お店のレジや経理事務などの仕事をしていると領収書を発行する機会が多いと思いますが、「領収書を日付なしで発行して欲しい」と頼まれた経験はないでしょうか?
複写式の領収書だと日付なしでは効力がないのではないか・・・?と思ったので、今回は領収書の日付について詳しく調査した結果を紹介します。
- 日付がない領収書を発行しても大丈夫?有効・無効になる例
- こんな領収書は日付なしで発行してもらえる?
- 宛名や金額、但し書きなしの領収書は違法性がある?
日付の書き忘れならまだしも、わざと日付を空ける行為は違法性がないのかについても心配です。
税務署から指摘された時には、領収書を発行した私が責任をとらされてしまうのではないかと不安になってしまいますよね。
領収書を発行する機会が多い方は、この記事を参考にして落ちついて対処できるように正しい領収書の知識を身につけてください!
目次
日付なしで発行しても大丈夫?領収書が有効・無効になる例
取引先の会社などから「領収書の日付を空欄にして!」と頼まれたら断れなくて困りますよね。
私も経験しましたが「発行する側に迷惑はかけないからさ!」「急いでるから、後でこちらで正しく記入しとくし」と押し通されてしまいました。
最近は機械で処理することも多いので、レジでレシートと一緒に印刷した領収書の場合ならば「この状態でしか発行できませんから(にっこり)」で済ませられます。
でも、ダイソーなどでも購入できる複写の手書きで発行する領収書の場合、日付だけでなく宛名や金額まで空欄にして欲しいと頼まれる例もありますが、このような領収書としての効力があるのか確認してみましょう。
そもそも「領収書」って何?
「領収書」とは、金銭の受け取りが確実に行われたことを証明するものです。
簡単に言えば、お金を払う側が『ちゃんと払いましたよ』と証明するものをもらうことで、二重払いを防げるのです。
「支払いがまだだよ~」と言われても「もう払ったよ!ほら!!」と証拠が出せればいいのですが、証拠がないともう一度支払うことにもなりかねませんからね。
また支払う側も受け取る側も、領収書を見れば会計処理で帳簿に正確な金額を記載できます。
日付なしの領収書が「有効」の場合と「無効」の場合
それでは、日付がない領収書は金銭の受け取りが行われた証明として効力を発揮できるのか確認してみましょう。
有効の場合
領収書に記載される日付は異なっていても問題が無いとされています。
お金を受け取ったという事実がある以上、法律上その効力には問題ないそうなんですよ。
実際に日付が書いてなくて、後から記入した場合も領収書自体は有効です。
そのため領収書を受け取る側は、空欄の日付に後から「確定申告など帳簿の処理上で都合の良い日付」を記載できて便利なのです。
問題ないとされていますが自分で日付の間違いに気付いた場合は、発行した側が二重線を引いて訂正印を押して変更するか、領収書を再発行して差し替えるなどの対応を行うことをおすすめします。
無効の場合
日付がない領収書を以下のように不正利用すると無効になってしまいます。
- 異なった日付の領収書を使用して税金の還付を受ける
(=支払ったお金が戻ってくる) - 異なった日付の領収書を使用して税金の支払いを免れる
このような脱税行為をすれば、重加算税を徴収されたり懲罰を科せられる恐れがあります。
領収書を受け取る側(お金を支払った側)が勝手に日付を変えたりしたら、『公文書偽造』という罪に当たり、10万円以下の罰金、6か月以内の懲役刑に課せられます。
えぇ!?じゃ、ダメじゃん!やっちゃってたよ!と、焦っている方もいらっしゃるでしょう。
実は日付を空欄にしてもらって自分で都合の良い日を記入してもまず見つかることはないと考えられますが、税務署の調査を受けて不正が発覚する場合も考えられます。
なお、病院で発行された領収書の日付を偽造して病気休暇を不正に取得した公務員が懲戒処分を受けた例など、税務署の調査が入らなくても職場からのペナルティーを受ける場合もあります。
あくまでこれは異なる日付を書き入れて不正をした側が問題なのであって、領収書を発行した側が罪に問われることはありません。
領収書を空欄にして発行するように依頼されたら・・・?
手書きで発行していた時代は、日付が空欄の領収書というのはほとんど慣習化していたというのが事実。
年配者から「いつもやってることだから、大丈夫」と言われたら、疑問に感じつつも従ってしまいますよね。
お得意様から『空欄にして』と頼まれたら、誰だって断りにくいことでしょう。
それでも一存で判断できない場合は、まず上司に相談しましょう。
上司から『いつもそうやってるから大丈夫』と言われた場合は、慣習に従っても問題ありません。
領収書の日付なしで発行することはできる?よくある例
領収書の日付なしで発行して欲しいなどの要望に応えられるケースと対応できないケースがあります。
ここでは、よくある例として日付なしで発行できる例とできない例を紹介します。
JR新幹線は日付必須
JR新幹線の領収書は購入した日付が入るので、搭乗した日を記録したい場合は但し書きに「○月○日分」と記入する。なお、スマートEXは領収書表示サービスを利用できます。
飛行機は日付必須
領収書データWeb表示サービスが便利です。ANAは航空券発行日と表示日が、JALは航空券発行日と領収書発行日が記載されます。
新聞は△
朝日新聞の通信販売「朝日新聞SHOP」では配送センター出荷日で領収書の日付になり、日付なしでは発行できません。各販売店では個別に対応してもらえる可能性もあります。
運転代行、タクシー、飲食店は△
運転代行やタクシー、飲食店などはそれぞれ対応が異なりますが、日付なしで発行してくれる例は少ないようです。
ここまで領収書の日付に関して説明しましたが、宛名や金額などの記載についても合わせて確認しておきましょう!
宛名や金額、明細、発行元の住所などがない領収書は違法性がある?
領収書には日付以外にも宛名や金額、発行元の住所などを記載する部分がありますが、これらの項目に記載されていない場合は領収書として効力があるのか確認してみましょう。
宛名なし
宛名を書かない場合や、名前の表記を説明するのが面倒だから「上様でいいよ!」という方も多いですよね。
こちらも好ましくない状態ではあるものの、領収書としての効力が無くなるわけではありません。
受け取った側が書き込んでしまうのは問題がありますが、宛名を空欄で発行した側については大きな問題にはならないでしょう。
なお、領収書を発行する側の氏名(会社名)は必ず記載しなければいけませんが、電話番号や住所についての記載は必須ではありませんので住所なしでも問題ありません。
明細なし
本来であれば何にお金を使って経費として計上したのかがわかるように、明細欄に記載する必要があります。
明細なし(但し書きなし)で発行してもらいたい理由としては、「私的なものを購入したけど会社の経費にしたい」との思惑がある可能性があります。
本来は経費ではないのに経費精算すると脱税行為になるため、領収書を受け取った側の違法行為とみなされますが、共犯でない限りは発行した側が罪に問われることはありません。
金額なし
気をつけなければならないのは金額が書かれていない領収書で、金額水増しを行われるリスクがあります!
これは「空領収書」と呼ばれていて、税務署の調査が入るとほぼ不正がバレるので断るべきです。
発行した側も文書偽造より罪に問われることがあります。
金額などの内容は発行した側が責任もって記入をしなくてはならないので、空領収書は軽々しく引き受けないように注意しましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。領収書と聞くと「難しい決まりがありそう」というイメージですが、注意するべきところがハッキリしているので、意外と簡単な話なんですよ。
- 領収書は金銭の授受を証明するために必要な書類
- 日付なしでも領収書の効力には問題ないとされている
- 不正利用の可能性もあるので日付は必ず入れるべき
- 日付なしで発行するように依頼されたら上司に相談する
- お店によっては日付なしで領収書を発行する例もある
- 宛名や明細(但し書き)も基本的には入れるべき
- 金額なしの領収書は絶対に発行してはいけない
一般的に領収書の日付の空欄は、帳簿に記載する時に「都合の良い日付」で処理するのが目的です。
会社名の空欄は、接待や私用に使ったタクシーや飲食代を会社の経費として落とすためという理由が思い浮かびます。
金額の空欄は、差額をぽっけにナイナイするため…かもしれないですね。犯罪も絡んでくるので、雑な扱いはできません。
ただし不自然なお金の流れが発覚して問題になるのは、文書を偽造した側。
つまり「領収書を受け取って後から記入した人」であり、空欄の領収書を発行した側ではありません。
もし企業間の慣習で空欄が当たり前の場合は、気になる場合は上司に相談しましょう。
下手に騒ぎ立てると、逆にあなたの立場が悪くなってしまうかもしれません。
責任を取る立場の人に相談しながら、慣習とも上手に付き合っていきましょうね。