【監修者:管理栄養士 杉原彩佳】
春菊には骨の健康維持に役立つ栄養成分のビタミンKが豊富に含まれていますが、食べ過ぎるとワーファリン剤の効き目が弱くなる可能性があるので注意が必要です。
ワーファリン剤と食事について心配な方は主治医に相談することをおすすめします。
また、生活習慣病予防に役立つカリウムや食物繊維も含まれますが、過剰摂取をすると高カリウム血症や下痢の副作用を引き起こす可能性もあります。
春菊は風邪の予防に役立つβカロテンや、体作りに欠かせないカルシウム・鉄、香り成分のαピネンなどを含む食材です。
独特な香りやクセのある味が苦手だけど、栄養価の高い春菊を上手に摂り入れたい!そんな方に知ってほしい、以下の項目について紹介します。
この記事を読めば、1日の適量と、効率よく春菊の栄養成分が摂れる食べ方や独特の香りを抑える方法が分りますよ。
さらに、そのまま生でも食べれる新鮮な春菊の見分け方もご紹介しますので、ぜひご覧ください!
目次
春菊は栄養豊富!メリットと食べ過ぎ注意の成分
ビタミンやミネラルを多く含む春菊は、風邪予防や生活習慣予防に期待がもてる栄養価の高い野菜です。
しかし、食べ過ぎるとビタミンKやカリウムの過剰摂取により、疾患の治療に妨げになるなど、体に悪い影響を与える場合があるため注意が必要です。
春菊に含まれる栄養成分の中で含有量が多くて体にメリットがある、もしくは食べ過ぎにも注意したい成分は以下のとおりです。
栄養成分 | 春菊の含有量 (※1) |
成人の1日の目安量(※2) | |
---|---|---|---|
男性 | 女性 | ||
ビタミンA(μg) レチノール活性当量 |
380 | 850 | 650 |
ビタミンK(μg) | 250 | 150 | 150 |
カリウム(mg) | 460 | 2,500 | 2,000 |
カルシウム(mg) | 120 | 800 | 650 |
鉄 (mg) | 1.7 | 7.5 | 6.5 |
食物繊維(g) | 総量 3.2 水溶性 0.8 不溶性 2.4 |
21 | 18 |
流通されている春菊の一束の重さは平均で約200gです。(※3)
半束の100gだけでも、ビタミンKは1日の目安を上回り、ビタミンA(レチノール活性当量)は1日の目安量5割ほどを補えますね。
春菊にはβカロテンという色素成分が豊富に含まれており、体内でビタミンA作用を発揮してさまざまなメリットが期待できます。(※4)
「食べる風邪薬」!風邪予防に役立つβカロテンと香り成分
春菊は粘膜や免疫機能正常化に役立つβカロテンが豊富に含まれていることから、「食べる風邪薬」と呼ばれています。
【今が旬】春菊はβ-カロチン、ビタミンCなどの栄養素を豊富に含んでいて、抵抗力を高める働きがあるため「食べる風邪薬」とも言われています!春菊を肉や魚の入った鍋に入れると、動物性食品の脂質の働きで、β-カロチンの吸収が高まります!温かい鍋が食べたいなぁ🍲https://t.co/uuiwd8dGGJ pic.twitter.com/dVmq9wPqUe
— JA新潟中央会 (@JA_niigata_cyuo) December 22, 2020
- 免疫機能を正常に保つ
- 口、鼻、喉などの粘膜を丈夫にする
- 皮膚の新陳代謝を高め、美肌を保つ
ほかにも、香り成分のαピネンやペリルアルデヒドなどは、咳や痰の症状を抑えるほかに、リラックス効果や胃腸の消化吸収を促すはたらきもあります。(※6)
ただし、春菊の香りは独特なので苦手な方もいますよね。おすすめの食べ方については後ほどご紹介しますね。
ほかにも春菊には骨粗しょう症予防にも役立つ成分が含まれています。
健康な骨形成をサポートするビタミンKとカルシウムも多い
春菊は健康な骨を作り、骨粗しょう症予防に欠かせないカルシウムとビタミンKを多く含みます。
カルシウム | ・骨や歯の主な主成分 ・筋肉の収縮や精神を安定させる |
---|---|
ビタミンK | ・血液凝固作用 ・カルシウムの骨の沈着作用を促し、体外排出を抑える |
しかし、ビタミンKの過剰摂取は、血栓を予防するワーファリン剤の効能を弱める可能性があるため注意しましょう。
ほかにも生活習慣病予防に期待できる栄養素も多く含まれていますよ。
栄養価が高くて生活習慣病予防に役立つ
春菊は生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧症)予防に期待がもてる、カリウム・食物繊維などの栄養成分を含みます。
カリウム | 高血圧を予防 | |
---|---|---|
食物繊維 (※9) |
肥満予防に役立つ | |
不溶性食物繊維 | ・便のかさを増やし、 腸を刺激して便通を促進 ・よく噛んで食べ過ぎを防ぐ |
|
水溶性食物繊維 | 食後の血糖値急上昇を抑制 | |
クロロフィル (葉緑素) |
・コレステロール値を抑制 ・老廃物を付着させ、体外へ排出する ・肝臓の解毒作用を促す |
|
クロロゲン酸 ケルセチン (ポリフェノール) |
・抗酸化作用によりがん予防、老化を防ぐ ・血液の流れをよくする |
ただし、腎疾患がある方が食べ過ぎるとカリウムの過剰摂取により高カリウム血症のリスクがあります。
また、食物繊維は下痢を起こす可能性があるため食べ過ぎに注意が必要です。
では、春菊の食べ過ぎは、体にどんな悪影響が起こるのか、原因となる栄養成分とその症状について具体的にみていきましょう。
春菊の食べ過ぎでデメリットになる栄養成分の影響
春菊を食べ過ぎると、ビタミンKの過剰摂取による副作用でワーファリン剤の効能を弱めてしまう場合や、腎機能低下している方はカリウムの影響で高カリウム血症を起こる場合があります。
また、食物繊維の影響で下痢を招く場合やアレルギー反応を生じる可能性があります。
まずは、春菊に豊富に含まれるビタミンKの注意点について確認しましょう。
ビタミンKの過剰摂取はワーファリン剤の効きを弱める可能性がある
ワーファリンは、血管内の血栓予防のために血液を固まりにくくする薬です。
一方、ビタミンKには血液の凝固を促すはたらきがあるため、過剰摂取になると薬の効能を弱めてしまう恐れがあります。
ワーファリンを服用している方は、ビタミンKの摂取上限量は1日250μgと定められています。(※10)
ほかにも、腎機能が低下しているに方が注意したいカリウムも多く含まれています。
腎機能が低下している方は高カリウム血症の危険性がある
腎機能が低下している方がカリウムの過剰摂取になると、体の脱力感やしびれ、不整脈など心臓の機能に異常をきたす高カリウム血症を引き起こす可能性が高くなります。(※11)
現在の症状に応じたカリウムの摂取量をしっかり管理しましょう。
カリウムは水に溶ける性質があるため、茹でる調理法がおすすめですよ。(※12)
ほかにも、春菊はアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
春菊でアレルギー反応を起こす場合も
キク科である春菊は、唇や口腔内にかゆみや腫れなどがあらわれる、口腔アレルギー症候群を引き起こす場合があります。(※13)
口腔アレルギー症候群の原因は、春菊とキク科の花粉に類似した物質といわれています。
そのため、春菊で起こる食物アレルギーとキク科植物で起こる花粉症は関連があると考えられています。
ほかにも、春菊に含まれる物質に対するアレルギー反応で、かゆみや赤みがでる皮膚炎を起こす場合があるようです。(※14)
今日、仕事で妙に腕や手の甲がかゆいなぁ…って思ったら、あれだ。春菊だわ。けっこう洗っててアク?が出てたから。家で使うより大量に洗うからなぁ…職場に、仕事してて人参でアレルギー出たって人もいたし。今度から春菊洗いは避けていこう…
— sakurash(´・ω・`) (@sakurash) February 12, 2019
このような症状を繰り返しあらわれた場合は、春菊アレルギーの疑いがあるため、一度アレルギー検査を受けられるとよいでしょう。
また、胃腸の弱い方は食物繊維の影響によって、下痢を起こす可能性もあるようです。
胃腸の弱い方は食物繊維で下痢の可能性も
食物繊維の過剰摂取は、下痢を起こす場合があります。(※15)
実際に、春菊が原因で下痢を起こしてしまう方もいるようです。
春菊食べたら下痢なった…
— aki (@AK1NO0502) March 9, 2021
春菊には不溶性食物繊維も含まれるため、胃腸の弱い方は刺激を受けて下痢を起こす可能性があります。
しかし、春菊は胃腸の消化吸収を促すはたらきがある香り成分を含んでいるため、とりたてて消化が悪い食べ物ではないといえます。
下痢しやすいからとためらわず、食べ過ぎに注意しながら摂り入れてくださいね。
それでは、春菊の食べ過ぎでこのようなデメリットを生じない、適量を確認していきましょう。
春菊の食べ過ぎにならない適量やおすすめの食べ方・見分け方
春菊の食べ過ぎにならない適量は、体に悪い影響を与える可能性があるカリウム、ビタミンK、食物繊維が過剰にならない30gです。
春菊の効率よい食べ方は、調理による栄養素の損失が少ないそのまま生で食べるのがよいでしょう。生で食べるに新鮮な春菊の見分けることも大切です。
適切な摂取量30gはビタミンKを目安に
春菊に最も多く含まれるビタミンKを考慮すると、目安量(150μg/日)の半分(75μg)なら過剰摂取の心配が少ないと考えられます。
春菊のビタミンK含有量は100gあたり250μgなので、1日30gを目安に食べるとちょうどよい計算になります。
ビタミンKの過剰摂取に心配がない場合でも、栄養の偏りにならないために、1日の目安量を超えない30gが望ましいです。
それでは、春菊の効率よい食べ方をみていきましょう。
春菊の栄養価を効率よく取り入れるおすすめの食べ方
春菊はえぐみ(アク)が少なく生でも食べれる野菜です。おすすめの食べ方をまとめました。
- そのまま生で食べる
- 葉に苦みがあるので生で食べるか、加熱は短めにする
- βカロテンの吸収を良くする油と一緒にとる
春菊の葉は、加熱しすぎると苦みを増すため、苦みや香りが苦手な方は生で食べるか、10秒~20秒を目安に茹でるのがおすすめです。(※16)
独特の香りが苦手な方は、衣が香りを閉じ込めてくれる天ぷらにするといいでしょう。
他にも、春菊と相性が良い栄養成分を含む食材と組み合わせるのもいいですね!
貧血予防に!ごま油を使った春菊のサラダ
春菊に多く含まれるβカロテンは油と、鉄はビタミンCとの相性が良いです。
貧血予防に期待がもてる鉄分は、ビタミンCと一緒にとると効率良く摂取できます。(※17)
ダイエットにおすすめ春菊の豚しゃぶ
肥満予防に期待がもてる春菊の食物繊維との相性を考えて、エネルギー代謝を助けるビタミンB1を含む豚肉を合わせたレシピです。(※18)
美味しく食べるために、新鮮な春菊の見分け方と適した保存方法についてチェックしましょう!
新鮮な春菊の見分け方と適切な保存方法
新鮮な春菊の見分け方は以下になります。(※19)
- 葉:濃い緑で根元まである(黄色はNG)
- 茎:ハリがあり太すぎない(芯が白いのはNG)
- 切り口:みずみずしい(乾燥しすぎはNG)
- 香り:強い
春菊の保存は、乾燥が大敵なため、みずみずしさをキープすることが大切です。
保存方法は、湿らしたキッチンペーパーなどで包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫に立てて入れるようにしましょう。
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結論|春菊は食べ過ぎず上手に栄養摂取しよう
春菊の食べ過ぎはビタミンKやカリウムの過剰摂取により、疾患の治療に妨げになるなど、体にデメリットを起こす可能性があるため注意が必要です。
しかし、適量を守れば、風邪予防や生活習慣予防など健康効果に期待がもてる優れた野菜です。
味や香りにクセがあり、好き嫌いが分れますが、食べ方を工夫することで食べやすく、効率よく栄養を摂れることができます。
おすすめの食べ方や新鮮な春菊の見分け方を参考にしていただき、お気に入りの食べ方をみつけて下さいね。
参考資料
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※1 しゅんぎく/葉/生 – 日本食品標準成分表2020年版 | 食品成分データベース(文部科学省)
※2 三大栄養素 日本人の食事摂取基準(2020年版)より | 栄養成分ナビ
※3 食材の目安量 | レシピ大百科(味の素パーク)
※4 β-カロテン当量とは | 栄養成分百科 (グリコ)
※5 β-カロテン | わかさの秘密
※6 春菊の豆知識|みなとの野菜大辞典
※7 骨がよろこぶ栄養素とは?|医療法人法人錦秀会 栄養部
※8 今月の野菜「しゅんぎく」|独立行政法人農畜産業振興機構
※9 食物繊維の分類と特性|大塚製薬
※10 ワーファリンを服用している時に併用注意の食品について | 薬の宅配みね薬局 在宅センター 浦添市
※11 高カリウム血症とは| 栄養素から見た腎臓〜腎由来のさまざまな血液中の成分の異常 | ADPKD.JP
※12 今月の食材【しゅんぎく】|食事のポイント|MediPress
※13 花粉症と口腔アレルギー症候群について | ゆたか倶楽部
※14 かぶれ(接触性皮膚炎)とは|かじもと皮膚科医院
※15 食物繊維 | すずらん食通信(すずらん薬局グループ)
※16 目指せ野菜博士!春菊の巻 | 東京多摩青果株式会社
※17 鉄 | わかさの秘密
※18 豚肉に豊富なビタミンB1の働きは? | 公益財団法人日本食肉消費総合センター
※19 [春菊の保存]袋のままはNG!正しく保存してサラダで食べる | ベジデイ(カゴメ)