【監修者:管理栄養士 浜崎保奈美】
山椒には体に必要不可欠な栄養素のミネラルや、冷えの改善など体に良い効能が期待できる辛み成分のサンショオールや精油成分などが含まれています。
でも、食べ過ぎるとサンショオールの副作用で腹痛や下痢の症状が起こる可能性があるので注意しなければいけません。
山椒は調味料として気軽に料理に取り入れやすいので、適量を守って効率よく栄養を摂りたいですよね。
そこで山椒について、次のことを調べてみました。
この記事を読めば山椒を食べ過ぎるとどうなるのか悪影響の具体例が分かり、メリットだけ得るための注意点についても分かります。
山椒の適量を意識して、上手に栄養を取るための方法を一緒に確認していきましょう。
管理栄養士・栄養士
目次
山椒の栄養とメリット・食べ過ぎに注意したい成分
山椒には豊富なミネラルが含まれており、私たちの体を作り正常に動かすために必要不可欠な栄養素として活用できます。
また、山椒独特の辛み成分や、独特の香りとなる精油成分は健康維持にも役立ちます。
その一方で、ミネラルや精油成分の中には過剰摂取によりデメリットが生じる可能性がある成分も存在するので、食べ過ぎには注意しなければいけません。
まずは、山椒に含まれる主なミネラルについて確認してみましょう。
体に必要な栄養素のミネラルが豊富
山椒には豊富なミネラルが含まれており、体に良いメリットが期待できる一方で、過剰摂取により悪影響を及ぼす可能性もあります。
まずは、山椒に含まれるミネラルの種類と含有量を、スパイスの仲間である胡椒と比較してみました。
主なミネラル | 山椒(粉) (※1) |
白胡椒(粉) (※2) |
目安量・推奨量 (※3) |
---|---|---|---|
カリウム (mg) |
170 | 6 | 男性 2,500 女性 2,000 |
カルシウム (mg) |
75 | 24 | 男性 750~800 女性 650 |
マグネシウム (mg) |
10 | 8 | 男性 340~370 女性 270~290 |
鉄 (mg) |
1.0 | 0.7 | 男性 7.5 女性 6.5~10.5 |
※10gあたりの数値で紹介していますが1回あたりの適量はもっと少ないです。あくまでも栄養価の参考値として考えてください。
白胡椒と比較しても、山椒はミネラルが豊富に含まれていることがわかりますね。
ミネラルは私たちの体に欠かせない栄養素ですが、過剰摂取によりデメリットが生じる可能性があります。
〇 主なはたらき | ✕ 過剰摂取のデメリット | |
---|---|---|
カリウム (※4) |
ナトリウムの摂り過ぎを防ぐ 血圧を下げる |
高カリウム血症など (腎機能低下の場合) |
カルシウム (※5) |
骨や歯を構成する | 他のミネラル吸収を阻害など |
マグネシウム (※6) |
骨を丈夫にする | 高マグネシウム血症など (腎機能低下の場合) |
鉄 (※7) |
貧血の予防 記憶力や学習能力の向上 |
吐き気、嘔吐など |
山椒にはミネラルが多く含まれますが実際に食べるのは少量なので、よほど食べ過ぎない限りは過剰摂取によるデメリットの心配はないと考えられます。
ミネラル以外にも山椒に含まれる辛み成分や精油成分などは体に良いメリットが期待できますよ♪
山椒に含まれる辛み成分や精油成分などの特徴
山椒のピリっとする辛さや独特の香りは、辛み成分や精油成分に由来するもので、調味料として風味を楽しめるだけでなく、私たちの健康維持にも役立ちます。
この他にも研究が進められているポリフェノールも含まれており、それぞれ以下のようなはたらきが期待できます。
成分 | 主なはたらき | |
---|---|---|
辛み | サンショオール | 発汗作用 血行や代謝の促進 防腐作用 など |
精油 | リモネン | 血行の促進 |
ゲラニオール | 抗菌作用 | |
ゲラニルアセテート | 鎮静作用 | |
抗酸化物質 | ポリフェノール | 抗酸化作用 動脈硬化の予防 など |
サンショオールは冷えを解消し体を温める効果が期待できることから、大建中湯(ダイケンチュウトウ)や当帰湯(トウキトウ)など漢方薬の原料として使われています。(※9)
他にも、胃腸の働きを整える効能も期待できるので、食べ物の消化が活発になるメリットもあります。(※10)
このように、山椒は体に良い影響をもたらす栄養成分が含まれている一方で、食べ過ぎによりデメリットが生じる場合があります。
実際に食べ過ぎて不快感を感じた例を確認しながら、どんなデメリットに気をつければ良いのか見ていきましょう。
山椒の食べ過ぎでデメリットになる栄養成分と症状
山椒に多く含まれるミネラルの影響は風味付け程度なら問題ありませんが、腎機能が低下している方は高カリウム血症などの心配があるので食べ過ぎないように気をつけましょう。
健康な方でも注意が必要な栄養成分は辛み成分のサンショオールで、体質によっては少量でも腹痛や下痢のような副作用が起きることがあります。
山椒を食べたときに感じるしびれからも分かるように、刺激がかなり強い成分で胃痛にも繋がります。
体に良いはずなのに、食べ過ぎるとなぜ腹痛や下痢になる理由についても確認してみましょう。
摂取量が多いと腹痛や下痢の原因になる
山椒に含まれるサンショオールは胃腸を整える健康効果が期待できますが、実は局所麻酔と同じような働きも持っています。
山椒を食べると舌が軽く麻痺してしびれているのを、ピリピリとした刺激として感じているんですね。
適量ならその刺激で体を温めたり、胃腸の働きを活発にしてくれるメリットになりますが、食べ過ぎると刺激が強すぎて腹痛や下痢など、体の不調に繋がります。
山椒は大丈夫!!
っていうか、辛いのは割と平気なのよ。
次の日お腹が痛くなるだけでww— タケ@王国民 (@x_makidai_x) May 22, 2021
この方は山椒による腹痛を何度も経験しているようです。
食べてすぐは大丈夫でも時間が経ってから腹痛を感じることもあるので、気をつけましょう。
山椒にハマりすぎて毎日下痢
— ジェシ君®︎ (@69seitoshi69) July 19, 2020
ピリピリ感が癖になる山椒ですが、食べすぎるのは気をつけたほうが良さそうですね。
山椒を食べすぎた具体例を見ていると、腹痛や下痢を防ぐにはどれくらいまでなら食べても大丈夫なのかとても気になりますね。
山椒を食べることがデメリットになってしまわない適量と、しっかり栄養をとれる効果的な食べ方も確認しておきましょう。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
山椒の食べ過ぎにならない適量と効果的な食べ方
山椒の食べ過ぎにならない上限量について、症状と山椒の因果関係が解明されていないため適正な摂取量が定められていませんが、一回分の適量は0.2gを目安にしましょう。
そこで、スーパーでよく見かけるS&Bの粉山椒(一瓶12g)を参考に、一振りずつかけるとどのくらいの量になるか考えてみましょう。
一振りは約0.2gで、一回分の適量として商品化もされています。
ただ山椒を食べた時に体の不調を起こす摂取量は、少量でもその時の体調や体質に左右される傾向があるようです。
- 体調を崩している
- 辛いものを食べた時にお腹を壊しやすい
体調不良な時は普段と同じ量よりも少なめの量を使うなど、特に気をつけておきましょう。
でも健康のために山椒を多めに食べようと思っても、粉の山椒を振りかけるだけでは難しいですよね。
そんな時に効果的なのが、実山椒を使った料理です。
山椒というと粉のイメージが強いですが、4~5月にかけては花の部分が花山椒として出荷され、5月中旬~6月頃にかけては青い実の実山椒がスーパーに並びます。
実山椒は煮物や佃煮などの具材になるので、下ごしらえして保存しておけば毎日山椒を食べられますよ。
少し振りかけるだけの粉末の山椒より、一度に食べる量も自然と多くなります。
ただ、調理法に気をつけないと山椒の栄養が無駄になってしまうかもしれません。
栄養を逃さないためにはその特徴に合わせた調理法が大切です。
栄養を逃さずに食べる2つのポイント
山椒に含まれる栄養素をうまく取るポイントはこの2つです。
- 煮汁を捨てない(カリウムを無駄なく補給)
- タンパク質と一緒に食べる(カルシウムを無駄なく補給)
カリウムは水に溶け出しやすい性質があるので、しっかり煮込んで煮汁を捨てずに染み込ませる煮物や佃煮をおすすめします。
カルシウムはタンパク質と一緒に食べると吸収が促進されます。(※11)
山椒料理の材料にタンパク質をたくさん含んでいる食材を使えば、一品で効率よくカルシウムを摂取できますよ。
- 肉
- 魚
- 豆類
- 乳製品
カリウムを逃さず、カルシウムの吸収も促進される、どちらの条件も兼ね備えている料理がちりめん山椒です。
下ごしらえさえできていれば作るのは意外と簡単!
クックパットでも人気のちりめん山椒の作り方を紹介します。
毎日でも食べられる簡単ちりめん山椒
実山椒を使って作るちりめん山椒のレシピです。
山椒の香りをしっかりと感じられる、淡くて上品な京都風な味に仕上がりますよ。
山椒から溶け出たカリウムも全て食べられますね。
ご飯がどんどん進む美味しさですが実山椒はカロリー、糖質ともに高めなので、食べ過ぎには注意しましょう。
ごはんのお供にぴったりなちりめん山椒ですが、材料の実山椒は下ごしらえが必要です。
1年間冷凍保存OK!青山椒の下ごしらえ
ちりめん山椒はもちろん、佃煮やぬか漬けのぬか床にといろいろな料理に活用できるのが実山椒の便利なところです。
手作りが苦手なら、市販のちりめん山椒を取り入れるのもいいですね!
結論|山椒は食べ過ぎに注意して上手に使おう
山椒にはカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルと、サンショオールなどの栄養成分が含まれています。
体質改善など良い効果が期待できますが、食べ過ぎると吐き気やお腹の痛み、下痢など体に悪い副作用が起きる可能性があります。
山椒の適量は体質やその時の体調によって少しずつ違う傾向があります。
粉山椒なら一振り(0.2g)ずつ調整してあなたに最適な量を見つけて、ぜひ食生活に活用してください!
参考資料
※をクリックすると元の位置へ戻ります。
※1 調味料及び香辛料類/<香辛料類>/さんしょう/粉|食品成分データベース(文部科学省)
※2 調味料及び香辛料類/<香辛料類>/こしょう/白/粉|食品成分データベース(文部科学省)
※3 ミネラル 日本人の食事摂取基準(2020年版)より|栄養成分ナビゲーター(江崎グリコ株式会社)
※4 カリウムの働きと一日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※5 カルシウムの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※6 マグネシウムの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※7 鉄|栄養素カレッジ(大塚製薬)
※8 ぶどう山椒とは|budo-sansho.com(有田川町)
※9 山椒|漢方のポータルサイト 漢方ビュー(株式会社ツムラ)
※10 山椒|わかさの秘密(わかさ生活)
※11 カルシウムを上手に摂るために|daieiホームページ(株式会社ダイエー)
※12 魚介類/<魚類>/(いわし類)/しらす干し/半乾燥品|食品成分データベース(文部科学省)