【執筆者:管理栄養士 宍戸恵】
牛脂の食べ過ぎは肥満や脂質異常症の原因に、また腸内環境の悪化など体に悪い影響をもたらすおそれがあります。
ダイエット中や健康志向が高い人の多量な摂取はおすすめしません。
ですが、成分のすべてが悪いものではなく、体に良い影響を与える成分も含まれていますよ!
牛脂に含まれる栄養素や過剰摂取の危険性、調理時の注意点などを以下の項目に沿って紹介していきます。
牛脂 のこと
- 食べ過ぎで起こる健康被害
- 含まれる栄養素
- 飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸とは
- 牛脂を使う際のポイント
すき焼きやステーキで使うことが多いのではないでしょうか。
旨味が豊富なので、牛肉料理を堪能する為にも改めて「牛脂」について正しく知っておきましょう♪
目次
牛脂の食べ過ぎは肥満や脂質異常症の原因に|体に良い成分も
牛肉の脂である牛脂は動物性油脂に分類され、脂質が主成分です。
その為、食べ過ぎは肥満や脂質異常症などの原因になります。(※1)
肥満 | 脂質の過剰摂取 |
---|---|
脂質異常症 | 飽和脂肪酸の過剰摂取 |
腸内環境の悪化 |
中性脂肪やコレステロール値など脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症と呼びます。
自覚症状はほとんどありませんが、脳の血管障害は頭痛やめまいを起こすとも言われています。
また飽和脂肪酸の摂り過ぎは脂質異常症の原因となるほか、腸内環境にもダメージを与えると言われていますよ。
脂質は本来、体のエネルギー源となる・細胞膜を構成する成分となるなど、体に必要な栄養素ではありますが、摂り過ぎには注意が必要です。
カロリーが高く太る原因に
食用油脂にはサラダ油やオリーブオイルのような液状のもの、牛脂やバターなど常温で固形のものがあります。
形状や種類に関わらず1グラム当たり9キロカロリーと、三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)の中でも最も高カロリーです。
また油脂は高カロリーであるだけでなく、「質」も健康づくりを左右します。
飽和脂肪酸の過剰摂取に潜む危険性
脂質を構成している成分に脂肪酸があり、化学式の構造上「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分かれます。(※2)
牛脂をはじめ動物性油脂に多く含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取は、血中総コレステロール上昇に関与し脂質異常症のリスクを高めると言われていますよ。
特徴 | 例 | ||
---|---|---|---|
飽和 脂肪酸 |
動物性油脂に 多く含まれる ・牛脂 ・バター ・ラード など |
ステアリン酸 パルミチン酸 など |
|
不飽和 脂肪酸 |
一価不飽和 脂肪酸 |
オリーブオイル の主成分 |
オレイン酸 |
多価不飽和 脂肪酸 |
植物性油脂や 魚の脂に 多く含まれる |
・リノール酸 ・アラキドン酸 ・DHE ・EPA など |
一価不飽和と多価不飽和の違い
脂肪酸は炭素・水素・酸素から成り立ちます。
炭素と炭素の二重結合が
ない(0個):飽和脂肪酸
1つある:一価不飽和脂肪酸
2つ以上ある:多価不飽和脂肪酸
と呼びます。
基本的に油脂の分類上、液状のものは不飽和脂肪酸が、固体のものは飽和脂肪酸が多く含まれます。
また厄介なのは、飽和脂肪酸は腸内で悪玉菌のエサとなることです。
悪玉菌が優勢となった腸内環境は、動きが鈍くなり便秘や免疫力低下などの原因になると示唆されています。(※3)
上記の理由から食べ過ぎには注意したいものですが、牛脂に含まれる脂質は全て悪ではなく、体に良い影響をもたらす成分も含まれていますよ。
健康づくりを後押しするオレイン酸
動物性油脂の中でも牛脂や豚油(ラード)にはオレイン酸という一価不飽和脂肪酸が多く含まれます。
分類の表の通りオリーブオイルの主成分である脂肪酸で、LDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあると言われていますよ。
名称 | 牛肉 | 豚肉 | |
---|---|---|---|
飽和脂肪酸 | パルミチン酸 | 24.5% | 26.3% |
ステアリン酸 | 12.0% | 15.4% | |
一価不飽和脂肪酸 | オレイン酸 | 49.9% | 42.2% |
多価不飽和脂肪酸 | リノール酸 | 3.1% | 8.2% |
しかし体に良い成分が含まれているとは言え、脂質は高カロリーであり、脂肪酸はバランス良く摂ることが大切です。
基本はバランス良く食事を摂り、ダイエット中の人であれば使い過ぎは避けて上手にカロリーコントロールして楽しみましょう。
脂質は1日にどれくらい食べてもいいか|牛脂を使う際の注意点
普段から油っぽいものを多く食べている人は、まず一旦「脂質を摂り過ぎていないか」を振り返りましょう。
摂り過ぎの人であれば、牛脂の使用量は「控えめにor無し」が安心ですね。
摂取量の目安は、その人の性別・年齢・活動量などによって差はありますが、例えば「1日を通して座位で過ごすことが多い30代・40代の人」であれば目標量は下記の通りです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
推定エネルギー必要量 | 2300kcal | 1750kcal |
脂質目標量 エネルギー比率 20~30% |
約50~75g | 約35~55g |
飽和脂肪酸目標量 エネルギー比率 7%以下 |
17.8g以下 | 13.6g以下 |
日本人の食事摂取基準2020年版より(※5) |
肉食に偏りがちな人、揚げ物を多く食べている人は基準値を超えやすいですよ。
脂質・飽和脂肪酸を多く含むもの
油脂のほか、脂身が多い肉類は気を付けたいですね。
重さ | 脂質量 | 飽和脂肪酸 | |
---|---|---|---|
牛脂 | 1つ(約10g) | 約10g | 約4.1g |
豚脂 (ラード) |
大さじ1(約12g) | 約12g | 約4.7g |
牛バラ肉 | 100g | 50.0g | 15.5g |
豚バラ肉 | 100g | 35.4g | 14.6g |
鶏もも肉 (皮つき) |
100g | 19.1g | 5.6g |
生クリーム | 1パック(200ml) | 86.0g | 52.5g |
有塩バター | 大さじ1(約12g) | 約9g | 約6.0g |
飽和脂肪酸は小数点第二位以下切り捨て |
また牛脂であれば、ハンバーグや加工食品に使われることもあるので、知らず知らずの内に摂取しているケースもあります。
市販のカレールウの成分表示を見ると一番最初に書かれているのは食用油脂(牛脂豚脂混合油)
カレールウの40%程度がよくわからないこの脂だそうです。
ルーは常温で固まってますよね
トランス脂肪酸であることは確か…
カレールウは手作りに限る pic.twitter.com/oioe0Xujtf— cheesaka (@cheesaka) June 10, 2014
成分表示も確認してみてください。
実家では牛脂は私が食べてた(・∀・)でも最近はすき焼きに牛脂使わないな~
— ゆうみ (@yuumi_) January 29, 2015
すき焼きであれば、牛脂を無しにしてあっさりと仕上げる人もいるので「絶対使わなきゃ」と考えず調節しても良いですね。
また「スーパーでたくさん手に入った!」と言っても、無理に全て使わず冷凍保存するのも手です。
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サラダ油の感覚で使えるタイプもあるので、使用量を調節したい人はこちらもチェックしてみてください。
普段の食生活を振り返り脂質の過剰な摂り過ぎに陥らないよう、上手に付き合っていけるといいですね。
結論|牛脂には体に良い成分も含まれるがほどほどに
- 牛脂は脂質が主成分であり高カロリー
- 肥満や脂質異常症の原因に
- 飽和脂肪酸は腸内環境を悪化させる原因にもなる
- しかしオレイン酸も多く含まれる
- 悪い成分ばかりではないが、基本は栄養バランス良く
体への影響は肥満や脂質異常症などが懸念されますが、良い成分も含まれます。
良い成分とはいえ、ダイエット効果や健康面に明らかな効果・効能が期待できるものではありません。
使用頻度や量に気を付けながら、基本は主食・主菜・副菜と栄養のバランスが取れた食事を心掛けてくださいね。