすい刺身をチェック!
- 刺身が腐るとどうなる?
- 刺身を長持ちさせるための上手な保存方法
刺身を食べるときに一番心配なのは、食中毒ですよね。実は刺身が原因で食中毒を起こす菌は、1種類だけではありません。
刺身を常温保存した場合にどんな食中毒の危険性があるのかを、原因や予防法と一緒に詳しくご紹介していきます。
刺身を安全に食べるための情報を、ご一緒に確認しましょう!
管理栄養士・栄養士
目次
刺身の常温放置は何時間後から危ない?食中毒のリスクを状況別に解説
刺身を買ってすぐに家に帰ればいいのですが、そうもいかない状況だってありますよね。
遠出した際に市場で美味しそうな刺身を見つけても、「持ち運び時間が数時間…」となると、諦めるしかないのでしょうか?
刺身が常温で何時間たつと食べられなくなるのかを、口コミなどで調査してみました。実体験を参考にしてみましょう!
刺身を常温保存したらどうなる?実体験を紹介
口コミなどから「刺身を常温放置した」という実体験をまとめたので、ご自分の状況と照らし合わせながらご覧下さい!
- 「春や秋でも車の中は高温になることがある。刺身を放置したら30分でも腐る」
- 「刺身用の青魚の常温放置は危ない。夏場なら1時間ほどで傷むことがある」
- 「特売品の刺身は2時間~3時間で鮮度が落ちたのがわかる」
- 「鮮度が良い刺身を氷と一緒に持ち歩いても、3時間~4時間が限界」
- 「涼しい場所で一度も刺身に触れずに置いていたら、6時間くらいは大丈夫。それ以上は変な臭いがしてくる」
- 「涼しい場所でも半日(12時間)放置したら異臭がしてくる」
- 「一晩(1日)放置したら変色して生臭くなる」
- 「醤油漬けや昆布締めにしても、常温で1日放置すると危ない」
涼しい場所に置いても、半日後からは「危ない」という声が急増しました。
ただし、実体験を見るとシチュエーションがさまざまです。常温で保存できる時間を左右するカギは、下記の3つに絞られるようです!
- 刺身の鮮度
- 内臓つきでこれからさばくのか・柵やカットした状態か
- 保存環境(温度・湿度・密閉度など)
「○時間なら常温放置しても大丈夫」と決めるのではなく、「食べてはいけない状態」を自分で判断できるようになる方が安全ですね。
後ほど「刺身は腐るとどうなるの?傷んだ時の見分け方や目安がコレ!」で絶対に食べてはいけない刺身の見分け方をご紹介するので、チェックしてみて下さい!
寿司ネタは常温がおいしいって本当!?
回転寿司では寿司ネタが冷たい状態で提供されるのが一般的ですが、板前さんが握ってくれるお寿司屋さんでは、人肌程度の寿司ネタもあります。
これは、握る直前に常温に戻しているそうです。理由は、寿司ネタが冷たいと魚が本来持つ旨味を感じにくくなるためです。
常温放置した寿司ネタを使っているわけでは無い点に、ご注意下さい!
刺身の常温放置で食中毒リスクが急増!
刺身が腐るのはもちろん心配ですが、食中毒のリスクも忘れてはいけません。食中毒の原因ごとに、菌・寄生虫の名前や予防法をご紹介します。
原因(状況) | 菌の名前 |
青魚(内臓つき)を常温放置 など | ヒスタミン アニサキス(寄生虫) |
おむつ替え後、手洗いをせずに刺身を触る など | ノロウィルス |
魚をよく洗わずに刺身にした など | 腸炎ビブリオ |
食中毒の症状は軽い症状でも腹痛や嘔吐など、重症化すると呼吸困難などが起きて、最悪は死亡する例もあります!
絶対に避けたいですが、下記のような点が難しいところです。
- 見た目や臭いに異変が無くても、食中毒菌が付着&増殖している場合がある
- 食中毒菌は身近にいて、どの菌にいつ感染するかがわからない
低温に強い菌・高温に強い菌など菌によって特徴がありますが、食中毒菌や寄生虫の予防ポイントは共通なので、覚えておきましょう!
- つけない:清潔な手指・調理器具・調理環境を守る
- ふやさない:常温保存はNG!一定して低温保存する、鮮度が良い刺身を選ぶ
- やっつける:内臓をすぐに取る、よく洗う、加熱する
*厚生労働省のホームページを参考にご紹介しました。
刺身は生で食べるので、加熱して食中毒を予防できません。基本的には「常温で日持ちしない」と考えて頂けると幸いです。
ほんの少しの油断が、食中毒を引き起こすことがあります。特に子どもさんや免疫力が低い方などは重症化する危険性が高まるので、十分にご注意下さい!
食中毒の危険性を考えると、自然と常温保存は避けたくなりますよね。次に、冷蔵庫で保存する場合の日持ちもチェックしましょう。
魚の種類別に、日持ちが多少違う点に注目です!
刺身の日持ちを種類別に調査!鮮度が落ちやすい魚をリストアップ
「刺身」と一口にいっても、魚・貝類・イカやタコなど種類がたくさんありますよね。
「生で食べるなら早めに」が鉄則ですが、それぞれ鮮度が落ちるまでの時間に多少の差があります。魚の種類別に、冷蔵庫での日持ちを確認していきましょう。
刺身の種類によって日持ちは違うの?
スーパーなどで売られている刺身には消費期限が書かれていて、期限は「当日中~長くて1日」が一般的です。
実際に数時間で生臭さが強くなってしまう場合もありますが、消費期限切れになってからも、「多少味は落ちてるけど食べられる」と感じる魚もありますよね。
魚の種類別に、冷蔵庫での日持ちをチェックしてみましょう!
日持ち | 種類 | 魚の名前 |
当日中 | 青魚 | サバ、サンマ、イワシ、アジ、カツオ |
1~2日 | 赤身魚 | サーモン、マグロ、ハマチ、カンパチ、ブリ、 |
白身魚 | 鯛、ヒラメ、スズキ | |
貝類・頭足類・甲殻類 | タコ・イカ・ホタテ・生エビ | |
2~3日 | 青魚 | マグロ |
*ご紹介したのは、一般的な日持ちの目安です。実際の日持ちは、保存方法や魚の鮮度などで変わります。
ちなみに、魚屋さんでは「青魚・赤身魚・白身魚」などの種類に分けて呼ばれるのが一般的ですが、実は生物学的な分類とは関係ありません。
表ではカツオ・マグロを青魚としていますが、「赤身魚でしょ!」と覚えている方もいらっしゃると思います。
鯛を青魚と呼ぶのはさすがに無理がありますが、魚をわかりやすく販売するための、何となく分類された種類と覚えておいて下さいね。
刺身を冷凍した場合の日持ち
刺身は冷凍庫保存できます!魚の種類や鮮度によって、日持ちは1週間~1ヶ月を目安になさって下さい。
ただし家庭で冷凍した刺身を解凍すると、下記のような理由で多少味が落ちてしまいます。
- 家庭用冷凍庫の温度では瞬間冷凍できないので、凍るまでの間に少し劣化する
- 冷凍中に臭い移りや冷凍焼けの影響で味が落ちる
- 解凍時に旨味を含んだ水分が流れ出してしまい、味が落ちる など
市販品では賞味期限が長い冷凍の刺身が販売されているので、こちらも状況に合わせて利用してみたいですね。
商品名など | 賞味期限 | 引用元 |
カニのキタウロコ トキシラズ |
1ヶ月 | 通販HP |
釜庄 ホタテ |
発送日を含む60日以上 | 通販HP |
鮮度が落ちやすいリストNo.1は青魚!その理由とは?
先ほどの表で、日持ちが特に短いのは青魚でした。「青魚はあしが早い」なんていう言葉もよく聞きますよね。
「青魚は早く食べないと危ない」と広く知られている理由は、食中毒でご紹介したヒスタミンです!
ヒスタミンとは?
ヒスチジンという物質があり、主に青魚に含まれています。
海中にいる「ヒスタミンの元になる菌」に魚が感染すると、菌の働きでヒスチジンがヒスタミンとなります。
ヒスタミンには、常温(25℃くらい)で増えやすいもの・冷蔵庫の温度帯でも増えるものがあるので、冷蔵庫保存でも危険な場合があります。
ヒスタミンが生成されると、加熱してもやっつけることができません。
ヒスタミン中毒を予防するために、先ほどご紹介した食中毒予防3つのポイントに加えて、下記の点にもご注意下さい。
- 常温保存は絶対にしない
- 冷蔵庫保存をしても早めに食べる
- 冷凍魚を解凍するときも低温で。解凍後は早めに食べる
- 青魚を食べて舌に刺激を感じたら、食べない
釣りをする方は、釣りあげた瞬間から温度管理をなさって下さいね。
刺身を常温で保存できる時間の目安や、冷蔵庫・冷凍庫保存の場合の日持ちがわかりました。
低温で保存するのが大切で、食べられるかどうかの判断は自分でする必要がありましたね。
次に、刺身が腐るとどうなるのかをご紹介します。安全に刺身を食べるために、食べてはいけない状態もチェックしましょう!
刺身は腐るとどうなるの?傷んだ時の見分け方や目安がコレ!
刺身を腐らせる菌は、脂がのって栄養豊富な刺身が大好きです。刺身に含まれる水分を栄養にして、急激に増殖するので注意が必要ですね!
また柵から切り分けられて断面だらけになった刺身は、酸化しやすい食品でもあります。これからご紹介するような状態に気づいたら、食べないで下さい。
見た目、触った感じ
- 黒色・茶色・緑色などに変色
- 白い膜がはっている
- 赤いヌルヌルした水分が流れ出している
- カットするときに包丁にへばりつくような感じ。断面の角が立たない
- 表面がベタベタ・ヌルヌルする
臭い
- 強い生臭さ
味、食感
- 気持ち悪い味
- 舌がピリピリする
- ねっとりとしている
多少変色しても食べられる場合がありますが、血が混じったような生臭さが出ておいしくありません。
刺身の中で菌が増殖していることを忘れず、もったいなくても捨てるようおすすめします!安全第一でお刺身を楽しみましょう!
刺身は高価ですよね。保存方法を間違って上記のような状態になるのは避けたいものです。
なるべく美味しい状態を長持ちさせるために、最後に上手な保存方法も確認します。
刺身をできるだけ長持ちさせるには?上手な保存方法を紹介!
刺身の保存で大切なのは、「温度管理」と「密閉」です!買った瞬間から劣化を防げるように、保存のポイントをご紹介していきます。
持ち歩き時のポイント
季節や状況によっては、持ち歩きの段階で刺身がかなり劣化してしまうことがあります。なるべく低温を保って、直射日光も避けましょう!
- 保冷機能があるバッグと凍らせた保冷剤を使う
- お店で氷をもらう
- なるべく早く持ち帰って、すぐに冷蔵庫に入れる
保冷機能があるバッグは、下記の画像のようなイメージです。
私は遠出して市場に買い物に行くときに、ホームセンターで売っている小さな発泡スチロールボックスを使うこともあります。
保冷機能だけではなく密閉性も高いので、長時間の持ち歩きにおすすめです!
冷蔵庫 保存方法のポイント
「冷蔵庫内の温度は安定している」と思いきや、開閉時の温度変化などで、意外と刺身が早く劣化してしまう場合があります。
下記の手順で保存してみて下さい。
- 刺身を買ってきたら、軽く水洗いする(切り分けてある刺身も)
- 水気をしっかり拭き取る
- (柵の場合)キッチンペーパーで包む
- ラップでしっかり密閉してすぐに冷蔵庫に入れる
- ドリップが出てキッチンペーパーが汚れたら、キッチンペーパーを取り替える
刺身の水洗いは必要なの?
スーパーなどで刺身が陳列されている間に、生臭さの元になる成分が表面に染み出ています。軽く水洗いをするだけで通常よりおいしいお刺身が食べられますので、ぜひお試しください!
水洗いをした後は常温に放置せず、すぐに水気を拭き取って低温で保存しましょう。
ドリップとは?
魚を保存していると出てくる水分のことです。
鮮度が良いうちは細胞が旨味を含んだ水分を保水していますので、ドリップは鮮度が落ちた証拠です。
ドリップが出ると味や食感が落ちるだけではなく、ドリップの中でも雑菌が増殖して、食中毒の危険性が高まる点も要注意です!
保存中、ドリップに気づいたら、すぐにキッチンペーパーを取り替えて下さいね。基本的にはドリップが出ないうちに食べ切るのが理想です!
冷凍庫 保存方法のポイント
食べ切れない刺身は、傷み始める前に冷凍しましょう!
- 刺身を軽く水洗いし、水気をしっかり拭き取る
- ラップに包む(なるべく密閉して)
- 密閉できる保存袋に、重ならないように入れる
- 空気を抜いてしっかり密閉する
- 保存袋ごとアルミホイルで包み、(あれば)金属製のトレーにのせて冷凍する(早く凍らせるため)
*完全に凍ったら、アルミホイルや金属製のトレーは取り外してOKです。
刺身を冷凍したら、解凍方法も気になりますよね。先ほどもお話ししたとおり、刺身は低温で解凍します。
常温解凍は、雑菌が増殖しやすくなる&ドリップが出やすくなるので避けて下さいね。
解凍方法は下記の2パターンです。
- 保存袋ごと冷蔵庫で自然解凍(カット後の刺身なら2~3時間、柵なら5~6時間が目安)
- 保存袋ごと氷水で解凍(1時間ほどが目安)
氷水での解凍はドリップが出にくいですし、短時間で美味しく解凍できます!
室温が高いと氷がすぐに溶けてしまうので、様子を見て氷を足し、水温が上がらないようにご注意下さい。
まとめ
刺身の常温保存について詳しくご紹介しました。基本的に常温保存は避けて、低温保存が大切だとわかりましたね!
ポイントをまとめてみます!
- 刺身は常温でも半日以内なら食べられるという口コミがあるが、常温保存はしない方がいい
- 刺身が原因の食中毒にも注意して、しっかり予防する
- 刺身を冷蔵庫で保存する場合の日持ちは、長くても3日ほど
- 青魚はヒスタミン中毒に注意が必要。温度管理を徹底して早めに食べる
- 刺身が腐ると、見た目・臭い・味が変化する。怪しいと感じたら食べないのがおすすめ
- 刺身のおいしさを長持ちさせるために、「温度管理」と「密閉」に気をつける
刺身が原因の食中毒を予防するために、常温放置はNGでした。
保存環境によっては常温でも数時間持つことがありますが、「○時間までなら大丈夫」ではなく、刺身の状態を自分の五感で判断して、食べられるかどうかを見極めましょう!
刺身に限らず、何かの食品を食べてお腹を壊した・気持ち悪くなったなどの経験がある方は多いと思います。
数時間でおさまる症状ならいいのですが、食中毒の菌によっては命を落とす危険性もあることを、忘れないで下さいね。
今回ご紹介した保存期間や保存方法を参考に、これからもお刺身をおいしく・安全に食べていきましょう!