【監修者:管理栄養士 坂本圭子】
週末に、1週間分の食材を買いだめしたときのことです。
お菓子をたくさん詰めた買い物袋の底に豚肉があると気づかず、常温に1日放置してしまいましたが、やっぱり危険ですよね・・・。
涼しい場所に1時間~2時間くらいなら大丈夫だったかもしれませんが、室温も高かったですし…捨てるしかないかなと思っています。
豚肉は「腐りやすい」、「生焼けはダメ」など、取扱いに注意が必要な食材というイメージがありますよね。
実際はどうなのでしょうか?臭いなどを確認して異変が無ければ、食べてもいい場合があるのでしょうか?
今回は、豚肉の常温放置の危険性や正しい保存方法などを調べてみたいと思います!
- 豚肉を何時間も常温放置するとリスクが高い理由を徹底解説
- 腐るとこんな特徴が!傷んでいる状態の見分け方
- 調理前と調理後の日持ち期間の目安
- 美味しさを保てる保存方法と日持ちするレシピ
豚肉を常温放置することで怖いのは、食中毒です。
自分が作った料理を家族が食べて苦しまないために、正しい知識を知って安全第一で豚肉を楽しみたいですよね。
この記事を最後まで読んでいただけると正しい豚肉の取り扱い方をマスターできるのでぜひ参考にしてください!
管理栄養士・栄養士
目次
豚肉は何時間も常温放置できない!その理由とは?
「豚肉が常温に何時間くらい置けるのかな?」と考えたときに、私にとっての常温は冷蔵庫でも冷凍庫でもない場所全てです。
- 家の中
- 家の外
- 車中 など
夏場で炎天下の中駐車した車の中と冬で凍てつくような外では環境が全然違うのに、何となく全て常温と思っています。
でも、食品衛生法や日本薬局方、日本工業規格などで常温の定義について調べてみると見解は分かれるようですが、総じてみると以下のように限定された場所のことでした。
常温とは?
- 15℃~25℃
- 温度が一定
- 直射日光が当たらない など
このような知識がある方は少ないと思うので、どんな状況にでも当てはまるように、冷蔵庫や冷凍庫の外全てを「常温」としてお話していきますね。
まずは厚生労働省のような公的機関からの情報を調べると、冷蔵庫で保存する・加熱して食べるのような情報はあったのですが、
豚肉を常温に何時間置けるかについての明確な答えは出ませんでした。
次に口コミなどで、豚肉を常温放置した経験がある方の声を集めてみました。
豚肉を数時間放置しても大丈夫だった
- クーラーのきいている部屋に1時間くらいなら常温に置いても大丈夫
- 大きい塊や厚切りの豚肉を2時間くらい常温に置いたけど食べられた
- 買ったときに氷をもらって豚肉と一緒に3時間~4時間持ち歩いたけど腐らなかった
- 10℃くらいの場所で豚ホルモンを約5時間放置してしまったけど食べられた
- 寒いキッチンに半日(12時間)放置してしまったけど食べられた
豚肉を数時間放置したら怪しい状態になった
- 夏場の車内に30分くらい置いたらムンと変な臭いがした
- 豚ひき肉を6時間くらい常温放置したら変色した
- 冷凍していた豚肉を一晩(8時間くらい)常温に置いてしまい何となく心配だから捨てた
口コミからも「生の豚肉を常温に置いたときに、確実に○時間は食べられる」という明確な情報はありません。
温度などによって豚肉の状態が変わるので、やはり何分で腐るなどと特定は難しいとわかりました。
豚肉は常温に置けない理由は菌と寄生虫
公的機関などからの確実な情報が無いので、「豚肉は常温に○時間置ける」とは言えません。
ただし、厚生労働省が出した『豚の食肉の基準に関するQ&Aについて』に参考になる情報があり、常温放置はできないとはっきりわかってきました。
- 豚肉の血液や内臓には、食中毒菌や寄生虫が含まれている
- 飲食店などは、63℃で30分加熱するのと同等(75℃で1分以上加熱)の状態で、豚肉の中心部まで白くなった状態で料理を提供する必要がある
食中毒菌 | 寄生虫 |
サルモネラ菌 リステリア・モノサイドゲネス カンピロバクター E型肝炎ウィルス など |
トキソプラズマ サルコシスティス トリヒナ など |
食中毒菌も寄生虫も豚肉の鮮度に関係なくついていて、一般的には温かい場所だと増殖が速くなるので、常温放置は絶対にNGです!
それぞれの菌や寄生虫によって細かい増殖条件が違いますが、食中毒を予防するためには、下記が大切なので覚えておいて頂けると幸いです。
- 冷やして保存する
- 中心部まで確実に加熱する
- 生の豚肉(汁を含む)に触れた手指や調理器具はすぐに洗い、他のものに触れないようにする
豚肉は常温に置かず、冷蔵庫や冷凍庫に入れたとしても安心せずに、安全面に気をつけて取り扱っていきましょう!
次にご紹介するのは傷んだ豚肉の見分け方です。
常温放置しないなどを守っていても、そもそも劣化していれば食べられませんよね。
腐った生の豚肉を料理することのないよう、チェックしてみて下さい!
豚肉は腐るとどうなるの?傷んだ時の見分け方や目安がコレ!
豚肉は大きなパックで安売りしていることが多い食材なので、つい買いすぎて傷んでしまった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
傷んでいることに気付かず食べてしまうのは食中毒菌・寄生虫のリスクもあり危険なので、豚肉が腐るとどうなるのかなどをご紹介します。
こんな豚肉は食べちゃダメ!
豚肉が腐ると変色して変な臭いがするので、見分け方は簡単かと思います。
腐った豚肉は加熱しても食べられるような状態にはなりませんので、料理をする前に見極めましょう!
見た目、触った感じ
- カビ
- 灰色や黒色に変色
- 表面にぬめりがある
- 表面を触ると糸を引く
臭い
- 気持ち悪い臭い
- アンモニア臭
- 酸っぱい臭い
味
吐きそうなくらい気持ち悪い味
私は怪しいと思った豚ひき肉を料理してみたことがあるのですが、加熱しても気持ち悪い臭いと味で、料理全体をダメにしてしまいました。
見た目や臭いを目安に食べられるかどうかを判断し、少しでも怪しいと感じたら捨てるようおすすめします。
豚肉が原因の食中毒に要注意
腐った豚肉を食べた場合に、下記のような食中毒の症状が出る場合があります。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱 など
原因菌は1つではなく、全部の菌に関する知識を覚えるのは大変なので、食中毒を予防するのに大切な3つのポイントをご紹介します。
- つけない(清潔な手指や調理器具を使うなどで予防)
- 増やさない(冷やして保存するなどで予防)
- 死滅させる(よく加熱するなどで予防)
どれか1つを守るのではなく、全部を守ることが大切です!
食中毒菌は、豚肉についていても見た目や臭いなどに変化が無いことがほとんどなので、油断せずに対策をなさって下さいね!
*食中毒の予防にも大きく関わる保存方法は、「豚肉の正しい保存方法とは?日持ちするレシピも紹介!」でご紹介します。
新鮮な豚肉の見分け方
熊本県畜産協会が、新鮮な豚肉の見分け方として参考になる情報を公表していました。
- 赤身はツヤのある淡いピンク~少し濃い色
- 脂肪は白~乳白色で、水っぽくなくて硬さがある
豚肉の鮮度によって、買ってきてからの日持ちが変わります。
古いもの・新しいものを混ぜて売っているお店もあるので、店頭では慎重に豚肉を目利きしてみて下さいね!
新鮮な豚肉の選び方がわかったので、買ってきた豚肉がどれくらい日持ちするのかもご紹介します。
ご家庭で食べる量に合わせた献立作りの、参考になさってみて下さい。
豚肉の日持ち期間はどれくらい?調理前や調理後など調査!
生の豚肉だけではなく、豚肉料理の日持ちもご紹介します。
日本食肉消費総合センターが公表している情報をもとにご紹介するので、買いすぎ・作りすぎを防ぐために、チェックしていきましょう!
豚肉の状態 | 日持ちの目安 | |
調理前 | 挽肉・合挽き肉 | 当日中 |
スライス | 2日 | |
1枚肉 | ||
塊肉 | 2~3日 | |
加工 | 塩漬け | 2週間ほど (調理法や保存方を守れば) |
調理後 | 味噌漬け | 2~3日 |
生姜焼き | ||
豚肉・キャベツなどの野菜炒め | ||
ハンバーグ |
全て冷蔵庫で保存したときの日持ちで、調理後の豚肉料理については、口コミや実体験などをまとめてご紹介しました。
生の豚肉は先ほどご紹介したとおり、常温保存できません。
調理後でも料理の中で菌が増殖し、食中毒になる危険性がありますので、常温ではなく必ず冷やして保存して下さい!
冷蔵庫に真空チルド室がある場合は、真空チルド室で保存すれば生の豚肉の日持ちが多少伸びる可能性はあります。
冷凍したときの日持ちは?
豚肉を冷凍庫で保存すると、生でも調理後でも2週間~1ヶ月が日持ちの目安です。
1ヶ月以上保存ができる場合もあるのですが、冷凍焼けや臭い移りで風味が確実に落ちる点にご注意下さい。
豚肉に限らず、食品を冷凍すると水分が一旦凍って、解凍後に流れ出てしまいます。
解凍後は味と安全面どちらも考慮して、1~2日で食べ切るようおすすめします。
期限は守った方がいいの?
スーパーなどで冷蔵販売されている豚肉には、消費期限が書かれているのが一般的です。
冷凍販売であれば、賞味期限が書かれていることもあると思います。
消費期限や賞味期限の正しい意味は、こちらです!
- 消費期限:安全に食べられる期限
- 賞味期限:美味しく食べられる期限
*どちらも保存方法を守って未開封の場合の期限です。
期限切れになった豚肉については、「数日過ぎても食べられる」という口コミが多くあります。
- 消費期限切れ1日くらいは余裕で食べられる
- 消費期限切れ5日の豚肉が普通に食べられた
- 消費期限切れ10日の豚肉の表面を洗ってよく加熱したら食べられた
実際は鮮度や保存環境によって豚肉の状態が違うので、簡単に”ダメ”とも”良い”とも言えません。
豚肉が古くなると、先ほどご紹介したような元々ついている菌が増殖していますし、劣化も進んでいます。
口コミなどの情報をうのみにして期限切れの豚肉を食べるのは、おすすめできません。
できれば食べられる分だけ買って、なるべく早く食べ切るのが安全です!
最後に、豚肉の保存方法をご紹介します。正しく保存して、より安全で美味しい豚肉を楽しみましょう。
豚肉の正しい保存方法とは?日持ちするレシピも紹介!
何度もお伝えしたように、豚肉は常温で保存できません。
保存のポイントは温度管理と空気に触れさせないことなので、しっかりチェックなさってみて下さい!
豚肉の美味しさを保つ保存方法
生の豚肉を買ったときに、ドリップが出ていなくてすぐに使うのであれば、パックのまま保存してOKです。
ドリップが出ている、使いかけなどの場合は、下記のように保存しましょう。
冷蔵庫での保存方法
- 豚肉をパックから出す
- 豚肉の表面についたドリップをキッチンペーパーに吸わせる
- 豚肉をラップに包む(なるべく空気が入らないように)
- ジップつきの保存袋に入れる
- 空気を抜いて密閉し、冷蔵庫に入れる
冷凍する際は、ドリップなどの問題がなくても必ずパックから出して保存しましょう。冷蔵庫と同じ保存方法でOKです!
なるべく新鮮なうちに冷凍して下さいね。
豚肉の状態によって保存前の下ごしらえが必要な場合も…
豚肉と一口に言っても、塊肉から挽肉まで、さまざまな状態がありますよね。
いくつかの状態に分けて、保存前の下ごしらえもご紹介したいと思います。
豚肉の状態 | 下ごしらえ |
挽肉、合挽き肉 | 生で保存してもいいが、一度加熱して保存する方がより安全 |
細切れ肉 | 1回に使う分ずつ分けて保存する方が安全&便利 |
一枚肉 | 1枚ずつラップをする方が安全 |
塊肉 | 特に冷凍するときは1回に使う分ずつ料理に合わせた形にカットしておく方が安全&便利 |
少し手間ですが、”豚肉に何度も触らない”&”低温の状態を保つ”ことで安全性が高まるので、ぜひ試してみて頂けると幸いです。
冷凍した豚肉 解凍時の注意点!
冷凍の豚肉を常温で解凍すると、室温によっては菌の増殖や腐るのが早まってしまう心配があります。
解凍後、気づかずに放置してしまう可能性もありますよね。
冷凍した豚肉は使う前日に冷蔵庫にうつし、低温でゆっくり自然解凍なさって下さいね。
常備菜にもOK!日持ちレシピ
焼くと固くなる豚肉ですが、部位や調理方法によっては柔らかくてジューシーな食感が保ったまま日持ちさせる料理もありますよ!
日持ちするレシピの代表として、ゆで豚をご紹介します。
ゆで豚の作り方(日持ち:5日~1週間ほど)
- 豚塊肉を使用する(あればタコ糸でしばる)
- 冷蔵庫から出した豚肉を常温に戻す(表面の冷たさが取れる程度でOK)
- 水に豚塊肉・長ネギの青い部分・薄切りしょうがを入れる
- 火を付けて、アクを取りながら沸騰させる
- 柔らかくなるまで1~2時間煮込む
*(2)の「常温に戻す」とは、常温に放置するという意味ではありません。
肉の外側と中心部へ均等に火を入れるために、豚肉を煮る前・焼く前などに必要な工程です。
お部屋の温度に合わせて、塊肉なら1時間ほど(高温の場所ならもっと短時間)を目安に、ラップをして常温に置いて下さい。
ゆで豚は、にんにくしょうゆのようなタレにつけて食べるのが基本ですが、チャーハンなどにもアレンジ可能です。
冷凍もできるので、常備菜として多めに作っておいてもいいですね。
煮汁をお好みの味付けにアレンジしても美味しいです!
- 酒・砂糖・醤油の煮汁でチャーシューに
- 濃い目に出した紅茶・砂糖・醤油で紅茶煮に など
完成してからの保存のポイントはこちらです。
- 清潔な容器に入れる
- なるべく早く粗熱を取って冷蔵庫に入れる
- 清潔な取り箸で取り分ける
- 容器のフタに水滴がついたら拭き取る
- 食べない分はまたすぐに冷蔵庫に戻す
まとめ
豚肉を常温に置くとどうなるのかなど、豚肉を安全に食べるための情報をご紹介してきました。
ポイントをまとめてみます!
- 豚肉は常温放置してはダメ!菌や寄生虫が原因で食中毒の危険性がある
- 腐ると臭いや見た目がわかりやすく変化する
- 腐った豚肉は加熱しても食べられない
- 日持ちしない食材で挽肉なら当日中、塊肉でも3日ほどが目安
- 調理後も常温放置すると食中毒の危険性が高まる
- 保存は空気に触れさせない・低温がポイント
今回は生の豚肉についている食中毒の菌や寄生虫のことが詳しくわかりました。
安全に食べるためには、買った後の持ち歩きから食べるまでしっかり管理していく必要がありますね。
腐って食べられない状態も具体的に確認できたので、臭いなど気になる点があったら、もったいなくても捨てようと思います。
とはいえ、せっかく買ってきた食材を無駄にするのは心苦しいものです。
大きなパックで買った場合は、食べられない分をなるべくその日のうちに冷凍するなどして、無駄をなくすよう心掛けられると素敵ですね。
どんな料理にでも使えて家計にも役立ってくれる豚肉を、これからも安全に美味しく食べていきましょう!