【監修者:管理栄養士 佐藤久美】
【執筆者:野菜ソムリエプロ みつはしさなこ】
ヤーコンには、他の芋類には含まれていないダイエットにも役立つ栄養素が含まれています。
しかし、食べ過ぎるとヤーコンに含まれるフラクトオリゴ糖の過剰摂取で、胃痛や下痢などを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
しかしヤーコンにはほかにもポリフェノール成分クロロゲン酸が含まれており、脂肪肝や糖尿病の予防効果が期待できます。
この記事では、適量を守りつつ食べるとどんなメリットがあるかについて紹介しています。
栄養成分や効能を知っておくと、目的に合わせて食べやすいですよね。
また芋類は太るのでは…と気になる方のために、カロリーも比較調査しています。
食べ過ぎにならない適量も紹介しているので、この記事を読めば美味しく健康的にヤーコンを食べられるようになりますよ。
まずは体へのメリットから詳しく解説します。
目次
ヤーコンは栄養豊富!メリットと食べ過ぎ注意の成分
ヤーコンは、ほかの芋類と比べて特徴的な栄養素を持っています。
- フラクトオリゴ糖
- ポリフェノール(クロロゲン酸他)
ヤーコンの効能について知るために、これらの栄養素がどのような働きをするかを見ていきましょう。
栄養成分フラクトオリゴ糖の特徴
フラクトオリゴ糖とはオリゴ糖の一種で、砂糖に似た甘みがあります。
特徴的なのは、難消化性のため胃や小腸で分解・吸収されず、そのまま大腸まで届くことです。
そのため、フラクトオリゴ糖には次のような効能があります。
フラクトオリゴ糖の効能(※2)
- 血糖値の上昇を抑える(糖として吸収されないため)
- 腸内環境を改善する(善玉菌のエサになるため)
- ミネラルの吸収を助ける(善玉菌が増殖し吸収しやすくなるため)
通常、食後30分ほどで血糖値とインスリン分泌量は上がりますが、フラクトオリゴ糖は吸収されずに大腸に到達するため、血糖値もインスリン分泌量も大きく変わらないのです。
また、インスリンは血糖値の急上昇を抑える働きがあることで知られていますが、ほかにも糖を脂肪に変える役割があります。(※3)
そして、大腸に到達したフラクトオリゴ糖は善玉菌のエサになるので、腸内環境の改善につながります。
腸内環境が改善すると、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが体内に吸収されやすくなります。
このように、フラクトオリゴ糖は体に良い影響をもたらしてくれるのです。
ただし、食べ過ぎはデメリットもあります。後半で詳しく解説しているので、合わせてチェックしましょう。
ヤーコンのもう一つの特徴的な栄養成分である、ポリフェノールについても見ていきます。
ポリフェノール成分クロロゲン酸の特徴
ヤーコンにはクロロゲン酸と呼ばれるポリフェノールが豊富です。
ポリフェノールとは植物が持つ色や苦味のもとになる成分であり、生育環境でのストレスから身を守るために生成された抗酸化物質です。(※4)
クロロゲン酸には、次のような働きがあるとされています。
クロロゲン酸に期待できる働き(※5)
- 脂肪肝を予防する(肝臓に中性脂肪が蓄積するのを予防)
- 糖尿病を予防する(体内で糖が生成されるのを抑える)
クロロゲン酸も体に良い働きをもたらしてくれそうですね。
またクロロゲン酸はヤーコンの葉にも豊富に含まれているので、ヤーコンの葉を使った焙煎茶を取り入れるのも良いでしょう。
ヤーコンの栄養価や食べるメリットについて分かったところで、ほかの芋類とカロリーがどのくらい違うのかも見てみましょう。
ヤーコンのカロリーは?ほかの芋類と比較
ヤーコンのでんぷん量とカロリーに着目し、ほかの芋類との違いを比べてみましょう。
野菜名 | でんぷん | カロリー(※10) |
---|---|---|
さつまいも | 24.1g(※6) | 134kcal |
里芋 | 14.5g(※7) | 58kcal |
じゃがいも | 13.4g(※8) | 76kcal |
ヤーコン | –(※9) | 52kcal(※11) |
このように、ヤーコンには体内で糖として吸収されるでんぷんは含まれていません。
そして芋類の中でも、比較的低カロリーです。
血糖にほとんど影響を与えないので、特に血糖値が気になる方にとってはおすすめですね。
\ こちらの記事も参考にどうぞ /
体に良い働きがあって低カロリーとなると、ついたくさん食べたくなってしまいますが、食べ過ぎによるデメリットもあります。
続いては、ヤーコンを食べ過ぎた場合のデメリットについても見ていきましょう。
ヤーコンの食べ過ぎでデメリットになる栄養成分と症状
体に良いとされるヤーコンですが、食べ過ぎには注意が必要です。
特に、フラクトオリゴ糖は食べ過ぎると体調不良を起こす場合があります。
具体的にどのような症状があるか見ていきましょう。
フラクトオリゴ糖の大量摂取が下痢を引き起こす可能性
フラクトオリゴ糖は摂りすぎるとおなかがゆるくなり、腹痛や下痢になることがあります。(※12)
そのため、食べ過ぎには注意が必要です。
もしもダイエットなどを目的に継続的にヤーコンを食べるときは、体調の変化に気をつけながら少しずつ食べる量を適量へ増やしていくといいでしょう。(※13)
どのくらいが適量かについては、次章で解説しているので参考にしてください。
そして普段から腸に不調を抱えている場合は、ヤーコンを控えたほうがいいでしょう。
過敏性腸症候群は胃痛や便通が悪化する可能性
過敏性腸症候群(IBS)の方は、オリゴ糖類で腹痛や便通が悪化する恐れがあります。
過敏性腸症候群の症状と治療法を簡単にまとめて紹介しますね。
症状 | 治療法の一例 |
---|---|
硬い便やコロコロの便が出る (便秘) |
・脂っこいものを避ける ・適度な運動をする ・睡眠をとる ・飲酒を控える ・適宜薬を服用する |
軟便や水様便が出る (下痢) |
|
便秘と下痢を繰り返す | |
おならが頻繁に出る | 発酵性のある糖質を避ける |
おならが頻繁に出るガス型の治療の一つに、発酵性のある糖質やガスを誘発しやすい食品を避ける食事療法があり、オリゴ糖は避けるべきとされています。
そのほか気になる点もチェックしましょう。
やっぱり食べ過ぎると太る?
どんなものでも食べ過ぎは禁物ですが、ヤーコンは比較的カロリーが低いので、おそらく食べ過ぎで太る可能性は極めて低いでしょう。
しかし、太らなくても腹痛や下痢を起こす可能性があるので、適量にとどめることをおすすめします。
最後にアレルギーの有無についても見ておきましょう。
ヤーコンでアレルギーを起こす可能性はある?
ヤーコンはアレルギー特定品目ではありませんが、過去にアナフィラキシーショックの症例があります。(※15)
命に関わる重篤な症状を引き起こすおそれもあるため、もしもヤーコンを食べたあとに蕁麻疹やまぶたのむくみ、息苦しさを感じたら、ただちに医療機関を受診しましょう。
ヤーコンの食べ過ぎによるデメリットが分かったら、一日何グラムが適量なのかについて、次章で見ていきます。
ヤーコンの食べ過ぎにならない適量と栄養摂取に効果的な食べ方
ヤーコンの食べ過ぎによる体調不良を避けるには、フラクトオリゴ糖の目安量を知っておきましょう。
フラクトオリゴ糖の目安量は、1日3gとされています。(※16)
これを基準に、ヤーコンの適量を見てみましょう。
ヤーコンの1日の適量はどのくらい?
ヤーコンは1日30g程度が適量と考えられます。
ヤーコンに含まれるフラクトオリゴ糖は収穫直後が最も多く、その後時間とともに減少しますが、最も多い場合で重量の10%程度とされています。(※17)
フラクトオリゴ糖は1日3gが目安ですから、最大10%含まれていると考えてもヤーコンは1日30gが適量でしょう。
さらに長時間の加熱もフラクトオリゴ糖を減少させます。(※18)
適量以上のヤーコンを食べる場合は、収穫から食べるまでの期間を確認したり、調理法を工夫することで食べられる可能性はあります。
適量が分かったら、おすすめの食べ方を見ていきましょう。
またすぐに食べない場合の保存方法も紹介します。
ヤーコンのおすすめの食べ方と保存方法
フラクトオリゴ糖は長時間加熱すると減少するため、効率的に栄養成分を摂るなら生で食べるか軽く火を通す程度がいいでしょう。
煮物料理よりも、サラダで食べたりさっと炒めたきんぴらがおすすめです。
こちらはヤーコンと柿の組み合わせが新鮮で美味しそうなレシピですよ!
ヤーコンと柿のサラダ
☆材料
ヤーコン 1個
柿 1個 千切り☀️味付け
オリーブオイル 大3
マスタード 大3
ハチミツ 大1
クミンパウダー 小0.5❤️手順
ヤーコン皮剥き、千切り、酢水につけておく
柿、皮剥き、千切り
ヤーコンと柿を☀️で和える👍#ヤーコン #健康ごはん#蜂蜜 #自炊 pic.twitter.com/pD9h1wZstN— chaco (@chaco30281087) November 20, 2020
柿の季節に試してみてくださいね。
きんぴらならシャキシャキした食感が楽しめるようですよ♪
ヤーコンのきんぴら
シャキシャキ食感が好き pic.twitter.com/9j7JYwd7oF— チーフ (@SW_Chief) November 22, 2020
ヤーコンは常温保存だとフラクトオリゴ糖の減少が早まるので、すぐに食べない場合は、新聞紙などに包んで冷暗所や冷蔵庫に保存しましょう。
また切ったヤーコンは、ラップに包んで乾燥を防ぎましょう。
結論|ヤーコンの食べ過ぎに注意しよう
ヤーコンはほかの芋類と比べても低カロリーなうえ、フラクトオリゴ糖やクロロゲン酸ポリフェノールなどの体に良い働きをもたらす成分が豊富に含まれています。
ヤーコンの特徴を知って料理すれば、効率的に栄養を取り入れて血糖値の急上昇を抑えたり、腸内環境改善や、ミネラル類の摂取量アップにつなげることができるでしょう。
ただし、食べ過ぎは腹痛や下痢の原因になるので、体調や食べる量には注意が必要です。
記事を参考に、ヤーコンを上手に食事に取り入れて楽しんでくださいね。
参考資料
※をクリックすると元の位置へ戻ります。
※1 未利用野菜ヤーコンの成分と特徴|日本調理学会
※2 フラクトオリゴ糖8つの機能性|株式会社明治フードマテリア
※3 インスリン|厚生労働省
※4 ポリフェノールとは?体への効果と摂取できる食品・飲み物を解説!|株式会社ロッテ
※5 クロロゲン酸|株式会社わかさ生活
※6 食品成分データベース「さつまいも」炭水化物|文部科学省
※7 食品成分データベース「さといも」炭水化物|文部科学省
※8 食品成分データベース「じゃがいも」炭水化物|文部科学省
※9 食品成分データベース「ヤーコン」炭水化物|文部科学省
※10 栄養価目安一覧表(芋類)|バイエル薬品株式会社
※11 食品成分データベース「ヤーコン」|文部科学省
※12 特定保健用食品の表示許可について|厚生労働省
※13 腸内細菌と健康|厚生労働省
※14 食後の腹痛|はしもと内科消化器内科クリニック
※15 2011年1月更新の素材情報データベース「ヤーコン」|国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
※16 フラクトオリゴ糖 知ってすっきりQ&A|株式会社明治
※17 ヤーコン|株式会社北海道バイオインダストリー
※18 ヤーコンの収穫時期、貯蔵条件及び加熱処理による機能性成分の変動|国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構