私の実家は田園風景が広がる田舎の地域で、毎年春先になると当たり前のようにツバメの巣が作られていました。
両親も近所の方も、とくに助けてあげるわけでも駆除しようとするわけでもなく、「今年も無事に飛び立ったね〜」などと言い合うまさに共存の状態。
現在、実家とは離れた住宅街に住んでいる私ですが、先日ご近所の奥さんに「ツバメの卵ってどのくらいで孵化するのかしら?」という質問を受けました。
「2週間くらいだったと思うけど」と答えながら、よく考えると飼っていたわけじゃないのでツバメのことを詳しく知らないなと気づいたのです。
まだなの?ツバメの卵が孵化しない理由とは
孵化したのになぜ?ツバメの雛の鳴き声が聞こえない理由
いよいよ大人の仲間入り!孵化したツバメが巣立ちするまでの期間
どうしたらいいの?巣立ち後にツバメの巣は壊す?残す?
そのご近所の奥さんは、ツバメに来てほしくて玄関脇の雨が除けられる場所に棚を作っておいたところ、無事巣を作って産卵したところとのことでした。
どのくらいの日数で孵化するのか、飛び立つのか、また同じ場所に戻ってくるのか疑問がたくさんあったので、上記のポイントに分けて一緒に調べてみることにしました。
目次
もう間近!? ツバメの卵が孵化するまでの日数
渡り鳥であるツバメは、基本的に日本には春先にやってきて、パートーナーを選び、巣作りをし産卵、子育てして秋までに再び暖かい越冬地へ飛び立ちます。
北半球の広い範囲で繁殖し、日本で繁殖するツバメの主な越冬地は台湾、フィリピン、ボルネオ島北部、マレー半島、ジャワ島などとなっています。
ツバメの子育て
春先にやってきたツバメは、まずはパートナー選びからはじめます。先にやってきたオスがメスを迎えて、メスがOKを出せばカップル成立。ここでつがいになったツバメは、どちらか一方が死ぬまで関係を維持するそうですよ!
オスとメスがつがいになるとすぐ巣作りをはじめます。泥や枯れた植物を唾液で固め、羽毛などを敷いて丁寧に作り上げます。
巣作りの4日目ごろから交尾が見られはじめ、1日に1個、全部で3~6個の卵を産みます。
メスとオスで交互に抱卵
すべての卵を産み終わったら、ほとんどの場合メスが卵を温めます。これを抱卵(ほうらん)と呼びます。通常、鳥はメスが卵を温めますが、ツバメは割合は低いですがオスも交換しながら抱卵する珍しい鳥なんだそうです。
抱卵開始から約2週間で卵から雛が孵化し、孵化したての雛は毛が生えていないので、体温が下がらないように親鳥は雛を温め続けます。
この時親鳥のどちらかが死んでしまうと、他のツバメがやってきて雛を巣から落としてしまうことがあるそう!
このような場合に遭遇して「巣から落ちていたツバメの雛を保護」などという記事を見かけることがありますが、日本では野鳥の飼育は鳥獣保護法によって禁じられているので注意が必要ですよ。
まだなの?ツバメの卵が孵化しない理由とは
「卵は産んでいるはずなのに、なかなか雛の鳴き声が聞こえない」。
冒頭でお話したように、ツバメの飛来を心待ちにしていた方にとっては、とっても気になることですよね。
ツバメの卵が孵化しないのには、いくつか理由があります。
孵化する時期をそろえている
ツバメは1日に1個ずつ卵を産み、最終的に3~6個の卵を育てます。
そのため、産んだ順に温めはじめてしまうと、孵化する時期もずれて毎日1羽ずつ誕生してしまうなんてことに。
そうなってしまうと、残りの卵を温めなければいけないのに孵化した雛には餌をあげなくてはいけないという矛盾が生まれてしまいます。
親鳥は、そうならないために先に産んだ卵をあえて抱卵せず、最終的にすべての卵を産んでから均等に抱卵をはじめます。
そのため、卵を産んでから2週間以上経っているのにまだ孵化しないという状況が出てくるのです。
この場合は、心配せずにゆったりと見守ってあげてくださいね。
もともと無精卵だった
孵化しない主な理由として、「受精せずに産まれた無精卵だった」ということが考えられます。
この場合は、どうにかすることはできませんので、孵化は諦めるしかありません。
親鳥も途中で気づき抱卵を中止するので、とくに何かしてあげる必要はありません。
新米親鳥の抱卵失敗
卵が孵化しないもうひとつの理由として「親鳥の抱卵が上手くいかなかった」ことも考えられます。
初めて巣作りをして抱卵するような新米親鳥だと、抱卵がうまくできていないことに気づかず、きちんと卵を温められないことがあります。
そうなると残念ながら孵化することはできません。
卵が癒着しないように転卵する必要もありますが、新米親鳥の場合飽きて適切に世話をしないこともあるそう。
人間と同じで、ツバメにもベテランと新米の差があるのですね。
孵化したのになぜ?ツバメの雛の鳴き声が聞こえない理由
待望の雛が出てきた! と思ったのに鳴き声が聞こえなくて不安になる方もいます。
ツバメが孵化したのに鳴き声をあげない理由はなんでしょうか。
直後には鳴かない
孵化したての雛は毛もなく丸裸状態で、親鳥に温めてもらわないと体温が調節できないほどまだ弱々しい状態です。
そのため、人間のように産まれてすぐに鳴き声をあげたりしないんですね。
親鳥は、雛が孵化すると残った卵のカラを巣から下に落とします。なので、巣の近くに卵のカラが落ちていれば間違いなく孵化しているので心配しないでくださいね。
いつごろから鳴く?
ツバメは孵化するとすぐ、親鳥から給餌されるようになります。
目も見えない雛に、餌の時間だと分かるように親鳥が「キュイ」という鳴き声で合図を送ります。そうすると雛は口を開けるようになるんですね。
孵化から約1週間もすれば、体の毛もだいぶ生えてきて、餌欲しさに雛自ら「ジャージャー」「ギャーギャー」と大きな声で鳴くようになってきます。
ツバメの雛の印象として、この「よく鳴いて餌をねだる姿」を思い浮かべますが、これは産まれてだいぶ経ってからの状態だったのですね。
いよいよ大人の仲間入り!孵化したツバメが巣立ちするまでの期間
雛は孵化してからおよそ20日間は巣の中にいて、親鳥が運んでくる餌を口を開けて待っています。
この間は、自分で餌を捕れないため巣の中で雛同士がギュウギュウに固まって過ごします。
雛の巣立ちまで
その後大きくなってくると自力で巣から出て安全な場所に移りますが、自分で餌を捕れるようになるまで、親鳥の餌を捕る姿を見ながらいろいろなことを学びます。
雛鳥が自力で餌をとれるようになるまでは、巣から出て約2週間後なので、完全な巣立ちは、孵化から4週間程度かかることになります。
ツバメは、約1カ月の間で、親鳥の出会いから巣作り、産卵、子育てとすべてのことを行なっているのですね。
鳥と言えど、同じ親としてなんだか尊敬してしまいます。
どうしたらいいの?巣立ち後にツバメの巣は壊す?残す?
毎日聞こえていた雛の声もあっという間に聞こえなくなり、ついに姿を見かけなくなった…。「ああ、無事に巣立っていったんだな」と感慨深くなります。
そこで悩むのが、残った巣の処理。ニオイの心配もあるし、衛生的にもそのままで大丈夫なのか気になりますよね。
巣を残した方がいい理由
・ツバメは1年に2回卵を産むことがあるが、2回目も1回目と同じ巣を使う。
・翌年も親鳥は同じ地域に飛来して巣を作るため、同じ巣を使う可能性も若干ながらある。
以上のことから、ツバメの子育てを暖かく見守っていきたい気持ちがあるなら、取り壊さずそのまま残しておいた方がよいと言えます。
しかし、巣立ちした後の巣は寄生虫の温床になる危険性があるので壊したほうがいいという声もあるため、衛生的に気になる場合は取り壊すことも止むを得ないでしょう。
その場合も、少なくとも同じ年の秋まではそのままにしておいてあげるほうがいいと思います。
まとめ
ツバメの雛の7~8割は、天敵に襲われるなどの原因で1歳まで生きられないと言われています。
子供の頃、いるのが当たり前と思って見ていたツバメですが、想像を超える過酷な運命を背負っていたのですね。
かわいい姿につい何かしてあげたくなってしまいますが、厳しい世界で生き抜いていかなければいけない野鳥には絶対に人が手を出してはいけないそう。
せめて暖かく見守ってあげるために、今回のポイントをおさらいします。
・1日に1個、全部で3~6個の卵を産み、オスメス交互に抱卵する。
・抱卵開始から約2週間で卵から雛が孵化する。
・いつまでも孵化しない場合は、無精卵か新米親鳥の抱卵失敗が考えられる。
・孵化してすぐには鳴かない。
・孵化してからおよそ20日間は巣の中にいて、親鳥から餌をもらう。
・巣から出て約2週間は、親鳥を見て餌の捕り方などを学ぶ。
・孵化してから約4週間で巣立ちの日を迎える。
・巣立った後の巣は、なるべくならそのまま残しておく
ツバメは、生きている限り毎年ほぼ同じところに戻ってくるということが分かっています。
巣立っていく雛を見るのは寂しいかもしれませんが、来年もまた元気に戻ってくることを願って、暖かく見守ってあげましょう。