【執筆者:管理栄養士 宍戸恵】
水飴は糖質を多く含むため、食べ過ぎると太る・虫歯の原因になるなど、体に悪い影響をもたらすおそれがあります。
一方で、水飴を元に作られる還元(かんげん)水飴はカロリーが低くダイエット食品にも使われています。
「麦芽水飴や砂糖との違いは?」「還元水飴とは?」これらの疑問について、水飴の種類やそれぞれのメリット・デメリットを以下の項目に沿い紹介していきます。
水飴 のこと
- 食べ過ぎで起こる健康へのリスク
- 砂糖との違いや水飴の製法
- それぞれのメリット・デメリット
- 用途に応じて選ぶ際のおすすめ
お祭りでよく目にするりんご飴のほか、身近なところではジャムやガム、チョコレートなどにも使われています。
製法によって特徴もさまざまなので、私生活における食品の取捨選択に役立ててください。
目次
水飴の食べ過ぎが太る・体に悪いと言われる原因|還元水飴とは
純粋な水飴なら糖質が多く含まれ、食べ過ぎは肥満や生活習慣病の原因となります。(※1)
また粘性があり口に残りやすいので、虫歯にも気を付けたいですね。
体に悪いイメージは上記の理由からと考えられますが、「水飴」か「還元水飴」かで体への影響は異なり、馴染みが無い人は混合しやすいでしょう。
水飴 | 還元水飴 | |
---|---|---|
太る(肥満) 生活習慣病など |
糖質の過剰な 摂取が原因 |
水飴よりも太りにくい 消化吸収がされにくく 低カロリー甘味料にも 使用される |
下痢 | 問題ない | 注意が必要 |
虫歯 | 注意が必要 | 虫歯予防に有効的 ※他の甘味料が入っ ていると効果減 |
同じ甘味料でも砂糖とは原料が異なり、水飴と還元水飴も似て非なる物です。
砂糖との違いや水飴の製法
砂糖はてん菜やサトウキビなどの植物が原料となり、製造工程はさまざまですが主にショ糖という成分が結晶化してできたものです。
水飴はとうもろこしや芋類などに含まれるでんぷんから作られます。
でんぷんとは
ブドウ糖(単糖)が多数結合して構成される炭水化物(多糖類)です。
原料 製法 |
分類 | 特徴 | |
---|---|---|---|
水飴 | 【原料】 米・芋などの でんぷん 【製法】 酸及び酵素で 加水分解 |
酸糖化 水飴 |
・無色透明 ・飴やジャムに |
酵素糖化 水飴 |
・琥珀色 ・優しい甘さ ・酵素に麦芽使用 ⇒麦芽水飴や米飴 |
||
還元水飴 | 【原料】 水飴 【製法】 水飴に 水素を添加 |
低糖化 還元水飴 |
甘味:弱 粘度:強 |
高糖化 還元水飴 |
甘味:強 粘度:弱 |
原料や製法によって細かく分類されますが、大きく分けると水飴・還元水飴となります。
製法によって含まれる栄養素や体への影響もさまざまです。
糖質の摂り過ぎに注意|麦芽水飴や米飴とは
水飴の原料となるでんぷんには、糖質が多く含まれます。
糖質は体のエネルギー源となる栄養素ですが、体内であふれた余剰なエネルギー源は中性脂肪として蓄積されるので、これが太る原因の背景です。
また多くの甘味料は虫歯菌のエサとなり、水飴のような口に残りやすいものは特に注意したいですね。
ですが水飴の中でも、麦芽を用いた麦芽水飴やお米を麦芽で糖化させた米飴は、糖質以外にも消化酵素や栄養が豊富に含まれます。
健康づくりで注目を浴びていますよ。
【水飴】
お米や麦芽で作った水飴は生薬として使います
生薬名は「膠飴こうい」
効能効果としては腹直筋の筋の硬いのを緩ませ、腸内細菌を整えます
小さなお子さんや高齢者で下痢が続いた時にお腹やお尻が冷たかったら 膠飴と水を鍋で温めて飲むと早く回復します#漢方#生薬#水飴#膠飴 pic.twitter.com/O2M6Sz49Qn
— ふなこ (@hanamizuki171) October 18, 2018
糖質が含まれることには変わりないですが、より体に優しいものを選ぶなら自然由来の麦芽水飴や米飴が良いでしょう。
後半では玄米を使った水飴を紹介しています。
また、カロリーや血糖値を気にしている人は、還元水飴であれば水飴ほど影響を受けません。
大きなメリットですが、こちらも摂り過ぎには注意が必要です。
低カロリーな還元水飴の落とし穴
還元水飴は水飴に水素を添加することで「糖アルコール」に変化し、虫歯になりにくいけれど摂りすぎるとお腹が緩くなるなど、メリットとデメリットをあわせ持っています。(※2)
- 低カロリー
- 菌類の栄養になりにくい
- 消化吸収されにくい
- 血糖値をあげにくい
水飴とは違い糖アルコールは虫歯菌のエサになりにくく、虫歯予防のタブレット・シュガーレスのチョコレートやガムにも利用されていますよ。
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「糖アルコール」という名前を聞くとお酒を思い浮かべますが関係なく、妊婦や子供に禁止されているわけではありません。
糖アルコールについて詳しく
ブドウ糖や糖類に水素を添加し還元して作られ分類上は「糖質」の仲間です。還元水飴以外にもキシリトールやソルビトールなどがあります。人工的に作られるほか、自然界にも存在します。
また還元水飴の中にも区別があり、分類表に記載の通り粘りが強い低糖化還元水飴・甘味が強い高糖化還元水飴に分かれます。
粘度や甘さの調整が可能で応用がききます。
水飴・還元水飴それぞれに特徴があるので、用途や体調に合わせて使い分けられるといいですね。
健康づくりや用途に応じた水飴の選び方
どちらも食べ過ぎは避けたいものですが、それぞれの特徴を上手に活かせば、日々の料理・健康づくりをサポートしてくれます。
特徴 | |
---|---|
麦芽水飴や米飴 | ・栄養が豊富 ・自然由来の優しい甘さ |
還元水飴を 使った甘味料 |
・低カロリーで血糖値の上昇が穏やか ・熱や酸に強く安定した質 ・成長期の子どもには 特に必要ないとされる |
栄養価の高さで選ぶなら、原料に玄米を使った玄米水飴がおすすめです。
栄養が豊富な玄米水飴
精製される前の玄米には栄養がたっぷりです。
その為、玄米を使った水飴はビタミンやミネラル、アミノ酸などが豊富に含まれていますよ。
アミノ酸 | たんぱく質の材料 |
---|---|
ビタミン | 体の機能を正常に保つ |
鉄分 | 酸素の運搬や貯蔵 |
カルシウム | 骨や歯の構成成分 |
こちらの商品も国産の玄米が原料です。
風邪気味のときは生姜湯に加えると、内側からポカポカと温まり栄養補給も兼ねられます♪
一方、カロリー制限をしている人や血糖値を気にしている人は還元水飴を使った低カロリー甘味料を試してみるのも良いですね。
還元水飴を使った甘味料|商品の見分け方は
還元水飴は菓子類や甘味料の形で目にする機会が多く、例えばこちらの商品があります。
糖アルコールは加熱や酸に強く安定した性質を持ち、煮物やお菓子作りなど幅広く使えるものが多いです。
体質上の理由から還元水飴を避けたい人は、成分表示を確認してみましょう。
還元水飴が使われているものは「水飴」と略さずに「還元水飴」と記載されていますよ。
今日は咳が止まらないので医者でもらってきた薬飲んで一日おとなしくしてました(●´ω`●)ノド痛いんで飴なめてたんだけど、この還元水飴つまてのが合わないらしくてお腹がゴロゴロ(>_< ) pic.twitter.com/mBugD48OQi
— O谷@しばらく休業 (@t_ohtani2) October 29, 2019
特徴を把握して、体に合ったものを選ぶようにしてくださいね。
結論|食べ過ぎで起こる影響は水飴か還元水飴かで異なる
- 水飴の食べ過ぎは肥満や生活習慣病発症のリスクに
- 体に優しいもので選ぶなら麦芽水飴や米飴がおすすめ
- 還元水飴は低カロリー甘味料として使われている
- 虫歯予防に有効だが下痢に注意
- 用途・目的に応じて使い分けを
水飴と還元水飴が混合している人は多いのではないでしょうか。
それぞれ食べ過ぎで起こる健康被害も異なります。
身近なものにも使われているので、これを機に商品の成分表示にも注目してみてください♪