【監修者:管理栄養士 南寿華】
タコはタンパク質が豊富でミネラルやビタミンなどを含んでいる栄養価の高い食材と言えます。
しかし、プリン体を多く含有しているので、尿酸値が高い人がタコを食べ過ぎると痛風に繋がるので注意が必要です。
また、タンパク質の摂り過ぎによる消化不良や、ビブリオ菌が原因の食中毒で腹痛が起きる可能性もあります。
健康への悪影響を避けつつ、毎日食べて栄養成分のメリットを活かすために知っておきたい、タコの栄養素が身体に与える影響を以下の項目でまとめています。
痛風の原因となる食材と知って不安を感じている人も、この記事を読めば成分の効果と1日の適量が分かるので、安心して食べられますよ。
タコは刺身や和え物、タコ飯などさまざまな料理がありますが、栄養が効果的に摂れる食べ方もご紹介致します。
管理栄養士・栄養士
目次
タコは栄養豊富!メリットと食べ過ぎ注意の成分
タコには美容や疲労回復などの効果が期待できる、ビタミン類やタウリンが多く含まれており食べ過ぎなければメリットの多い食材です。
過剰摂取に注意したいのがタンパク質で、体作りに欠かせない栄養成分ですが食べ過ぎると内臓に負担がかかり消化不良を引き起こすおそれがあります。
また、体内の水分調節に欠かせないカリウムや、細胞の代謝に欠かせないプリン体も多く含まれますが、腎機能が低下している方や尿酸値が高い方は体調悪化につながるおそれがあります。
栄養成分名 | まだこ(茹で) |
---|---|
エネルギー | 91kcal |
タンパク質 | 21.7g |
亜鉛 | 1.8g |
カリウム | 240mg |
ビタミンE | 1.9mg |
ナイアシン | 1.9mg |
ビタミンB12 | 1.2μg |
まずは、美容や健康維持に欠かせないタコに含まれるビタミン類の特徴を紹介します。
ビタミン類が身体の働きを正常に保つ
タコ100g中に多く含まれているのがビタミンE、ナイアシン、ビタミンB12の3つです。
ビタミンEとナイアシンは耐用上限量が設定されていますが、タコの含有量なら過剰摂取の心配はありません。
ビタミンEは老化防止につながる
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種で、抗酸化作用があることがよく知られています。
細胞膜の酸化を防ぐので、老化防止が期待できるのです。また動脈硬化や血栓の予防にもなります。
皮膚の新陳代謝を高め、バリア機能を保つ働きもあると言われているので、美容効果も期待できるのではないでしょうか。
ビタミンEは骨粗しょう症のリスクなど過剰摂取のデメリットがあるため耐用上限量が設定されていますが、通常の食生活だけなら問題になりません。(※2)
ナイアシンは補酵素として体内で活躍
ナイアシンはビタミンB群の一種で、水溶性ビタミンになります。
ナイアシンは脂質・糖質の分解、ホルモンの生成など体内で幅広い働きを持つ栄養素です。
皮膚や粘膜の保護にも役立つので、皮膚に炎症が起きているときには積極的に摂りたい栄養素ですね。
ナイアシンは過剰摂取の副作用として消化不良や下痢などが起こるため耐用上限量が設定されていますが、食品からの摂取だけなら心配ありません。(※3)
ビタミンB12は血液を作るのに不可欠
ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、体内の機能を正常に維持するのに欠かせないビタミンと言えます。
特に血液中の赤血球が作られる際に必要になる成分なので、ビタミンB12を摂ることで貧血予防につながります。(※4)
また眼精疲労の改善や疲れにくくする働きも期待できるので、パソコンやスマホをよく見る方にもおすすめです。
それから、タコに含まれているタウリンにも疲労回復につながることが知られています。
アミノ酸の一種であるタウリンは疲労回復に役立つ
タウリンは魚介類や軟体動物に多く含まれ、コレステロールの低下、高血圧予防の効果などが期待できます。
交換神経を抑える作用もあることから、高血圧の予防に効果があるとも言われています。
さらに、タウリンはアルコール分解を促し、肝機能を高めるので二日酔いに効果的ですよ。
タウリンは特に筋肉に多く含まれていますが、身体のあらゆるところに存在し、体内で重要な働きをするアミノ酸の一種です。タウリンを補給することで、疲労回復に効果が期待できます。
滋養強壮ドリンクに「タウリン〇mg」と使用されているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?
タコ100g中には、タウリンが830mg含まれています。(※5)
タウリンの1日の摂取目安量は500~2000mgなので、タコは疲れ気味の身体には嬉しい食材と言えるでしょう。(※6)
タウリンは目の網膜にも含まれていることから、眼精疲労の回復にも役立つでしょう。
また、タコに含まれる亜鉛は筋肉だけでなく身体の成長を促し、免疫を守る働きがあります。
亜鉛が髪や皮膚・骨の成長を促し免疫を守る
亜鉛は私たちの筋肉や骨・目・皮膚・髪などの成長を促し、免疫を守る働きがあります。
亜鉛が不足すると免疫力低下、食欲不振、貧血などの症状が表れやすくなるので、積極的に摂りたい栄養素ですね。
亜鉛は過剰摂取で前立腺肥大や吐き気、下痢などのデメリットがあるため耐用上限量が設定されていますが、タコの含有量だけなら心配ありません。(※7)
亜鉛と同じミネラル成分のカリウムも多く含まれていますが、体調によっては過剰摂取に注意が必要です。
カリウムは利尿作用とむくみ防止効果が期待できる
カリウムはナトリウム(塩分)の排出を促し、体内の水分を調節する働きがあります。これが利尿作用ですね。
また、身体の余分な水分を排出してくれるので、むくみ改善にもつながります。(※8)
カリウムが多いのは野菜ですが、魚介類・肉類にも比較的多く含まれていますよ。
健康な方は問題ありませんが、腎機能が低下している方はカリウムの過剰摂取で高カリウム血症のおそれもあるので注意しましょう。
他にも体調によって摂取量に注意したいプリン体も多く含まれています。
プリン体は細胞の代謝に欠かせない栄養成分
プリン体にはタンパク質やビタミンのような働きはありませんが、身体の細胞の遺伝子を構成している大切な成分です。(※9)
体内でも生成できますが、不足分は食べ物から取り入れることになります。
タコにはプリン体が多く含まれているため、過剰摂取で痛風のリスクが高くなるので注意が必要です。
タコに多く含まれる栄養成分で体作りに欠かせないタンパク質についても摂取量に注意が必要です。
ダイエットや体作りに役立つタンパク質も豊富
タコの栄養成分表を見てみると、カロリーが低いのに対してタンパク質が多いことが分かります。
タコは高タンパク&低カロリーですので、ダイエットや筋トレをしている人に適していると言われています。
ただ、食べ過ぎると内臓に負担がかかって消化不良によって腹痛が起きる場合もありますので注意しましょう。
タコに含まれる栄養成分はメリットも多い一方で、食べ過ぎると逆にデメリットになる場合があります。
具体的にどのような影響があるのか、体調不良を引き起こさないためにも詳しく確認しておきましょう。
タコの食べ過ぎでデメリットになる栄養成分の影響
タコはカロリーが低く高タンパクで栄養豊富ですが、食べ過ぎると内臓に負担がかかって消化不良で腹痛の症状を起こす場合があります。
また、タコに含まれるプリン体を過剰に摂り過ぎると痛風になってしまう危険性もあるのです。
まずはタンパク質の摂り過ぎによるデメリットから見ていきましょう。
タンパク質の摂り過ぎは消化不良の原因になる
タンパク質の摂り過ぎは内臓に負担がかかり、また消化しきれず胃腸に悪影響を与えてしまう可能性があります。(※10)
動物性のタンパク質は摂り過ぎると、吸収しきれなかった分が腸内環境を悪くする原因になります。
また、腹痛や下痢が酷い場合は、腸炎ビブリオ菌による食中毒の可能性も考えられるので、症状が長引く場合は医師にご相談ください。(※11)
次に、タコに多く含まれるプリン体の影響で、食べ過ぎると痛風になる可能性について見ていきましょう。
プリン体を摂り過ぎると痛風になりやすい
タコの食べ過ぎによるプリン体の過剰摂取は痛風になりやすく、注意が必要です。
プリン体が体内で分解されると尿酸として体外に排出されますが、過剰摂取すると血液中の尿酸値が高くなって高尿酸血症になります。
それが長い間続くと、関節部分に激痛を伴う炎症が起きます。これが痛風です。(※12)
プリン体はうま味の強い食材に含まれており、タコ以外にも肉や魚介類に多く含まれているので、尿酸値が高い方や毎日食べる人は注意しましょう。
尿酸値が高い方だけでなく、腎機能が低下している方も注意が必要です。
腎機能が低下している方は高カリウム血症に注意
腎機能が低下している方など、カリウムの摂取制限が必要な方はタコの食べ過ぎに注意が必要です。
症状によっては1日のカリウム摂取量を1500mg以下にしなければいけないので、必ずかかりつけ医の指導に従ってください。(※13)
タコを食べ過ぎると、消化不良や食中毒、痛風など身体に悪い影響が出るのは避けたいですよね。
タコの食べ過ぎにならない適量と、健康的に食べる方法を紹介します。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
タコを食べ過ぎにならない1日の適量と健康的な食べ方
タコの食べ過ぎにならない1日当たりの適量についてエビデンスを確認できませんが、デメリットになる栄養素の目安量を基準とすると、1日当たり100gを目安にするのがおすすめです。
タコの食べ過ぎにならない1日の摂取量は、タンパク質とプリン体に注目して考えてみましょう。
1日当たりの摂取量はタンパク質とプリン体を考慮しよう
タンパク質の平均必要量は、1日あたり18歳以上の男性が50g、女性が40gです。(※14)
タコ100g中のタンパク質は21.7g含まれているので、1日の約半分量を摂取できます。
プリン体については、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインで1日400mgを目安に制限されています。(※15)
タコ100g中に含まれるプリン体は137.3mgですので、およそ3分の1が含まれています。(※16)
以上のことから、他の食品からも栄養を摂取することを考えるとタコの摂取量は1日100g程度にとどめておくと大丈夫ですね。
タコ100gの目安は、太めの足1本分と覚えておくと良いでしょう。(※17)
尿酸値が高めの人や、胃腸が弱い人は100gより少なめがおすすめです。
また、子供がタコを食べすぎると消化不良を起こしてしまうことがあります。
特に3歳未満の子供は歯が生え揃っていないため噛み切る力が弱く、胃腸での消化に時間がかかってしまうためです。(※18)
たこは消化に時間がかかるため、3歳以上でも食べすぎると消化不良を起こしやすくなります。食べすぎには注意しましょう。
- 加熱前に叩いて柔らかくしておく
- 細かく刻む、またはすりつぶす
適量を守りつつ、タコに含まれる栄養を効率よく補給するには食べ方を工夫しましょう!
栄養を効果的に摂るには水溶性・脂溶性の特性がポイント!
タコは適量を守れば亜鉛やビタミンなど豊富な栄養が摂れます。
タコは刺身にしても美味しいですが、水溶性ビタミンであるビタミンB12やナイアシン、亜鉛は水に溶けやすい成分です。
効率的に栄養を摂るには、煮汁ごと食べられる料理が向いています。
また、タコに含まれるビタミンEは脂溶性なので、油と一緒に摂ると吸収率が良くなります。
こちらはタコのアヒージョ。オリーブオイルとニンニクで煮込む料理を缶詰で手軽に楽しめますよ。
結論|タコは食べ過ぎに注意して栄養摂取しよう
タコは高タンパク低カロリーでミネラルやビタミンが多く栄養豊富な食材です。
しかし、食べ過ぎるとタンパク質の摂り過ぎでお腹の調子が悪くなり、プリン体の過剰摂取で痛風へのリスクが高まります。
タンパク質・プリン体の1日の摂取目安量を考えると、タコを毎日食べるなら1日当たり100gを目安にすると良いでしょう。
尿酸値が高めの人や胃腸が弱い人は、100gよりも少なめがおすすめです。
そしてタコを調理するときは、しっかり水洗いをして加熱すると食中毒の危険を避けられます。
タコは歯ごたえが良くてうま味のある食材なので、適量を目安にして上手く食生活に取り入れましょう。
参考資料
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※1 魚介類/<いか・たこ類>/(たこ類)/まだこ/ゆで|食品成分データベース
※2 ビタミンEの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※3 ナイアシンの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※4 ビタミンB12|成分情報|わかさの秘密
※5 タウリン-栄養のはなし|ふたば薬局
※6 タウリンの効果と疲労に作用する仕組み|大正製薬
※7 亜鉛の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※8 多くの人が勘違い!?むくみの本当の原因と効果的な解消法|サントリーグッドエイジングラボ
※9 プリン体ってなに?|明治ヨーグルトライブラリー
※10 タンパク質の摂り過ぎは危険!?過剰摂取による影響とは|江崎グリコ株式会社
※11 食品衛生:食中毒について(腸炎ビブリオ食中毒)|三重県ホームページ
※12 痛風とはどんな病気?|公益財団法人 痛風・尿酸財団
※13 慢性腎臓病の食事療法 | 東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター
※14 三大栄養素のタンパク質の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット
※15 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン|公益財団法人 痛風・尿酸財団
※16 食品のプリン体含有量|両国東口クリニック
※17 食材の目安量|レシピ大百科(レシピ・料理)|味の素パーク
※18 堤先生の子供の栄養学|株式会社にんべん