【監修者:管理栄養士 五輪美沙子】
イカには豊富なタンパク質やプリン体などの栄養が含まれていますが、食べ過ぎると消化不良や痛風など体に悪い影響を与える可能性があります。
食べすぎには注意が必要ですが、コレステロールや中性脂肪を下げる効果が期待できるDHAやEPAなどの栄養成分を取ることも出来ますよ。
イカを食べるメリットに詳しくなって、食べ過ぎに気をつけながら上手に食事に取り入れたいですよね。
そこでイカについて、食べ過ぎるとどうなるのかなどを調べてみました。
この記事を読めば、イカに含まれている栄養素と期待できる効果、食べ過ぎによるデメリットと1日の適正量がよくわかります。
気をつけるべきポイントを一緒に確認してみましょう。
管理栄養士・栄養士
目次
イカの栄養とメリット・食べ過ぎに注意したい成分
イカにはタンパク質とビタミンが豊富に含まれていて、食べ過ぎなければ体にいい影響を与えてくれます。
タンパク質は体のもとになったりエネルギーになったりと生命の維持に大事な成分で、ビタミンは体の調子を整える効果が期待できますよ。(※1)
イカに含まれるタンパク質は含有量だけでなく、理想的なバランスが特徴です。
必須アミノ酸を多く含んだ良質なタンパク質が取れる
イカは高タンパクなだけでなく、生命維持には不可欠な必須アミノ酸をバランス良く含んでいる食品です。
必須アミノ酸 | ロイシン リシン イソロイシン メチオニン |
---|---|
非必須アミノ酸 | アルギニン アスパラギン酸 グルタミン酸 グリシン プロリン |
その他のアミノ酸 | タウリン |
タンパク質は色々な種類のアミノ酸が組み合わさったものなので、1種類でも不足すると体内で生成できるタンパク質量が減ってしまいます。(※3)
体内で作り出せない必須アミノ酸は食べ物やサプリメントなどから補うしかありませんが、イカならまんべんなく補給できるのが特徴です。
また、イカに含まれるタウリンは栄養ドリンクの原料にも使われていて疲労回復や脂肪燃焼、抗酸化作用などの効果が期待できますよ。(※4)
なお、タンパク質を取り過ぎると逆に太ってしまうことや、おならが出やすくなることもあるので気をつけましょう。
イカには体作りに欠かせないタンパク質だけでなく、健康維持に役立つビタミンもバランスよく含まれています。
健康を助ける栄養素のビタミン類が豊富
イカに含まれるビタミンは種類ごとに働きが違い、肌の状態の正常化、消化器系の働きを助ける効果などが期待できますよ。
種類 | 主な効果 |
---|---|
ビタミンA | ・生殖機能維持 ・上皮細胞の正常化 |
ビタミンB1 | ・代謝機能を助ける ・神経系の働きの調整 |
ビタミンB6 | タンパク質の利用効率アップ |
ビタミンB12 | ・タンパク質の代謝に関わる ・赤血球の生成を助ける |
ナイアシン | ・糖質の代謝に関わる ・消化器系の働きを助ける ・老化防止 |
ちなみに特定のビタミンを取り過ぎると頭痛や気持ち悪いと感じることがありますが、イカの含有量は極端に多いわけではありません。
普通に食事で取るくらいなら、ビタミンの取り過ぎが原因のデメリットはあまり心配しなくても大丈夫です。
ビタミン以外にも健康維持に役立つ栄養成分が含まれています。
DHAやプリン体などイカならではの栄養成分も
イカを食べると健康効果を期待できる成分も取れます。
成分名 | 主な効果 |
---|---|
DHA(ドコサヘキサエン酸) | コレステロールを下げる |
EPA(エイコサペンタエン酸) | 中性脂肪を減らす |
ペプチドグリカン | 免疫力アップ・がん予防 |
プリン体 | 細胞の代謝・増殖 (※7) |
DHAとEPAは必須脂肪酸の仲間で、イカなどの魚介類に多く含まれています。
必須アミノ酸と同じように食事から意識して取らないといけない成分なので、積極的に取り入れましょう。
免疫力アップに役立つといわれているペプチドグリカンは、イカ墨に含まれている栄養素なので、イカ墨も捨てずにスパゲッティやリゾットなどの料理に活用してみてくださいね。
忙しい人は、瓶詰めやレトルトパウチされた市販のイカ墨ソースがおすすめです。
プリン体は体を維持するために役立ち、1日に必要なプリン体の8割は体内で作られますが、残りの2割は食事などから取ることになります。
ただし、尿酸値が高めの方や毎日お酒を飲む方は痛風を起こすリスクが高いため、イカの食べ過ぎに気をつけましょう。
このように、イカには体作りや健康効果の期待できる栄養が含まれている一方で、タンパク質やプリン体などは取り過ぎるとデメリットがある栄養成分も含まれます。
イカを食べ過ぎるとデメリットに繋がる理由や原因を確認してみましょう。
イカを食べ過ぎたときに病気の原因となる栄養成分と症状
イカに含まれるタンパク質量は多めで、さらにバランスも良いのですが、気をつけて食べないとタンパク質の取り過ぎに繋がります。
また、プリン体も取り過ぎが続くと痛風や脳梗塞などの病気を引き起こすことも考えられますよ。
まずはタンパク質の取り過ぎが原因のデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
タンパク質の取り過ぎは下痢やおならが出る原因になる
タンパク質を取り過ぎると太ったり、お腹の調子が悪くなったりと体に悪い影響が出てしまうことがあります。(※8)
- 太る
- 腸内環境の乱れ
- 尿路結石
タンパク質は体の材料やエネルギーとしても使われる栄養成分ですが、取り過ぎると消費しきれなくなり太る原因になります。
また、分解しきれなかったイカのタンパク質は腸内へ届くと悪玉菌のエサになります。
悪玉菌がエサを食べて増えすぎると、腸内のバランスが崩れて腸の運動が弱まり、下痢やおなら、吐き気などのデメリットに繋がってしまうのです。
特に食べ過ぎに注意したいのが、スルメイカを加工した「あたりめ」や酢イカ、いかくんなどのおつまみです。
お酒と一緒だとついつい食べ過ぎてしまいますが、水分が抜けていてもタンパク質の量は生のイカとほとんど変わりません。
食べ過ぎで胃酸が出すぎて胃痛や腹痛を感じる事もありますよ。(※9)
また、味の濃いおつまみを食べ過ぎると、塩分の過剰摂取でむくみや生活習慣病の原因になるので注意しましょう。
このようにイカのおつまみは特に注意が必要なことが分かりましたが、生や調理したイカでもプリン体の取り過ぎには気をつけましょう。
痛風に繋がるプリン体の取り過ぎに注意
プリン体を取り過ぎると、関節に激しい痛みが走る痛風発生のリスクが高まります。(※10)
摂取量と排出量のバランスが揃っていれば問題ありませんが、プリン体の摂取量だけ増える血液に尿酸が貯まり高尿酸血症になります。
血液内の尿酸が関節に結晶を作って痛みを感じる痛風の症状を引き起こすだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まるの食べ過ぎには注意しましょう。
イカは適量を守って食べれば、アミノ酸やビタミンなどが取れて体に良い食材でもあります。
安全に食べるための食べ過ぎにならない適量と、栄養を活用できる食べ方を確認しておきましょう。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
イカの食べ過ぎにならない適量と栄養摂取に効果的な食べ方
イカの食べ過ぎにならない適量について、科学的エビデンスは見つかりませんでした。
ですがプリン体やナトリウムの目安量で考えてみると、1日のイカの適量が分かりそうです。
まずはスルメイカに含まれるプリン体の量と、高尿酸血症・痛風の治療者向けのプリン体の摂取目安量を比べてみましょう。
スルメイカの含有量 100gあたり |
1日の摂取目安量 (※11) |
---|---|
186.8mg | 400mg |
プリン体の1日の摂取目安量が400mgなので、スルメイカを100gしか食べなくても目安量の半分近くを取ってしまいます。
イカ一杯の重さを300g程度とすると、まるごと1杯を一度に食べてしまうと明らかに食べ過ぎですね。(※12)
他の食べ物から取るプリン体もあるので、1日にイカを食べる量は多くても100gほどに抑えておくのが良いでしょう。
ただ、この目安量は痛風の治療をしている方が対象になるので、痛風リスクが高くない方であれば、もう少し余裕を持ってイカを食べても問題ありませんよ。
また、味の濃いイカのおつまみを食べる時は、痛風リスクが高くない方も塩分量に注意しましょう。
例えば「技の逸品 ソフトさきいか」には、一袋あたりの食塩相当量が1.9gになります。(※13)
18歳以上の女性の場合、塩分は1日に7g未満の摂取が望ましいとされているので、健康のことを考えると多くても一袋程度にとどめておくのが良いですね。(※14)
適量に気をつけながら、イカに含まれる栄養素を効率よく補給する方法を実践しましょう!
食材を組み合わせて必須アミノ酸バランスを良くする
イカには必須アミノ酸がまんべんなく入っているのですが、バリンの含有量は1日の摂取目安量に足りていません。(※15)
必須アミノ酸はまんべんなく補う必要があるので、イカと一緒にバリンを補う食材を食べるなどして工夫しましょう。(※16)
- お米
- プロセスチーズ
- 落花生
手軽にイカを食べたいなら、市販のいかめしもいいですね。
また、スーパーで買ったお刺身をご飯に乗せるだけで、豪華な丼にアレンジできます。
お米と一緒に食べているので、必須アミノ酸のバランスも良くなるのでおすすめです!
結論|イカは食べ過ぎずに適量を楽しもう
イカはアミノ酸バランスの良いタンパク質やミネラルなどが豊富な食品です。
栄養価が高いので適量を食べると健康効果が期待できますが、食べ過ぎるとタンパク質の取り過ぎで吐き気を感じたり、プリン体の取り過ぎで痛風に繋がることがあります。
痛風リスクが高い方は他の食べ物から取れるプリン体のことも考えて、1日に食べるイカの量は100g程度に抑えておくのがおすすめです。
それ以外の方でもイカのおつまみでの塩分の取り過ぎに気をつけましょう。
アミノ酸のバランスで見ると、イカとお米は相性の良い食材です。
お刺身をアレンジするなど食事にイカを取り入れて、栄養を摂取できるように工夫してみましょう。
参考資料
※をクリックすると元の位置へ戻ります。
※1 プロテインにはビタミンが含まれている?ビタミンを配合しているプロテインを紹介|かんたん、わかる!プロテインの教科書(森永製菓株式会社)
※2 魚介類/<いか・たこ類>/(いか類)/するめいか/生|食品成分データベース(文部科学省)
※3 アミノ酸スコアとは。スコアが高い食品はどれ?|POWER PRODUCTION(グリコ)
※4 タウリンの効果と疲労に作用する仕組み|疲れに効くコラム powered by リポビタン(大正製薬)
※5 それぞれのビタミンの特徴と働きは?|公益財団法人日本食肉消費総合センターホームページ(公益財団法人日本食肉消費総合センター)
※6 おいしいだけじゃない!イカを食べて健康に!健康にいい10の理由|珍味南部通販サイト(諸国名産珍味南部)
※7 プリン体ってなに?|明治ヨーグルトライブラリー(株式会社明治)
※8 タンパク質の摂りすぎは危険!?過剰摂取による影響とは|POWER PRODUCTION(グリコ)
※9 胃痛の原因|ガスター10ホームページ(第一三共ヘルスケア)
※10 高尿酸血症|JA愛媛厚生連ホームページ(JA愛媛厚生連)
※11 食品・飲料中のプリン体含有量|公益財団法人 痛風・尿酸財団ホームページ(公益財団法人 痛風・尿酸財団)
※12 食材の目安量|AJINOMOTO PARK(味の素株式会社)
※13 技の逸品ソフトさきいか|なとりホームページ(株式会社なとり)
※14 ナトリウムの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
※15 イカの栄養と機能成分|全国いか加工業協同組合ホームページ(全国いか加工業協同組合)
※16 バリン|わかさの秘密(わかさ生活