【監修者:管理栄養士 有田聡子】
大葉(しそ)はβカロテンを多く含むのが特徴で、ほかのビタミンやミネラルも豊富なうえ健康効果が期待される注目の栄養素を持つ体に良い食材です。
大葉は食べ過ぎても、体に害になるほどの大きな副作用がないため、食べる量にはそれほど気をつけなくても良いといわれます。
しかし、大葉を食べ過ぎると皮膚が黄色っぽくなるという噂が…。また、まれに手がかぶれるなどの症状も報告されているので少し心配する方もいるようです。
安心して大葉を食生活に生かせるように、次のことを探ってみました。
この記事を読むと、大葉のうれしい体へのメリットや、1日に何枚くらいが適した摂取量なのかがわかりますよ。
大葉の食べ過ぎによるデメリットや食べるときの注意点を調べ、詳しくご紹介します。
無理のないよう適量で食べても大葉の栄養素をしっかり引き出せる、効果的な食べ方もご紹介していますので、ぜひご一緒に見ていきましょう。
管理栄養士・栄養士
目次
大葉の栄養とメリット・食べ過ぎに注意したい成分
大葉には、フィトケミカルと呼ばれる機能性成分としても注目され、体内でビタミンAとしてはたらくβカロテンが豊富に含まれています。(※1)
さらに、大葉はビタミンB群・C・E・Kといったビタミンのほか、カリウム・鉄・カルシウムなどのミネラルやα-リノレン酸も含む、栄養豊富な緑黄色野菜です。(※2)
まず、豊富な栄養素から、大葉を食べると体にどんな効能が期待できるのか見てみましょう。
栄養素 | 体内でのはたらき |
---|---|
βカロテン | ・体内でビタミンAに変わる ・抗酸化作用(※4) ・皮膚・粘膜・目の機能の保護 ・免疫を強化 |
ビタミンB群 (※5) |
・糖代謝を促進し疲労回復を助ける ・たんぱく質や脂肪酸の合成 ・神経伝達に関わる ・免疫を強化 |
ビタミンC | ・鉄の吸収を助ける ・抗酸化作用 |
ビタミンE | ・抗酸化作用 |
ビタミンK (※6) |
・骨形成を促す ・血管を丈夫にする |
鉄 | ・赤血球のヘモグロビンを作り貧血を防ぐ |
カルシウム | ・骨や歯を作る |
カリウム (※7) |
・利尿効果 ・血圧を正常化 |
α-リノレン酸 (n-3系多価不飽和脂肪酸) |
・アレルギー症状を緩和 ・体内でEPAやDHAを作る ・LDLコレステロール・中性脂肪を減らす (血液サラサラ効果) ・血圧を下げる |
大葉はα-リノレン酸のはたらきで高血圧・動脈硬化・脳梗塞などの予防や、βカロテンのはたらきでさまざまなダメージから体を守り、病気や老化の予防にも役立ちますよ。
そして、大葉は健康に役立つ特有のポリフェノールを含むことからも注目されているので、どんなはたらきを持つのか見てみましょう。
栄養素だけじゃない!ポリフェノールに注目
大葉にはロスマリン酸、ルテオリン、ペリルアルデヒドという3種類のポリフェノールが多く含まれます。
これらの成分にどんな効果が期待できるのか、見てみましょう。
ロスマリン酸 |
・アレルギー症状を緩和 ・抗酸化作用 |
---|---|
ルテオリン |
・アレルギー症状を緩和 |
ペリルアルデヒド |
・強い抗菌・殺菌作用 ・防腐・防虫効果 ・食欲増進・消化促進 ・発汗・利尿作用 ・解熱・解毒効果 |
古来から、大葉が薬効のある植物として使われてきたことにもうなずけますね。
食欲のないときや暑い季節には、爽やかな香りとともに食欲を高め、消化も良くしてくれます。
大葉を刺身の横に添えると、彩りだけでなく殺菌効果もプラスできるのです。
大葉は栄養価が高く、健康に良い栄養成分を含むのでたくさん食べたくなりますが、食べ過ぎるとどうなるのか、副作用が心配ですよね。
しかし、大葉の栄養素は、過剰症を引き起こす心配がある上限値のあるものも、仮に1kg食べても心配ない含有量です。
ところが、大葉を食べ過ぎると体調を崩す場合も確かにあり、「しそは体に悪い」といわれることも…。
そこで、大葉を食べ過ぎて起こるデメリットにはどんなものがあるのかと、ほかに過剰摂取が心配な成分はないかなど、詳しく見てみましょう。
大葉を食べ過ぎるとどうなる?栄養成分の過剰摂取による副作用は
大葉を食べるときの注意点を探るため、食べ過ぎによる副作用について、症状や原因などを見ていきましょう。
まず、大葉に含まれる栄養成分のうちβカロテンを過剰摂取すると起こりうるデメリットについて紹介します。
βカロテンの過剰摂取で皮膚が黄色っぽくなる
大葉を食べ過ぎてβカロテンを多量に摂り続けても健康に害はありませんが、皮膚が黄色っぽく見えることがあります。(※9)
大葉に含まれる栄養素の過剰摂取の影響が考えられるデメリットは、基本的にはこの症状のみです。
ほかに副作用と思われがちな、食べ過ぎによる下痢の症状は、実は食中毒を起こしている可能性があるので詳しく見てみましょう。
下痢は付着した細菌の影響による食中毒の可能性も
生の大葉を食べ過ぎて下痢をしたという人がいますが、大葉自体には毒性がないので、良く洗えていないことが原因で食中毒を起こしているかもしれません。
大葉の表面には土壌などから、大腸菌やセレウス菌などの食中毒を引き起こす細菌が付着していることが多いのです。(※10)
また、大葉を多く食べようと思うと残留農薬も心配なので、しっかり水洗いする必要がありますが、流水だけでは落とし切れない場合があります。
そこでおすすめしたいのが、酢水につけて置く方法です!
酢を5~20倍の水で薄めて10~15分つけておくと、殺菌効果が期待できます。(※11)
健康のため大葉を毎日食べているのに、なんだか体調が優れないという場合は、次のように栄養バランスが崩れているのかもしれません。
栄養バランスが崩れて体調が崩れる
どんな食品でも同じものばかりを大量に食べ続けていると、ほかの食品を食べられず摂取する栄養素が片寄り、食事全体の栄養バランスが崩れて体に不調をきたすこともあります。
大葉も食べ過ぎること自体がデメリットになりえるため、食事の一部として適量摂取するのがおすすめです。
大葉の食べ過ぎの影響だと思っていたら、実は違ってほかの原因だったという場合もあるので見てみましょう。
手がかぶれるのは食べ過ぎではなく接触皮膚炎
「大葉やしその食べ過ぎで手がかぶれる」という噂があります。
ただし、手がかぶれたのはたくさん食べたのが原因ではなく、大葉に含まれる何らかの物質が肌に直接触れることで皮膚炎を起こしているようです。(※12)
タイミング的に食べ過ぎたからと勘違いする人もいますが、触れただけでかぶれる場合があるのです。
以前に大葉を触ってかぶれた経験がある方は、念のため素手で触らないようにしましょう。
ここまでで、大葉の栄養からのメリットや食べ過ぎのデメリット、食べるときの注意点がわかったので、次に1日に食べる量はどれくらいが適当かを解説していきますね。
大葉の食べ過ぎにならない摂取量と効果的な食べ方
大葉には食べ過ぎても体調不良を引き起こすほどの成分が含まれていないため、摂取量の上限がありません。
過剰摂取で皮膚が黄色くなるデメリットがあるβカロテンも、野菜から摂る場合はビタミンAとしての過剰症の心配はないとされていて、上限量は定められていません。
とはいえ、毎日大量に食べ過ぎると栄養バランスの乱れの心配もあるので、ある程度は適量の目安を知っておきたいものですよね。
そこで、ビタミンAの推奨量などを目安にした1日の適量の考え方について紹介します!
大葉の適量は1日何枚?
大葉の効果を期待して毎日食べるなら、1日の適量は20枚くらいがおすすめです。
まず、特に多く含むβカロテンをビタミンAの推奨量まで摂ると考えると、次のように、女性で20~30枚、男性だと50~60枚という結果になりました。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
平均摂取量(※13) (μg/日) (レチノール活性当量) |
564 | 532 |
推奨量(※14) (μg/日) (レチノール活性当量) |
850~900 | 650~700 |
不足量 (μg) |
286~336 | 118~168 |
大葉に換算 (g) |
32.5~38.2 | 13.4~19.1 |
大葉の枚数 (枚) (※1枚0.6g) |
54~63 | 22~31 |
※スーパーで購入した標準的な大きさの大葉を量ると10枚で6gだったため、1枚を0.6gとして計算しています。
ちなみに過去のテレビ番組では10枚でアレルギー症状の改善、20~30枚で血糖値の改善や美肌効果などが改善できると紹介されました。
大葉20枚を12gとすると、βカロテンはレチノール活性当量(ビタミンAとしてはたらく量)にすると110μgが含まれるので、推奨量の1割以上が摂れ、不足分の多くを補充できます。
以上のことから、健康維持の目的や毎日続けて食べることを考えると、20枚くらいが適量と考えました。
大葉の適量とした枚数は目安で多く食べても害はないのですが、毎日無理なく摂れると効率が良いですね!
毎日適度に食べた場合でも栄養成分を効率良く摂れるおすすめの食べ方をご紹介します。
栄養を逃さない食べ方で効果をUP!
大葉の栄養を効率良く摂るには、油を使う、または脂質を含む食材と合わせるのがおすすめです。
大葉の天ぷらは風味が楽しめるだけでなく、理にかなった料理ですね。
サラダならオイルを含むドレッシングやマヨネーズを使い、肉や魚に巻いて焼いたり揚げたりするのもおすすめの食べ方です。
オリーブオイルを使って作る大葉ペーストは大葉の量が多く食べられ、パスタソースなどに使えて人気がありますよ。
大葉の栄養を逃さないよう、新鮮なまま日持ちさせる保存方法やレシピも紹介しているので参考にしてください。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
結論|大葉は食べ過ぎても大きなデメリットがない
大葉は食べ過ぎても体に害になるほどの大きなデメリットがなく、βカロテンをはじめα-リノレン酸も摂れ、栄養が豊富なうえにポリフェノールも多く含み、体に良い効能が期待できます。
そのため、多く食べても構いませんが、過剰になったβカロテンは排泄されるので適量を毎日摂る方が効果的です。
魅力的な栄養が豊富な大葉を料理に使えば、無理なく健康効果が得られますよ。
薬味としてはもちろん、ぜひいろいろなレシピに活躍させてくださいね。
参考資料
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※1 注目の成分「フィトケミカル」とは?種類と機能、さらに効果的に摂るコツ|ハウス食品グループ本社株式会社
※2 食品成分データベース・日本食品標準成分表2020年版(八訂)しそ/葉/生|文部科学省
※3 わかさの秘密・しそ|わかさ生活
※4 e-ヘルスネット・カロテノイド|厚生労働省
※5 (2)水溶性ビタミン|厚生労働省
※6 ビタミンK|江崎グリコ株式会社
※7 カリウム|江崎グリコ株式会社
※8 健康マネジメント・旬の食材でヘルシークッキング・しそ|自動車総連
※9 ビタミンAの過剰摂取による影響|内閣府・食品安全委員会
※10 洗浄による大葉の細菌数減少に関する調査|株式会社くらし科学研究所
※11 お酢の効果・効能 お酢の便利帳|タマノイ
※12 接触皮膚炎(かぶれ、接触性皮膚炎)の症状・治療法|田辺三菱製薬
※13 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省
※14 栄養成分ナビゲーター・日本人の食事摂取基準(2020年版)より・ビタミンA|江崎グリコ株式会社
※15 教えて、先生!β-カロテンってどんな栄養素?|伊藤園